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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
コモン限定5色トロン(パウパー)
マジックを始めたばかりの頃、憧れていたのは《真鍮の都》だった。
好きな色マナを生み出せる、いわゆる5色土地の元祖だ。これに加えて《地底の大河》などの、ダメージを受けるものの2色のマナを供給する土地とがスタンダードの多色土地の枠を担っており、多色デッキを組むにはこれらがあるとないとでは展開に大きく差が出たものだ。
特に《スリヴァーの女王》のような金色の多色カードを用いた豪華絢爛な5色デッキは、それらの土地なくしては運用することは大変困難だった。中学生の身ではお小遣いも限られており、たまにパックを剥いてそういったレアの土地が当たることで歓喜のガッツポーズを取ったものである。
ただ、《真鍮の都》のような複数の色マナを出せるレア土地がないと、絶対に5色デッキが組めないのかと問われれば、決してそんなことはない。そもそもレアが使えない、コモン限定構築であるフォーマット・パウパーにも5色デッキは存在する。
最近では主にリミテッド向けに、コモンの2色土地が多くのセットに含まれている。タップ状態で戦場に出たりと、レアのものに比べればカードパワーの低さは否めないが、それでも2色生み出せる土地があるという事実は無視できない。また、アーティファクトにおいてもコモンで色マナを生み出すものが増えたものだ。
それらを取り扱い成立しているパウパーの5色デッキが「5色トロン」だ。トロンとは《ウルザの塔》《ウルザの鉱山》《ウルザの魔力炉》と3種類の土地、およびそれらを用いるデッキの通称だ。
これら3種の土地が戦場に揃うと、それぞれ無色マナを3つ or 2つ生産するようになる。土地3枚で7マナという驚異的な加速っぷりだ。
5色デッキに無色マナしか出せない土地を大量に入れるのは矛盾しているようだが、それら無色マナを《予言のプリズム》《誘惑の洞窟》などで色マナに変換したり、そもそも色マナシンボルは1つでありながらコスト自体は重めで効果も大きい呪文を採用するなどの工夫により、トロンが生産した無色マナからパワフルなカードを叩きつけて戦うというスタイルを確立させている。
今日はそんなパウパーのトロンをご紹介。
2 《島》 4 《ウルザの塔》 4 《ウルザの鉱山》 4 《ウルザの魔力炉》 4 《興隆する島嶼》 2 《茨森の滝》 1 《ボジューカの沼》 1 《誘惑の洞窟》 -土地(22)- 2 《石角の高官》 4 《熟考漂い》 3 《記憶の壁》 -クリーチャー(9)- |
2 《輪作》 2 《儚い存在》 1 《紅蓮破》 4 《衝動》 4 《予言のプリズム》 2 《一瞬の平和》 1 《削剥》 1 《禁制》 4 《眷者の装飾品》 2 《幽霊のゆらめき》 1 《強迫的な研究》 1 《ムラーサの胎動》 1 《巻き戻し》 3 《神秘の指導》 1 《とどろく雷鳴》 -呪文(30)- |
2 《石角の高官》 3 《水流破》 3 《紅蓮破》 2 《否認》 1 《削剥》 1 《今わの際》 1 《嵐の乗り切り》 1 《焦熱の連続砲撃》 1 《ムラーサの胎動》 -サイドボード(15)- |
《眷者の装飾品》は好きな色マナを生み出しつつ、4マナとタップでカードを引くことも可能な無色のアーティファクトで、もう見ただけでトロンとの相性の良さがわかる1枚だ。
パウパーではこのような役割を担うカードは希少であり、あるとないとではデッキの安定感が大違い。《予言のプリズム》などとこの装飾品に色マナは任せて、土地は《輪作》も使ってトロン成立を第一に目指す。早いターンで3種揃えたら、対戦相手と圧倒的格差のついたマナ生産量で圧倒するのだ。
土地を揃えるコンボ要素を持つが、トロンは基本的にはコントロールデッキである。対戦相手の展開を《全ては塵》《忘却石》などでリセットし、こちらのライフを保つ。コモン限定のパウパーではそのような盤面をすべて流し去れるような強大な呪文はないので、アプローチを変更。パウパーはプレインズウォーカーもおらず、アーティファクトやエンチャントよりはクリーチャーを対処することを重視した方が良い。
そのために《石角の高官》を用いる。
このサイが戦場に出ると対戦相手は次の戦闘をスキップしなければならない。攻撃されないのであれば、クリーチャーがどれだけ並ぼうが関係ない。この高官を《儚い存在》《幽霊のゆらめき》で戦場から追放した後に戻し、再利用する。
ただこれだけでは、《一瞬の平和》と組み合わせたとしてもいつかは戦闘を飛ばせないタイミングがやってきて、結局攻撃されてしまう。そこで《記憶の壁》も組み合わせる。
《幽霊のゆらめき》で高官と壁を対象にして、これらを出し入れする。高官の能力が誘発して戦闘をカットし、壁の能力が誘発して墓地にあるインスタントを戻す。もちろん、ゆらめきを戻すのだ。これを毎ターンやっていれば対戦相手は二度と攻撃することがかなわない。
高官や壁に飛んできた除去を《禁制》などで打ち消し、余ったマナは《眷者の装飾品》でドローに。これを複数ターン繰り返し、トロンも複数セット揃ってマナが山ほど出るようになったら《とどろく雷鳴》を対戦相手本体にぶっ放す、WIN!! という、細かい生き残り戦略から豪快な勝ち筋に繋げるストーリー性のあるデッキだ。
マナを大量に生み出せ、そのマナを手札に還元する能力がトロンはパウパーのデッキの中でもピカイチだ。装飾品でのドロー、ゆらめきなどを探してくる《神秘の指導》、ドロー手段でありゆらめきの対象としても素晴らしい《熟考漂い》……
これらのアドバンテージ獲得手段によりライブラリーを掘り進めていけるので、《とどろく雷鳴》をはじめ1枚しか採用されていないカードが多数あるという構築が肯定される。大量にマナを出して引き続けていれば、いずれ当たりにたどり着くという寸法だ。
無色土地が強くて、だからこそ5色デッキが成立するという逆転の発想が面白いパウパーのトロン。1ターン目に飛び出す《秘密を掘り下げる者》は苦手としているが、出遅れた相手に対してはマナの暴力とでも言わんばかりのデッキパワーを見せつける。
レアがなくても5色デッキならではの万能感を味わえる、これぞパウパーの真骨頂。ぜひ一度プレイしてみてね!
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