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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
デイリー・デッキ都市伝説:あなたの近くにも「多相」がいる(スタンダード)
皆さんも耳にしたことがあるだろう。我々人類の中には人ならざる者が紛れ込んでいるという話を。
自分そっくりのドッペルゲンガー、人間のフリをして社会に溶け込む宇宙人、人であるかのように生活する悪魔や心霊の類い。そういった人間社会に人間でないものが紛れ、暗躍しているという話は昔から後を絶たない。
なぜそのような噂が広がるのか。それは我々人類が生き残るための知恵なのかもしれない。南米において、小型のネコ科の捕食者が、小猿の鳴き声を真似てそれに反応し引き寄せられた猿たちを狩る、というテクニックを有しているらしい。人間に置き換えてみると……赤ん坊の泣き声が聞こえるので気になって行ってみたら、影から出てきた化け物に飲み込まれる――いかにも都市伝説的な話だ。太古の昔、人類の遠い祖先の時代から、擬態能力で群れを騙し脅かす存在がいたということだろう。人々はその遺伝子に刻まれた記憶を元に、人ならざる者をイメージし恐れているのかもしれない。信じるか信じないかは……いや、シメにはまだ早いか。
マジックの世界にも特定の種族に擬態し、そのコミュニティに侵入する者たちがいる。多相の戦士だ。それらの中でも多相能力を持つものは読んで字のごとく、すべてのクリーチャー・タイプを持っているので、《不確定な船乗り》のように能力に優れるものはスリヴァーなど、特定のクリーチャー・タイプで固めることで勝利を目指す部族デッキで活躍することもある。
多相を持つクリーチャーは大きく分けて2つの次元に存在する。ローウィンとカルドハイムだ。ローウィンの変わり身たちは、自分の近くにいる者の真似をして姿形を変える不定形の生き物だ。どんな姿に化けてもその特徴的な目玉だけは変わらないので、第三者から見れば正体は簡単にわかってしまう。カルドハイムの多相持ちは……。
都市伝説その3:リトヤラという領界には、どんなものにも姿を変えられる種族がいる
カルドハイム次元の中にあるリトヤラという領界に、この次元の多相たちは住んでいる。それらは緑のマナに基づく林歩きと青のマナに基づく入り江歩きに分けられるが、共通する特徴は外套を羽織り装飾された仮面を装備している。彼らはそれで自分たちの真の姿を隠しているそうだ。動物や人物、星界を渡るためのオーロラ状と、これらの多相は姿を変えながら彷徨うのだという。
もともと、彼らは小さな村に暮らす名も知れぬ種族だったそうだ。遙か昔、その当時の神々だったアイニールは彼らの願いを叶えた。その願いとは、村の若者がその地域の首長に徴兵され戦争に連れて行かれないようにしてほしいというものだった。アイニールはこれを叶えてやった。彼らはさまざまなものに変身する能力を手に入れ、老人や動物に変身して徴兵を回避した。
しかし兵となる若者がいないことで首長は激怒し、この村の皆殺しを命じたという。逃げ惑う村の民を見て気の毒に思ったアイニールは彼らのためにリトヤラを作ったが、この領界は不安定であり他の地では見られないような捻れ、また時間とともに変化する自然環境が拡がっている。ここに住まう内に民も世代を重ねるごとに性質が変化し、リトヤラの風景と同じく不定の多相となり、元の種族の姿を失ったというのだ。
悲しい過去を持つリトヤラ、この歴史を伝えるカードが英雄譚《リトヤラの熊々》。
カードとしては多相トークンの生成、多相たちのサイズアップ、多相のパワー分のダメージによる除去と、多相が複数枚採用されているデッキでこそ真価を発揮するデザインが施されている。
スタンダードでこれを使おうと思ったら……多相クリーチャーが本領を発揮しそうなデッキとなれば、パーティーが思いつく。『ゼンディカーの夜明け』にて登場した、戦士・ならず者・ウィザード・クレリックの4つのタイプを揃えることで大きな効果を得られるカードだ。
冒険のパーティーを組むためにそれぞれに特化した役職が必要なわけだが、リトヤラ生まれの多相たちはこのパーティーのどの役職もこなすことが可能だ。欠けているポジションに収まってもらって、形だけでもパーティー結成できればカードは問題なく機能する。
そんなわけでパーティーと多相を組み合わせたのが「バント・パーティー」だ。
2 《森》 3 《平地》 2 《島》 4 《枝重なる小道》 4 《樹皮路の小道》 2 《神秘の神殿》 4 《連門の小道》 1 《啓蒙の神殿》 -土地(22)- 4 《イオナの大司祭》 4 《タジュールの模範》 3 《敏捷な罠探し》 2 《仮面の蛮人》 4 《海門の擁護者、リンヴァーラ》 2 《領界渡り》 4 《兵団の統率者》 4 《団結の標、タズリ》 -クリーチャー(27)- |
3 《一枚岩の防衛》 4 《リトヤラの熊々》 4 《冒険の戦利品》 -呪文(11)- |
3 《ドラニスの判事》 3 《漁る軟泥》 2 《仮面の蛮人》 1 《一枚岩の防衛》 1 《英雄的介入》 2 《神秘の論争》 3 《忘却への旅》 -サイドボード(15)- |
例によって、MTGアリーナのランク戦で6連勝以上を達成したリストの中からこれを発掘した。緑白青の3色で、パーティーに関するカードを束ね、足りない部分を多相が補う。美しい構成である。
実際にパーティーが揃うとどうなるか。《イオナの大司祭》のパワーが大幅に上がり、また味方を強化し飛行も与える。
それから《敏捷な罠探し》は自軍の攻撃が通ればドローをもたらす能力を付与。
《海門の擁護者、リンヴァーラ》は対戦相手のパーマネントを1つ機能不全にし、《兵団の統率者》は全員のパワーを上げたうえに破壊不能にしてしまう。
これらパーティーの役職がすべて揃っている時の能力に加えて、《団結の標、タズリ》《タジュールの模範》などパーティー要素で構成されているデッキでこそポテンシャルを発揮するクリーチャーや、パーティーにより威力が変化する非クリーチャー呪文も併せて、理想的に展開できた場合戦場も手札も常に強い状態を保てるように組まれている。
特に《冒険の戦利品》を軽いコストで唱えられれば、ゲームを決定づけるだけの戦果を得られるだろう。
ここに加わった多相は《仮面の蛮人》と《領界渡り》、そして《リトヤラの熊々》。
これと《タジュールの模範》と何でも役職をこなす便利屋が揃えば、適当にクリーチャーを展開しているだけでパーティーが完成することだろう。パーティー関係なく熊々のパワー大幅上昇で押し切るという流れも見てみたい。
《領界渡り》のクリーチャー・タイプ指定が難しいが、最も多い人間と言っておくのが無難か。そのタイミングで欲しいパーティー構成員のタイプを指定してライブラリートップに懸けるというのも面白い。カードを引いたりクリーチャーを手札に加える手段は十分にあふれているので、トップがたまたま指定したタイプだったらラッキーくらいの気持ちで運用して良いだろう。
多相はすべてのタイプを持っているが、パーティーは戦士・ならず者・ウィザード・クレリックのタイプが単に揃っているかではなく、それぞれのタイプが1体以上ずつの計4体揃っているかということを参照するので、多相1人でパーティー結成とはならないので気をつけよう。
逆に多相3体と《兵団の統率者》という形でもパーティーは完成し、破壊不能を得て攻撃させることができる。このウネウネした人たちって一体……とか思いながらも強化しているのだろうか、光景を想像するとシュールである。
リトヤラ生まれの多相たちは、領界を出て多種族の中に溶け込み暮らし、死期が近づくとリトヤラに還り、その領界で姿形を変えない数少ない地であるペンタフィヨルドの湖へと沈み込みその生を終えるのだという。パーティーの一員として数々の冒険を経験し、思い出を浮かべながら消失していく者もいるのかもしれない。
あなたのパーティーにもリトヤラ生まれの者が紛れ込んでいるかもしれない、信じるか信じないかはどうあれ……種族が何であれ、真の仲間であればその絆が揺るぐことはないのだろう。
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