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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

バント・アドベンチャー:賢者は今日も見張り続ける(スタンダード)

岩SHOW

 フクロウに対してどんなイメージがあるかな?

 もふもふでかわいい、キリッとした目つきがカッコイイ、眠そうな顔が癒やし系、静かなるハンター……いろいろあると思うが、昔から人類が共通して彼らに抱いてきたイメージのひとつに「賢そう」というのが含まれているのは間違いない。

 樹上にて時折首をかしげながら佇むフクロウは、思索にふけっているかのように見える。表情豊かであり長く生きたような風貌であることも相まって、彼らは森の賢者と呼ばれ知恵の象徴として古き時代から様々なもののモチーフとなっている。古代ギリシアやローマの神話にて知恵の女神の化身や象徴として扱われ、そのイメージが今日も続いているのだろう。

 実際のところ、フクロウは優れた視覚と聴覚、音を立てずに羽ばたくなど類い希な身体能力を持っているが、知能に関してはカラスやオウムといった鳥類ほど高くはないようだ。すべてを見通すような目と、音に反応する様が知的な印象を与えたのだろう。

 マジックでも魔術師の使い魔としていくつかのフクロウがカード化されており、次期セットのタイトル『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のストリクスとはフクロウのことであり、セットのシンボルもフクロウがモチーフと、知恵と知恵のぶつかり合いであるこのゲームでもフクロウの賢者っぷりは一際目立つものになっている。

 現時点での最新セット『カルドハイム』にもフクロウがいる。《見張るもの、ヴェイガ》だ。

 いかにも賢そうなこの伝説の雌フクロウは、カルドハイムの神々の密偵だそうだ。彼女は額に第三の目を持ち、それを駆使して世界樹の根元から神々の間を見張っているという。かつてヴァルキーの策略により問題が生じたことから、同様の事態を避けるためにヴェイガは見張り続け、異変をコルヴォーリへと報告するのだ。

 ヴェイガはカルドハイムの独自の能力である予顕と相性の良いカードとしてデザインされた。手札以外の領域から呪文を唱えたらカードを1枚引けるという、単純にして最も効果的なカードアドバンテージをもたらしてくれる。リミテッドでは彼女のおかげで勝てたというゲームも多くあるだろう。構築フォーマットでも使ってやりたいと思ったプレイヤーもいるんじゃないかな。

 というわけで予顕と組み合わせてデッキ構築だ!……と、なりがちだが。彼女がドローを提供するのは、何もカルドハイムの力に対してだけではないのだ。

Trent Murrell - 「バント・アドベンチャー」
スタンダード (2021年3月9日)[MO] [ARENA]
4 《
4 《平地
2 《
4 《枝重なる小道
4 《樹皮路の小道
4 《連門の小道
4 《寓話の小道

-土地(26)-

4 《エッジウォールの亭主
4 《巨人落とし
4 《厚かましい借り手
4 《恋煩いの野獣
4 《スカイクレイブの亡霊
2 《見張るもの、ヴェイガ
2 《秘密を知るもの、トスキ
1 《終わりなき巣網のアラスタ
2 《星界の神、アールンド
2 《長老ガーガロス

-クリーチャー(29)-
2 《エルズペス、死に打ち勝つ
3 《怪物の代言者、ビビアン

-呪文(5)-
3 《ドラニスの判事
3 《ガラクの先触れ
3 《傑士の神、レーデイン
1 《終わりなき巣網のアラスタ
1 《探索する獣
3 《悪斬の天使
1 《星界の大蛇、コーマ

-サイドボード(15)-
Trent Murrell氏のTwitter より引用)

 

 そんなわけで今日のデッキ、《見張るもの、ヴェイガ》を採用したバント(白青緑)カラーのアドベンチャー(出来事)デッキだ。

 ヴェイガの能力は手札以外から呪文を唱えると誘発する。手札から追放する予顕と組み合わせるために生まれたと思い込みがちだが、それ以外にも手札ではない場所から呪文を唱える手段はあるのだ。

 当事者カードは、出来事としてインスタントかソーサリーで唱えられた後、墓地ではなく追放領域に置かれる。そこからクリーチャーとして唱えることが可能で、そう、すなわちこの時にヴェイガの能力は誘発しドローをもたらすのである。

 出来事デッキには、それを持つクリーチャーを唱えた際にドローをもたらす《エッジウォールの亭主》がなくてはならない動力源としてすでに採用されている。

 ヴェイガはこの亭主の追加枠としての活躍が期待できるということなのだ。そんなわけで緑と白の出来事デッキに青を足した形でこのデッキが作られた。この発想はなかったなぁ~カードを見る目をもっともっと養わないとなぁと、感心しっぱなしだ。

 亭主が出ている状況で出来事クリーチャーをどんどん唱えて手札を減らさず展開。《恋煩いの野獣》《厚かましい借り手》と攻撃役として優れた連中なのでこれらで対戦相手を攻め立てる。

 除去されても亭主で1枚ドロー、出来事として唱えていれば1枚のカードで2回分の働き、これらを合計すれば対戦相手とアドバンテージの差が生まれる。ここにヴェイガも加わればアドバンテージが天井知らずだ。

 《秘密を知るもの、トスキ》《長老ガーガロス》《星界の神、アールンド》と手札を増やすクリーチャーは他にも控えており、これらが機能した際には文字通り「途切れない」クリーチャー軍団を形成し続けることが可能だ。

 特にデッキのカードの大半がクリーチャーなので、アールンドの能力で得する確率が結構高いのが嬉しい。《囁く鴉、ハーカ》の占術も3色デッキを支える土地を効率よく得るために効果的なのが嬉しい。

回転

 また特徴的な1枚として《終わりなき巣網のアラスタ》にも注目。

 対戦相手がインスタントかソーサリーを唱えると蜘蛛が這い出てくる能力を持ち、除去や打ち消しを多数備えたデッキに対して最低限の仕事として蜘蛛1体残して去って行くことは見込める。生き延びたらゲームを終わらせる力もある。派手さはないが堅実な働き者で、トークンと本人ともども到達を持っているので「ディミーア・ローグ」のようなデッキ相手にも脅威となるだろう。

 白を使った出来事デッキは他の出来事デッキと差を付ける要素をサイドボードに持っている。《ドラニスの判事》だ。

 対戦相手は手札以外から呪文を唱えられなくなる。出来事を貯めた状況で飛び出てきたらすべてを台無しにしてくれる強力なアンチカードだ。《スカルドの決戦》を使うデッキや、それこそ予顕で戦うデッキ相手にもブッ刺さる、今ホットなサイドボードの1つである。白い相手からはこれが出てくることを忘れずにサイドボーディングやプレイングに気をつけたいね。

 あとこのリストでは《悪斬の天使》が採用されているのもいいね、《黄金架のドラゴン》を無力化する様は鬼神のごとしだ。

 バントカラーはひと通りなんでもできる色なので、できないことが多いデッキを避けて対応力の高いデッキを好む傾向にあるプレイヤーはこのカラーリングでデッキを組みがち。出来事とヴェイガというアイディアは、安定志向のプレイヤーに爆発力ももたらしてくれるだろう。とにかくカードを引きまくろうじゃないか、それこそが幸せと信じて。

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