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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ゴルガリ・ミッドレンジ:破滅的な行為世代に捧ぐ最新型(スタンダード)
マジックの歴史は長く、そのためセットやデッキ名などで○○世代という括りにすると一体どれだけの世代が存在するのか見当もつかない。始めたセットで名乗るのか、それともリアルタイムで経験したマジックの変革で名乗るかでまた変わってもくるしね。
僕はウルザ(ブロック)世代で……かつ最初の大きな、事件とも言えるようなセットは『アポカリプス』だったなぁ。
それまで相性の悪いものとして設定されていた、カラー・ホイールで隣り合わない色・通称「対抗色」。その対抗色の多色カードに、当時の基準で見れば異常なまでのカードパワーが与えられ、使わないと損するぞというレベル。それまでのマジック感が塗り替えられたイベントで、僕らは『アポカリプス』直撃世代を名乗っても良いかなと。
このセットには本当に魅力的なカードが多く、当時中学生の僕らはお小遣いをなんとか工面してパックを買っては一喜一憂したものだ。
中でも皆が羨望のまなざしで見ていたカードは《破滅的な行為》。
まず、色が良い。黒と緑の多色カードは金枠との色合いの噛み合いもあって雰囲気バツグン。イラストも緑のプレインズウォーカー、フレイアリーズが緑の光に照らされつつも黒い影が重なっており、一目で黒緑とわかる構図が素晴らしい。
そしてその能力。ざっくり言うとXマナ支払って生け贄に捧げて、点数で見たマナ・コストがX以下の土地でないパーマネントをすべて(当時はプレインズウォーカー・カードがないからね)破壊する。一網打尽とはこのことで、1枚で戦況をリセットし逆転に繋げるその威力は、当時比肩するようなカードもなくて画期的だった。そういう意味では《破滅的な行為》世代かもしれない。危ない連中のようだが、そういう世代がいるんですよ。
《破滅的な行為》はそれ以降、黒緑の2色にパーマネントを「根こそぎ潰す」というDNAを残した。これを受け継いだカードたちが、時折この2色に出現する。初代ほどの絶対的なカードはしばらく作られていないが、その系譜に名を連ねるカードたちはどれも《破滅的な行為》世代の心をくすぐるもので、世代の人間は思わずデッキを組んでしまうのである。
というわけで、今回は『カルドハイム』における《破滅的な行為》のマイナーチェンジであるカードをフィーチャーしたデッキを紹介しよう!
8 《沼》 3 《森》 4 《インダサのトライオーム》 3 《疾病の神殿》 4 《闇孔の小道》 2 《枝重なる小道》 2 《ロークスワイン城》 -土地(26)- 3 《怪物の災厄、チェビル》 4 《領界喰らい、サルーフ》 2 《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》 4 《カタカタ橋のトロール》 2 《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》 -クリーチャー(15)- |
4 《血の長の渇き》 4 《精神迷わせの秘本》 4 《ネスロイの神話》 4 《古き神々への拘束》 3 《エレボスの介入》 -呪文(19)- |
2 《スカイクレイブの影》 2 《風化したルーン石》 3 《エルズペスの悪夢》 2 《魂の粉砕》 3 《激しい恐怖》 3 《死者を目覚めさせる者、リリアナ》 -サイドボード(15)- |
2021年、《破滅的な行為》は《領界喰らい、サルーフ》へと生まれ変わった。そう、クリーチャーである。
ただ除去するだけのカードではなく、殴り勝つクリーチャーとして機能するのは嬉しい。もう除去はいらない、勝ちに行きたいという状況で引いてしまうとちょっとがっかりするという問題は解決されている。
ただ、もちろんだが除去としての機能はやや初代よりは落ちるものになっている。というか狙って作動させるのが少々手間がかかるようになったというべきか。《領界喰らい、サルーフ》は3マナ3/3、標準的なスペックに加えて、対戦相手の墓地にパーマネントが置かれるたびに+1/+1カウンターを得る。そのカウンターが置かれた状態で自身のアップキープを迎えると、そのカウンターをすべて取り除くか否かが選べる。
カウンターを取り除いた場合、そのカウンターの数以下の点数で見たマナ・コストを持つパーマネントをすべて追放する。ここが「破滅的」ポイント。対戦相手がパーマネントを大量に展開している場合、それらをまとめて追放する。あるいはそうでない場合、取り除かないことを選んでサルーフのサイズアップを維持できる。カウンターを防御的に使うか、そのまま攻めのために使うか選べる、攻防一体の1枚である。
狙ってコストの重いパーマネントを潰すことは難しいかもしれないが、軽いクリーチャーを並べてくる相手、たとえば《クラリオンのスピリット》などでトークンを生成する相手には、たとえ数個でもカウンターがあれば十分な威力を発揮するだろう。
このリストはそんなサルーフを主役に据えた、どっしり目の中速デッキというところだな。
サルーフの能力は対戦相手のパーマネントが墓地に落ちてなんぼ。《寓話の小道》を起動とかしてくれれば勝手に育つが、それにばかり頼ってもいられないので、こちらからパーマネント破壊を行って能動的に育てていく。クリーチャーだけでなく《ネスロイの神話》《古き神々への拘束》であらゆるタイプのパーマネントに対処していく。
ただクリーチャーを破壊しているだけでは手札がなくなってしまうので、《怪物の災厄、チェビル》《精神迷わせの秘本》もあわせて手札を補充していく。
クリーチャー除去の中でも《エレボスの介入》がガッツリと採用されていることには注目したい。
ライフを得られるという点、墓地対策として使うことも可能な点、そしてタフネスに修整をかけるタイプの除去なので破壊不能を持つ《秘密を知るもの、トスキ》などのクリーチャーにも対処可能な点が優れているね。
除去って殴ってドローして、というのを続けて勝利するデッキだ。なので、コストから見てサイズのデカいクリーチャーで固めているのだが、その中でも目立つのが4枚採用された《カタカタ橋のトロール》。他のデッキではなかなか見ないシブいチョイスだ。
5マナ8/8速攻・トランプルという桁違いの攻撃性の持ち主だが、対戦相手がクリーチャーを生け贄に捧げるとタップ状態となってしまい攻撃はできなくなる。その際に1枚ドローと3点のライフをもたらすので攻撃をチャラにするにはトントンというところか。ただ対戦相手に3体のヤギを与えてしまうので、最低3ターンは粘られてしまう。
これは結構痛いようにも見えるが、考えようによってはプラスに働く。トークンといえど墓地には落ちるのでサルーフの能力が誘発し、カウンターを得ることが可能なのだ。トロールが寝ている横でデカくなったサルーフで殴れば良いし、次のアップキープにサルーフからカウンターを取り除いてヤギをすべて追放してしまうのも手だな。サルーフとトロール、意外なコンビがシナジーを発生させて対戦相手を追い詰める。
《破滅的な行為》で対戦相手のパーマネントを根絶やしにしていたプレイヤーには、《領界喰らい、サルーフ》の追放する能力をぜひとも一度体感してみてほしい。対戦相手の小型クリーチャーやその他の置物がまとめて吹き飛ぶ様は、あぁ懐かしいなとその世代をノスタルジーにひたらせてくれるだろう。強さと楽しさ、両立しているデッキなのでオススメだ。
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