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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ルールス・ヘイトベアーズ(ヴィンテージ)
ヴィンテージというフォーマットについて紹介しよう。
エターナル・フォーマットに分類されるもので、永遠の名の通りこのフォーマットに属するものはマジック創世期より今日に至るまで、すべてのセットに含まれたカードが使用可能となっている。
このフォーマットのひとつであるレガシーはグランプリの本戦などにもたびたび選ばれており、競技としての側面も持っている。そのため環境が壊れないように禁止カードが制定されている。永遠に続くカードプールにおいても強すぎるカードは使うことができなくなってしまう。
その点、ヴィンテージには原則禁止カードがない。一応存在はするが、それは《Chaos Orb》のようなマジックを別のゲームにしてしまうものや、ゲーム外に影響を及ぼすものに対しての措置だ。強すぎるという理由では禁止にならず、代わりに制限カードに指定される。デッキに1枚しか採用できなくなるため、4枚ガッチリ採用したデッキで開幕即死コンボを高確率で決める!というのができなくすることでバランスを取っている。
ヴィンテージはどちらかというと愛好家のためのフォーマットで、古くから使い続けているカードやデッキをいつまでも楽しくプレイすることがプレイヤーの主な目的となっているだろう。たとえ他のフォーマットでは禁止されるようなカードでも、ここでなら1枚だけ使わせてあげるよという救済のようなものである。《Ancestral Recall》に代表される「パワー9」や、《ヨーグモスの意志》などマジック史に残る超絶パワーカードが制限という形で、ほどよく野放しにされている。
しかしながら、近年このヴィンテージにおいても強さが基準で禁止に指定されてしまったカードがある。《夢の巣のルールス》だ。
他のフォーマットでは問題がないルールスがなぜ禁止となったのか。その理由は……相棒は旧ルールでは{3}を支払って手札に加える必要がなく、いつでもサイドボードから唱えることができたからである。
そしてヴィンテージには《Black Lotus》がある。
ロータスから白か黒のマナを3つ得て、いきなりルールスを唱える。ルールスが戦場に出たら、その能力でロータスを墓地から唱える。そう、1ターン目から一切の損失なくルールスを出せてしまい、以降毎ターンロータスから3マナ得ての行動が可能になってしまうのだ。こりゃあ、率直に言ってヤバすぎる。
ということでルールスはヴィンテージでも初めてのカードパワーを理由とした禁止カードになってしまった。
でも、これが先日解除となった。相棒はルールが改訂され、ルールス&ロータスを決めるにはこの2枚とさらに{3}が必要になったからだ。それぐらいならまあ、以前ほどのぶっ壊れではない。
このルールになってもルールスはさまざまなフォーマットで活躍しているので、この{3}がいかに適切な追加コストかよくわかる。ルール変更からしばらく経った2021年、満を持してルールスは解放されたのだ。
そんなわけで今日はルールスを相棒としたヴィンテージのデッキを紹介しよう。ルールスを相棒とする条件は、デッキ内のパーマネント・カードの点数で見たマナ・コストが2以下であること。まさしく宇宙のように広がるカードプールを誇るヴィンテージであれば、これは難しいことではない。2マナ以下に限定しても強いパーマネントは相当な数が存在する。
さあ、解禁されたルールスを用いたデッキの一例を見てみよう。
10 《平地》 2 《カラカス》 2 《幽霊街》 4 《不毛の大地》 1 《露天鉱床》 -土地(19)- 4 《ルーンの母》 4 《レオニンの裁き人》 4 《レオニンの遺物囲い》 4 《光輝王の野心家》 4 《迷宮の霊魂》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 2 《悔恨する僧侶》 1 《戦争の報い、禍汰奇》 -クリーチャー(27)- |
1 《Black Lotus》 1 《Mox Pearl》 1 《Mox Sapphire》 1 《Mox Jet》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Emerald》 1 《水蓮の花びら》 3 《耳の痛い静寂》 3 《流刑への道》 1 《虚空の杯》 -呪文(14)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 4 《封じ込める僧侶》 2 《戦争の報い、禍汰奇》 1 《流刑への道》 1 《剣を鍬に》 4 《安らかなる眠り》 2 《石のような静寂》 -サイドボード(14)- |
クリーチャーに対する俗称で「熊」というのがある。かつて基本セットの常連だった《灰色熊》が語源で、コストが2マナで2/2ないしパワー2のクリーチャーをこう呼ぶ。《灰色熊》は能力を持たないため、何かしらの能力があるものは「接死熊」みたいに呼ぶことも。それはもう熊ではないのではと思わなくもないが、呼びやすいから浸透しているって感じだな。
これは海外でも同じようで、特に対戦相手に対して嫌がらせを働く熊たちのことを憎む熊、憎まれる熊って意味で「ヘイトベアー」と呼び、それらで固められたデッキが「ヘイトベアーズ」。もはやパワーもタフネスも2でない2マナのクリーチャーもベアーとしてカウントされているのはご愛敬。
今回のリストはそのベアーズのヴィンテージ版。白単色のヴィンテージ・デッキとはなかなかに珍しい。
ヘイトベアーの代表格は《スレイベンの守護者、サリア》。
2マナでパワー2先制攻撃と攻守に優れたスペックで、非クリーチャー呪文のコストを{1}上昇させる。コンボやコントロールのアクションを1ターンずれさせ、相手が後手後手に回っている間に他の熊を並べて押し切ってしまう。これがデッキの主な狙いだ。
熊だけあってサイズはそれほど大きくないので、大型クリーチャーを出して殴り合いを挑んでくるデッキには押し負けることもあるが、非クリーチャー呪文ばかりでデッキを構成している相手には滅法強いというのが特徴。
他の熊も見ていこう。正真正銘熊スペックなのが《レオニンの裁き人》。
ライブラリーからカードを探せなくするという強烈な妨害能力の持ち主である。ヴィンテージは《悪魔の教示者》《適者生存》などなどこのフォーマットならではの強力なサーチカードがひしめき合っており、この能力でそれらのカードを大きくスピードダウンさせられるのは勝敗を決定づける影響力だ。
また裁き人は《幽霊街》と組み合わさることで対戦相手の土地を無条件で破壊してやるコンボも狙える。《不毛の大地》《露天鉱床》も併せて相手の土地をバキバキに攻めれば、サリアの効果も倍増するというものだ。
土地以外に《Mox Pearl》らMoxサイクルや《魔力の櫃》《魔力の墓所》といったアーティファクトも充実している環境なので、土地破壊だけでは相手を完封できない可能性もある。また、序盤から《荒廃鋼の巨像》のような巨大なアーティファクトを繰り出される可能性もある。
そのため《レオニンの遺物囲い》《戦争の報い、禍汰奇》らでそこも対策していく。
《Ancestral Recall》などで大量ドローしてくるデッキには《迷宮の霊魂》、《Bazaar of Baghdad》などで墓地を悪用する相手には《悔恨する僧侶》。
あらゆるセットから集ったこれら優秀なヘイトベアーたちを、《ルーンの母》で守護し《光輝王の野心家》で強化して殴り勝つ。
ヴィンテージにおいてヴィンテージらしくないデッキで戦う、それもまたヴィンテージを遊ぶ上でのひとつのスタイルだ。
マナ・アーティファクト以外は極力排除した非クリーチャー呪文群の中でも《耳の痛い静寂》には注目。
《ヨーグモスの意志》や各種サーチカードの威力をグッと弱体化させてくれるエンチャントがたったの1マナ。そのため、破壊されたり打ち消されたりしてもルールスから簡単に再利用できるのである。
クリーチャーとアーティファクトと併せて、墓地から相手の行動を封じるパーマネントを何度でも展開し、こちらの土俵に引きずり込もう。ルールスの逆襲は今始まったのである!
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