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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ゴルガリ・デスタッチ:触れたものは毒牙の餌食(スタンダード)
マジックはセットごとに新しい能力を持ったカードが作られているが、これは大きく2つに分けられることをご存じだろうか。「キーワード能力」と「能力語」である。
キーワード能力とは、その名の通りそのキーワードが単体でルール上の意味を持っているもののこと。最もメジャーなキーワード能力である「飛行」を例に見てみよう。飛行を持つクリーチャーは飛行を持たないクリーチャーにはブロックされない。これはルールでそう定めてあり、カードのテキスト欄に飛行がどう働くのかの注釈が書かれていようがなかろうが同じである。多くのカードが持つものに毎回「(このクリーチャーは、あなたのコントロール下で戦場に出てすぐに攻撃したり{T}したりできる。)」などと書いているときりが無いので、ルール上そういうものだと定めてカードには簡潔に記しているのである。
対して能力語とは、その単語のみでは意味を持たない。その後に何が起こるのか、どうなるのか記されていることで能力として意味を持つものだ。たとえば現行スタンダードなら「星座」という能力語がある。カードに「星座」とだけ書かれていても何も起きず、エンチャントが戦場に出たときに何が起きるのかが記されていることで初めて機能するものとなっているってことだ。
新しいセットで新しいルール用語が出てきたときには、どちらに該当するのか把握しておくのも良いかもね。
今日はキーワード能力について話していこう。キーワード能力にもいろいろあり、開発者によると、常にどのセットにも収録される「常盤木(ときわぎ)」、それよりも一段階落ちるが収録頻度の高い「落葉樹」、そして特定のセットにのみ収録されるものに分類される。常盤木はトランプルとか飛行とか、毎セットで見るやつだね。
これらのキーワード能力はどのカードでも同じことを意味するのだが、それぞれのセットにおいてそれを主要メカニズムとして扱う色が異なったり、その能力に関するカードの働きが大きく異なったりして、印象も随分と変わるのが面白い。
それでいて、次元ごとにいろんなものの雰囲気は異なるが、どこへいっても変わらないキーワードが黒と緑に共通する。「接死」だ。
この能力は蛇や蠍などの生き物が持つ毒として緑が、生命を奪う霊的なものとして黒がそれぞれ担当しており、リミテッドでは戦場に睨みを利かせるものとして重要になってくる。
構築シーンでは、コストで見た際のパワー/タフネスが低めであることが弱点になりがちであるが、時折絶妙なハマり方をして多くのプレイヤーを苦しめる。接死クリーチャーがダメージを与えた時、それが何点であろうと致死ダメージになる。(接触さえできれば)1/1が《引き裂かれし永劫、エムラクール》と相討ちを果たすのだから、毒だの亡者の呪いだのは恐ろしいものだ。
6 《冠雪の沼》 5 《冠雪の森》 4 《疾病の神殿》 2 《インダサのトライオーム》 1 《ゼイゴスのトライオーム》 1 《闇孔の小道》 2 《ロークスワイン城》 -土地(21)- 4 《穢れ沼の騎士》 2 《タジュールの荒廃刃》 4 《牙持ち、フィン》 4 《ぬかるみのトリトン》 2 《怪物の災厄、チェビル》 4 《頭巾様の荒廃牙》 4 《探索する獣》 4 《復讐に燃えた死神》 -クリーチャー(28)- |
2 《豊穣の碑文》 2 《死住まいの呼び声》 4 《原初の力》 3 《アガディームの覚醒》 -呪文(11)- |
4 《打ち壊すブロントドン》 4 《強迫》 4 《苦悶の悔恨》 3 《強行突破》 -サイドボード(15)- |
そんなわけで今日は接死デッキを紹介しよう。
前述の通り、接死を持ったクリーチャーは全体的に小柄だ。時折5/5以上のビッグサイズが持っていたりもするが、相応のコストや運用する上での条件が課せられるものがほとんど。というわけで防壁を構えるのは得意だが、攻撃しても1~2点は構わないとスルーされてしまいがちなのである。
そうした無視できない弱点を抱えているのだが、『カルドハイム』では接死クリーチャーの攻撃をプレイヤーに通すことにメリットを付加するカードが登場した。《牙持ち、フィン》だ。
接死クリーチャーが対戦相手に戦闘ダメージを与えることにより毒カウンターを与える――さながら別のキーワード能力である「感染」のような働きを見せるようになる。いくら打点が低いからと言って、ダメージ自体は5点しか受けなかったとしても毒カウンターを10個与えられたプレイヤーはゲームに敗北する。これはなかなかのプレッシャーだ。
以前にもこのフィンを用いたモダンの感染×接死デッキを考察してみたが、このリストはスタンダードでフィンの毒牙を煌めかせるものであり、ついに出てきたかぁ~とリストを見つけたときは嬉しくなってしまった。MTGアリーナのランク戦で6連勝以上を果たした注目のリストの中に、魔物が紛れ込んでいたのである。
フィンをはじめ、黒と緑の接死持ちをスタンダードからゴリッと集結。これらの中でも最も見る機会が多いのは《探索する獣》だな。
4マナ4/4速攻・警戒・他にもいろいろ、メリットに働く能力しかない、すげーやつ。獣の接死は自分よりもサイズが大きいクリーチャーが立ちはだかっているときに気にせず突っ込ませることが可能で、かなり攻めのスタイルの接死である。
この獣は打点もあるのでフィンの能力とはそれほど相乗効果を生まないかもしれないが、対戦相手がパワー2以下しかコントロールしておらず、かつ十分な量の毒を盛られている時にはとどめの一撃ともなりうる。
また、ガンガン殴らせるのであればより相性が良いのが《頭巾様の荒廃牙》。
このコブラは接死クリーチャーが攻撃することで対戦相手のライフを失わせ、打点の水増しに貢献。同時にライフも得られるので攻防一体だ。また、プレインズウォーカーも接死持ちの与えるダメージ一発で仕留められるようになる。《探索する獣》のプレインズウォーカーに4点ダメージを与える能力も、どれだけ忠誠度が高かろうが一撃必殺の威力に。
接死の価値を増すカードがフィン4枚だけだと心許ないが、荒廃牙と計8枚体制であればどちらかを引く可能性は大きく高まる。1マナから4マナまでの接死クリーチャーをずんずんと並べて、その毒牙を強めるこれらのカードでバックアップしていざ勝負だ。
どんなクリーチャーとも相討ちにもつれこませる接死持ちはブロックされにくいため、他の同様のクリーチャーデッキに比べて、その攻撃を通すための手段は少なめになっている。とはいえ、ブロックされてクリーチャーを失ったり時間を稼がれたりしたくないという場面もあるので、クリーチャー除去はきちんと採用されている。
それもただ破壊するのではなく、クリーチャーをサイズアップさせつつ格闘する呪文を用いることで、サイズの控えめなクリーチャーらの打点を押し上げる役目も兼用できる。《原初の力》でどでかい一発を狙うもよし、《豊穣の碑文》がインスタントなのを活かしてテクニカルにいくもよし。
予顕していた《復讐に燃えた死神》を飛び出させてこれらで強化していきなり大ダメージ、というのも狙ってみたいものだ。
接死というキーワード能力には、それを持っているクリーチャーの基本的なサイズが小さいという弱点もある。が、そのパワーの低さを補う術があれば、コストで上回る相手に対して殴り合いでも優位に立てる。すべては工夫次第。マジックはいつだって、短所を長所に転じさせる楽しみを僕らに与えてくれるのだ。
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