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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
セレズニア・ヴァルキリー(ヒストリック)
ファンタジー世界には回復がつきものだ。
ドラゴンやデーモンやトロールとの激闘で大ダメージを負ったパーティーが、次の戦いを行うまで……現実世界における格闘家が試合後に数か月休養するようなリアルな形で肉体を癒していては、冒険はいつまで経っても進まない。戦いに次ぐ戦いを行うために、人間の治癒能力を超えた聖なる祝福や自然の恵みを享受して、傷を癒し心身ともに回復させて次なる戦いに挑ませるのである。
RPGにおいて回復呪文は必須とも言え、それを排除したパーティーで冒険するのは無謀となることも。この手のゲームに見られる回復呪文や能力は、対象者のHPの減少した値を戻すというものが多い。
ただ同じファンタジーでも、一般的なRPGとマジックとでは少々趣が異なる。マジックでも回復することを意図して作られたカードは多数あるが、それらには「回復」とは書かれていない。「ライフを得る」のである。HPの上限を超えて回復するということはあまりRPGには見られないが、マジックにはライフの上限というものがそもそも存在しない。開始時は20点だが、そこからいくらでも上を目指すことが可能だ。
なので、無限にライフを得ることで対戦相手が勝利する可能性を奪って決着という形を狙ったコンボデッキも存在する。決着時にライフ1点残っていればそれで良いという考え方もあるが、あるに越したことはないというのも間違っちゃいない。
ライフを得まくって死から限りなく遠い肉体を手に入れ、クリーチャーでの戦闘を一方的なものにする。今日はそんなデッキをご紹介。
12 《平地》 4 《寺院の庭》 4 《陽花弁の木立ち》 4 《枝重なる小道》 -土地(24)- 4 《魂の管理人》 4 《天界の語り部》 4 《翼の司教》 4 《若年の戦乙女》 4 《生命力の天使》 4 《輝かしい天使》 4 《正義の戦乙女》 1 《太陽冠のヘリオッド》 -クリーチャー(29)- |
4 《集合した中隊》 3 《群れの力、アジャニ》 -呪文(7)- |
4 《スカイクレイブの亡霊》 3 《静寂の守り手、リンヴァーラ》 1 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》 2 《黎明をもたらす者ライラ》 1 《領事の権限》 2 《不可解な終焉》 2 《安らかなる眠り》 -サイドボード(15)- |
『カルドハイム』は北欧神話を題材にしたセットなので、数多くの天使たちが収録されている。北欧神話で言うヴァルキリー、ワルキューレ、戦乙女などと呼ばれるもので、彼女たちは戦場にて生きるものと死するものを定めるという。戦場で命を落としたものは彼女らに導かれてヴァルハラへと向かい、終末戦争に備える兵士となるという。
カルドハイムではシュタルンハイムという世界樹の頂上にある領界が彼女たちの住処であり、この次元の定命の者が命を失った際、勇敢である英雄の魂であれば戦乙女たちはそれをここに連れてくるのだとか。
そんな英雄の導き手である天使の中でも、注目すべき1枚は《正義の戦乙女》。
他の天使かクレリックが戦場に出ればそのタフネス分ライフを与えてくれて、かつライフが27点(通常の1対1対戦の場合)を超えればすべてのクリーチャーが+2/+2修整! この値は非常に大きく、3マナのクリーチャーがもたらすには破格のもの。
そしてヒストリック環境であれば、彼女の能力を活かすことのできるクレリックや天使が多数存在する。というわけで作られたのが「白緑ライフゲイン」――もっと格好良く記すなら「セレズニア・ヴァルキリー」か。
以前にもこの手のデッキは多くプレイされていた。白にはライフを得ることに長けたクリーチャーと、ライフを得たことでボーナスをもたらすクリーチャーがいる。これらで常に回復しながらジワジワと盤面を強くしていって押し切るというスタイルで、ライフを狙ったクリーチャー主体のデッキ相手には滅法強いものだ。
このデッキではそれを《正義の戦乙女》でさらに強化、クリーチャーを天使とクレリックに絞り込み、ライフを多く得てこれら軽量のクリーチャーを強化して殴るというのが勝ち筋だ。
クレリックには、もとから天使と相性の良いものが多い。ライフが27点以上だと天使を呼び出す《天界の語り部》は、戦乙女と並んだらもう止まらない。
最も噛み合っているカードは《翼の司教》で、戦乙女が戦場に出ることで4点回復、この値は実に大きい。3ターン目にすぐさまその全体強化の条件を満たすということだって可能なのだ。
この手の回復デッキの定番《魂の管理人》と、隙の無いクレリックの布陣だ。
天使だって負けてはいない。ライフを得る際に1点追加し、かつ25点以上のライフがあれば自身を強化する《生命力の天使》。
ライフを5点以上得てターンを終えれば4/4の天使・トークンを生成し、戦乙女でさらに回復→全体強化という流れが美しすぎる《輝かしい天使》。
そしてこれらを展開しているだけでサイズアップしていき、序盤から中盤にかけては戦場を支えてくれる《若年の戦乙女》。
3マナ以下でこれだけ相性の良いカードがまとまっているのは、スピードも求められるヒストリックではありがたい限りだ。
すべてが3マナ以下、ということで白単色のデッキに緑を足して《集合した中隊》を採用。
この中隊が、ストレートに言うとえげつない! 例えば……ライフが5まで押し込められている状況でも、対戦相手のターンに中隊から《正義の戦乙女》2枚めくって8点回復。続くターンで《輝かしい天使》を出して6点、ターン終了で天使・トークンが出てきて8点。ライフが27点に達したので全クリーチャーが+4/+4!みたいな大逆転が実際に容易に起こせる。この気持ちよさは一度体験してほしいところだ。
こっちがアグロとして攻めている時にこのデッキから中隊を撃たれたら、もうカードが公開されるまでの間に投了ボタンに手をかけて祈るしかないっていうね。
ライフを得ることは時として勝利への近道となる。《正義の戦乙女》はこの手のカードにおいて歴代で見てもかなり強い1枚であり、ヒストリック以外のフォーマットでもその活躍を期待してしまう。
相方に据えたい《若年の戦乙女》は『カルドハイム』のセット・ブースター(もしくは日本未発売のTheme Booster)からしか出現しない点に注意。MTGアリーナのみでプレイしているとどのブースターから出てくるのがわからなくなることもあるので、パックを買う際には確認しておこう!
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