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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

速度こそすべて、赤単オボシュ(スタンダード)

岩SHOW

 速度を求めよ。勝ちたければそれが最も重視されるべき状況もある。

 対戦相手が使用してくるデッキの中で、重いカードを唱えることを狙ったものの割合が増えている傾向にあるのならば、速度重視のデッキを使うことが勝ち星を重ねる道に通ずる。《出現の根本原理》のような強力なカードも、唱えさせなければ無効化できるという考え方だ。

 相手のデッキのキーカードを無効化するため速度にデッキのすべてを捧げた結果、カード1枚あたりのパワーは下がってしまう。ボクシングで言うならばジャブのみで試合を行うって感じかな。このジャブの威力や精度が低ければ、相手にダメージを与えることはかなわないだろう。ただその一発一発にある程度の重さがあれば、手数にものを言わせた策略も相手をノックアウトするに十分足りるものに昇華される。

 要するに、1マナクリーチャーの質が高ければスピードだけを探求したデッキは組めると。現在のスタンダードにおける1マナクリーチャーの中で最も優れたもの……これを決めるには議論も必要だろうが、多くの人は《熱烈な勇者》と答えるだろう。

 1/1ながら速攻、他の騎士のパワーを上げる能力、先制攻撃でブロックされにくい……と攻めに必要な能力を多数備えている。

 これに加えて《火刃の突撃者》もなかなか「やりよる」1マナ域スタッフ。

 死亡時に自身のパワー分ダメージを与えるということは、タフネス2のクリーチャーではこれをブロックにしくい。《リムロックの騎士》の出来事や《エンバレスの宝剣》とも相性が良く、これは《熱烈な勇者》とも通ずるところ。方向性が同じである1マナクリーチャーを計8枚搭載できるとあって、現在の赤単色のアグロは軽快なスタートを切ることが可能となっている。

 しかし、スピードにすべてを捧げるという点を突き詰めるのであれば、8枚じゃまだまだ足りない。ビシビシと毎ターン止まることのないラッシュを叩き込み勝利する、赤単のさらにその先へたどり着いたリストがこれだ!

Nathan Feldman - 「赤単オボシュ」
スタンダード (2021年2月18日)[MO] [ARENA]
16 《冠雪の山
2 《不詳の安息地
-土地(18)-

4 《熱烈な勇者
4 《火刃の突撃者
4 《むら気な猛導獣
4 《砕骨の巨人
4 《秘宝荒らし
3 《語りの神、ビルギ
2 《灰のフェニックス
1 《髑髏砕きの突撃者
-クリーチャー(26)-
4 《立腹
4 《ショック
4 《殺戮の火
4 《拷問者の兜
-呪文(16)-
1 《獲物貫き、オボシュ
-相棒(1)-

3 《髑髏砕きの突撃者
2 《灰のフェニックス
1 《タルジーディの隊商、スビラ
2 《アゴナスの雄牛
3 《レッドキャップの乱闘
3 《魂焦がし
-サイドボード(14)-
Nathan Feldman氏のTwitter より引用)

 

 《むら気な猛導獣》、1マナ2/2速攻トランプルとウソのようなスペックの持ち主。

 ただ一般的な赤単で採用されない理由は、そのデメリットの大きさ。これが戦闘ダメージを与えた場合、こちらの土地を1枚手札に戻さなければならない。

 「赤単アグロ」はスタンダードにおいても必要とするマナが少ないデッキだが、《朱地洞の族長、トーブラン》のようなカードも用いる関係から4枚程度は土地を並べたい。最近では《不詳の安息地》という打点としてカウントできる土地も加わったことで、赤単でも土地を24枚ほど採用してこれらを5枚ほど並べることを狙ったスタイルが一般的になっている。

 猛導獣はこれと逆行する、土地を並べない能力の持ち主のため採用されているリストはまず見ない。だがこのリストでは、それに価値を見いだしている。結局のところ、ジャブさえ優れていればトーブランのような重い一撃は不要。刻み続けて勝利するという信念を突き詰めた結果がこの「赤単オボシュ」なのだ。

 相棒を《獲物貫き、オボシュ》に設定したデッキなので、構成するカードは奇数のものオンリー。

 オボシュを活かすとなると3マナ+5マナと、スピードを極めるという方向性とはかけ離れたものであるので、これはあくまで緊急時のオプション。実際に5マナも出せる状況になる前に勝負を決めたいデッキだが、もしそうなった際に何もないとただ負けてしまうのでオボシュがいたら安心だねって枠だ(実際に出たら鬼の活躍も見込める)。

 1マナクリーチャー12体、1マナの非クリーチャー呪文12枚と、計24枚の1マナ域を持つこのデッキは、1ターンに3アクション取るなんてこともザラ。このラッシュを後押しするのが《語りの神、ビルギ》。

回転

 呪文を唱えるたびに赤マナを得られるので、少ない土地で手札を使い切ることが可能になる。猛導獣で土地が多少戻ろうが問題ないね。

 逆にビルギが出せそうなゲーム展開ならあまりコイツで序盤から殴りたくはない。逆にビルギ後に展開するカードとしては1マナで2/2が出て1マナ返ってくると、さながらフリースペルとなるのでどんどん出したいところだ。《立腹》《ショック》なども撃ち放題になるので、このビルギから一気に押すというプランを念頭に置いて、ゲームを進めたい。

 多くの点において、通常の赤単と共通する部分が多いので、プレイ自体はそれ程変わるものではない。クリーチャーを出して、殴る。これを繰り返す。

 《ショック》や《殺戮の火》といった、主流の赤単に入らないカードの扱いだけは注意したい。

 速度を重視した結果のカードであり、これらは対戦相手本体を対象としてダメージ源として使用したいところ。しかしながらクリーチャーの攻撃も通したいので、状況によっては相手のクリーチャーを除去するのに使う。どちらとして使った方が結果として勝利に繋がるのか、吟味してから用いるように心がけよう。アグレッシブなデッキは何も考えずに突撃しているように見えて、しっかりと計算を行わないと勝つことが難しいのだ。

 赤単の象徴とも言える《エンバレスの宝剣》を捨てて奇数構成というのはかなり大胆に見える。ただ、完全に装備品という選択肢を捨て去っているわけではない。1マナ装備品《拷問者の兜》を採用している点には要注目だ。

 {R}で唱えて、{1}で装備と、計2マナで打点をアップでき、このデッキが持たない2マナカードの代わり的なポジションを務める。

 装備したクリーチャーが相手の使い捨てのようなトークンにブロックされてダメージをしのがれても、1点ダメージは通るという保証付き。冒頭で紹介した1マナ連中とは相性が抜群。《熱烈な勇者》であれば装備コストが不要になり、《火刃の突撃者》には速攻を与えて名前の通りに突撃させる。

 クリーチャーを捌いてくるデッキに対しても、これらに加えて《灰のフェニックス》《髑髏砕きの突撃者》と速攻持ちに被らせて矢継ぎ早の攻撃をしかけていこう。

 時代がスピードを求めるのであれば、このような大胆なデッキも誕生する。スタンダードでは速度は無視できないファクターで、これらに対してどのように対処するのか? またその対処をどのように超えていくのか? 日々デッキは進化し、熟練度を増したリストが出回るようになるだろう。結果どのようなデッキが生き残るのか、競争はここからが本番だ。

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