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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ラクドス・サクリファイス(ヒストリック&新ヒストリック)
MTGアリーナやMagic Onlineなど、オンライン派のプレイヤーにとって今はまさしく『カルドハイム』真っ盛りなタイミングだろう。このセットは奥が深く遊び甲斐がありそうで、リミテッドも構築もとことんやりつくしたいところ。
ところで、カルドハイムという次元は実は随分前から登場していたということはご存じだろうか。その初出はなんと……2009年! 『プレインチェイス』という次元を渡り歩きながら戦う多人数戦セット(これがめちゃくちゃ面白かった)において、次元カードの一つとして《Skybreen》が登場。次元タイプはばっちりカルドハイムだ。『カルドハイム』にてこのスカイブリーン山脈はカルドハイムの領界のひとつであるカーフェルの地名だとわかった。ドローガーと呼ばれるゾンビがその住人のほとんどを占める領界で、非常に過酷な地のようだ。
実はこの次元カードの中にはもうひとつ、領界が含まれている。『プレインチェイス』時点ではヴァラという次元の一部になっていたが、『カルドハイム』にてこの次元の領界のひとつへと変更された《Immersturm》ことイマースタームである。
この領界ではデーモンが互いに殺し合い続けているという、その設定だけでもヤバさが伝わる危険きわまりないもので、カルドハイムの神々はこの領界を封じて出入りができないようにしてしまったという。この地獄のような世界にはデーモン以外の生物はほとんどいなくなってしまったらしいが、そんな過酷な世界でも種を存続させている逞しいものもいる。
そのひとつが《イマースタームの捕食者》だ。
吸血鬼でありドラゴンであるそのタイプから、他者の血肉を喰らう怪物感がよく伝わってくる。4マナ3/3飛行とスペックは良好、攻撃するなどでタップ状態になるたびに墓地のカードを最大1枚まで対象としてそれを追放し、その後+1/+1カウンターを得るという能力を持っている。対戦相手の墓地を掃除したり自身の墓地にカードを置いて餌を与えながらサイズアップさせることができるってことだ。
そしてもうひとつの能力は、クリーチャーを生け贄に捧げ、破壊不能を得つつ捕食者自身をタップするというもの。生け贄となったものが墓地に落ち、そしてそれを追放するという動きは骨も皮も残さず喰らい尽くす捕食者そのもの。破壊不能を得るという能力は対コントロールをはじめクリーチャー除去を擁するデッキ相手に有用で、さらに何より重要なのがこの能力の起動にマナが不要な点。クリーチャーをどかどかと一気に喰わせることが可能なのだ。
破壊不能は重複しても意味はないし、一度タップ状態になってしまえば墓地を喰う能力はもう誘発しない。が、そんなことを抜きにしても、マナなしで好きなだけクリーチャーを生け贄可能というのは価値のあることなのだ。例えばこんなデッキにおいては。
6 《沼》 3 《山》 4 《血の墓所》 4 《竜髑髏の山頂》 1 《サヴァイのトライオーム》 2 《ロークスワイン城》 2 《ファイレクシアの塔》 2 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《大釜の使い魔》 4 《戦慄衆の解体者》 4 《忘れられた神々の僧侶》 3 《リックス・マーディの歓楽者》 4 《波乱の悪魔》 4 《真夜中の死神》 3 《悲哀の徘徊者》 -クリーチャー(26)- |
4 《初子さらい》 4 《魔女のかまど》 2 《致命的な一押し》 -呪文(10)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-相棒(1)- 3 《思考囲い》 1 《致命的な一押し》 4 《削剥》 3 《害悪な掌握》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《炎鎖のアングラス》 -サイドボード(14)- |
「ラクドス・サクリファイス」、このデッキ名は「黒赤生け贄」の意味。犠牲を強いる残酷さの黒と、向こう見ずで破滅的な赤。この2色の組み合わせには、多くのセットにおいてパーマネントを生け贄に捧げることがテーマとして与えられている。
クリーチャーをはじめとして、こちらも頭数を失ってしまうが、相手にはそれ以上の被害を与える。そんな素敵な連中を束ねる名カードが《波乱の悪魔》。
プレイヤーがパーマネントを生け贄に捧げると能力誘発、クリーチャーでもプレインズウォーカーでもプレイヤーでも、どこにでも1点ダメージを与えることができる。1点と侮っていると、盤面が崩壊させられたりライフをごっそり削られたりしまうだろう。
この悪魔と最高の組み合わせが《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》だ。
かまどで使い魔を生け贄に捧げ、悪魔で1点。かまどで生成した食物を使い魔で生け贄に捧げ、悪魔が1点&使い魔が戦場に出て1点。ワンセットで3点相手のライフを削れてしまう。
これに《忘れられた神々の僧侶》《悲哀の徘徊者》と生け贄能力を持ったカードと、
生け贄になることで得をする《戦慄衆の解体者》や《真夜中の死神》、
相手のクリーチャーを奪って生け贄にするための《初子さらい》と、
コストが軽くて噛み合ったカードを組み合わせ、生け贄に生け贄を重ねて血塗られた勝利を手にする、好きな人はとことん好きになるヒストリックの名デッキのひとつだ。
この「ラクドス・サクリファイス」に《イマースタームの捕食者》を採用してみたい! こんなにも格好良く、能力もおあつらえ向きな1枚があるのだ。使わない手はないだろう。
これまでのこのデッキにはなかった飛行で上からライフを攻める、《神の怒り》などを使われても残るクリーチャーという、新しい攻め手になるポテンシャルは十分にある。
『カルドハイム』から他に気になるカードと言えば《カルダールの悪しき復活》。
生け贄を発生させつつ3点ダメージで盤面やライフを攻め、手札を捨てさせ、最後は墓地からクリーチャーを戻す。どうしても真っ先に潰される《波乱の悪魔》を戻せれば勝利がグッと近づきそう。英雄譚も最後に生け贄に捧げられるので、悪魔の能力を誘発させることができるのも良い。
それからもう1枚、《マーンの戦慄の隆盛》。
このターンに死亡したトークンでないクリーチャーの数だけゾンビ・狂戦士を生成。つまりは、しこたまクリーチャーを生け贄に捧げきった後にこれを唱えれば大量のゾンビを得られ、またそれらを生け贄に捧げれば悪魔から大ダメージが狙える。
相性の良いカードとしては《忘れられた神々の僧侶》との組み合わせもアツい。僧侶を起動すればこちらが2体、相手が1体と計3体のクリーチャーが墓地に落ちる。マーンからのゾンビは3体が確定するし、僧侶から出したマナの使い道にももってこいだ。特に、相手のターンに僧侶を起動した際のマナを無駄なくこれに注いで活用するというのは今までにないテクニカルな動きだ。
4 《沼》 3 《山》 4 《血の墓所》 4 《竜髑髏の山頂》 3 《荒廃踏みの小道》 2 《ロークスワイン城》 2 《ファイレクシアの塔》 2 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《大釜の使い魔》 4 《戦慄衆の解体者》 4 《忘れられた神々の僧侶》 4 《波乱の悪魔》 3 《真夜中の死神》 3 《悲哀の徘徊者》 2 《イマースタームの捕食者》 -クリーチャー(24)- |
4 《初子さらい》 4 《魔女のかまど》 1 《致命的な一押し》 2 《マーンの戦慄の隆盛》 1 《カルダールの悪しき復活》 -呪文(12)- |
先ほどのリストに上記のカードを組み込んでみた。全く新しい動きをするカードを採用するわけではないので、無理のないデッキの形で組むことができたと思う。
この原稿を書いている段階ではまだ新カードをプレイできないので、リリース後に感触を確かめながら枚数調整などして理想的な形にたどり着けたら……と考えている。強さが保証されているデッキがベースなので安心して試すことができるのが嬉しいね。
特に「ラクドス・サクリファイス」はメインのみの一本勝負のランク戦においてはかなり強いデッキとして認知されており、使用者も多い。この回が掲載される頃にはもっと洗練されたリストが出回っているかとも思う。
《イマースタームの捕食者》がどれぐらいやれるのかは、君自身プレイしてみて確かめてほしいところ。せっかくカッコイイカードで、かつ可能性も感じる1枚だからね。
サクリファイス系デッキは考えることが多いので、1ゲーム遊ぶだけでもマジック欲が大きく満たされる。ガチャガチャとパズルを組み合わせる感じで遊びたいときにはオススメだ!
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