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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
その毒牙はプレイヤーも蝕む:感染デッキの新提案(モダン&新モダン)
子どもの時の話。図鑑などで紹介される「どくをもついきもの」に強いあこがれを抱いた。よくわかっていないからこその発想ではあるが、将来はキングコブラなどを飼育してみたいと思っていたものだ。
年齢を重ね、猛毒の生体を飼育する危険さ・困難さを知ってからはその思いは薄れた。その代わり、漫画やゲームなどで毒を扱うキャラクターが好きになるように。マジックを始めたころに目にしたカードに《マーシュ・バイパー》があった。
ライフ20点を削りきらずとも毒カウンターを10個与えることで勝利できる! この勝利条件は毒好きにとってはそそるものだった。《スークアタの暗殺者》を集めて毒殺デッキを作ったりしたが、当時はそのあまりの弱さに悶絶したものである。毒を与えるクリーチャーはいずれもサイズが妙に小さく、とてもじゃないが20点殴りきる通常のデッキとは戦闘で打ち勝てなかった。しょうがないね。
それから随分と時間が過ぎて『ミラディンの傷跡』にて感染という能力が登場。戦闘ダメージの代わりに自身のパワー分の毒カウンターを対戦相手に与える、新たなるファイレクシアの面々はかつての毒クリーチャーの貧弱さが嘘のように武闘派集団だった。スタンダード・モダン・レガシーにおいて感染デッキを誕生させ、速やかに10個叩き込むという新しい戦法を開拓したのである。
そして2021年。毒で勝利することを可能にする新たなカードが登場した。その名は《牙持ち、フィン》!
接死を持つクリーチャーが対戦相手にダメージを与えた場合、毒カウンターを2個与えるという能力を持っている。
接死は戦闘ダメージを与えたクリーチャーを残りのタフネスがどれだけあろうとも破壊できる能力。そのためこの能力を持つクリーチャーのパワーは若干低めに設定されている。パワー1の接死持ちが攻撃してきたところで、ブロックするとクリーチャーを失う・通したところでたかが1点受けるだけ、という二択であれば後者を選ぶのみである。
そんなわけで攻撃要員としては活躍しにくい接死持ちだが、フィンがいれば話は別だ。たかがパワー1でも5回攻撃を通せば毒殺完了。単純に考えればパワー4ぐらいの重圧に進化するということだ。これはぜひともフィンと接死軍団で毒殺を狙ってみたいところ。
そしてもうひとつ。先に挙げた感染クリーチャーたちとフィンの相性も悪くない。感染持ちはその攻撃が通れば毒を与えるが、そこに接死を持たせてフィンと並べれば、さらに追加で2個の毒を与えるということになる。かなりのスピード決着が期待できそうだ。
1 《森》 1 《冠雪の森》 1 《ドライアドの東屋》 1 《冠雪の沼》 2 《草むした墓》 4 《新緑の地下墓地》 1 《吹きさらしの荒野》 1 《樹木茂る山麓》 3 《育成泥炭地》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《墨蛾の生息地》 -土地(20)- 4 《ぎらつかせのエルフ》 4 《貴族の教主》 4 《疫病のとげ刺し》 4 《ファイレクシアの十字軍》 -クリーチャー(16)- |
2 《変異原性の成長》 4 《古きクローサの力》 4 《巨森の蔦》 3 《厚鱗化》 3 《コジレックの審問》 2 《思考囲い》 3 《突然の衰微》 1 《原初の力》 1 《アガディームの覚醒》 1 《強大化》 -呪文(24)- |
1 《疫病を仕組むもの》 4 《水晶壊し》 4 《夏の帳》 1 《墓掘りの檻》 1 《自然の要求》 1 《真髄の針》 1 《外科的摘出》 2 《窒息》 -サイドボード(15)- |
上記はモダンの「黒緑感染」のサンプルリストだ。感染デッキにおいてメジャーなのはブロックされない《荒廃の工作員》を用いる青緑型だが、黒にも黒の良さがある。白や赤の除去を無視できる《ファイレクシアの十字軍》が使えるというのは大きな利点だ。何よりこのクリーチャーは猛烈にカッコイイ。
そんなわけで黒の感染持ちからこの十字軍と飛行を持つ《疫病のとげ刺し》を、緑からは最軽量の感染持ちである《ぎらつかせのエルフ》を、そして感染&飛行持ちになる土地《墨蛾の生息地》をピックアップし、それらに緑の得意とするクリーチャーのサイズを上げるインスタント&ソーサリーを唱えて早いターンに殴り勝つように組まれているデッキだ。
《厚鱗化》でいきなりパワー6の感染持ちを作り出してドカンと殴ってくるのは脅威という他ない。全体的に軽量の呪文のみで構成されており、手数で押していく構成だ。
ここに《牙持ち、フィン》を絡めるわけだが、ただフィンを入れるだけでは他にも感染クリーチャーがいるのでそっちを使った方が効率が良いかもしれない。ここで重要になってくるのが接死を与えるカード。感染持ちに接死を与えて毒カウンターを与える数を増やすため、軽いインスタントやソーサリーで接死が与えられれば言うことなしなのだが……と、探してみたところ、良いカードが見つかった。《悪性の強打》だ。
1マナでクリーチャーのパワーを2上昇させ、接死を与えるインスタントである。これとフィンと感染持ちが組み合わされば、1マナで与える毒カウンターが4個増える。これだけでも強力だが、この呪文には反復がついている。次にターンにもう一度唱えられるのだ。1枚で毒8個分の働き!これは期待が持てる。
同じく接死を与えるインスタントに《席次 // 石像》の《席次》がある。
1マナで+1/+1修整と接死で、フィン算によれば《巨大化》と同等になる。まあこれだけだと「まあ……」くらいのカードではあるが、いざとなれば《石像》として唱えられるのは悪くないオプションだろう。メインから《罠の橋》などを置かれても絶望せずに済む。
それじゃあ、これらをリストに組み込んでみよう。
1 《森》 1 《冠雪の森》 1 《ドライアドの東屋》 1 《冠雪の沼》 2 《草むした墓》 4 《新緑の地下墓地》 1 《吹きさらしの荒野》 1 《樹木茂る山麓》 3 《育成泥炭地》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《墨蛾の生息地》 -土地(20)- 4 《ぎらつかせのエルフ》 4 《貴族の教主》 4 《疫病のとげ刺し》 3 《牙持ち、フィン》 4 《ファイレクシアの十字軍》 -クリーチャー(19)- |
4 《思考囲い》 3 《古きクローサの力》 3 《厚鱗化》 3 《巨森の蔦》 3 《悪性の強打》 1 《致命的な一押し》 2 《突然の衰微》 1 《強大化》 1 《席次 // 石像》 -呪文(21)- |
ざっくりとだが、フィン型の感染デッキのサンプル完成だ。
フィンと接死を与える呪文の組み合わせは、毒を用いる狩人感があって楽しいというだけでなく、ひとつの利点がある。感染デッキにおいてのあるあるとして、感染持ちクリーチャーを根絶やしにされたので《貴族の教主》や《ドライアドの東屋》に強化呪文を注ぎ込み、毒殺ではなく20点のライフを殴りきって勝つプランを選択せざるを得ない状況がある。ここまで与えてきた毒は泣く泣く切り捨てて、ライフを狙うという開き直りパターンだ。
このような、殴りにいけるのは教主だけ、という状況下でフィンと接死付与呪文があれば、毒殺プランを継続できる。そこに至るまで与えた毒は無駄にならないのだ。教主による毒殺完了、これは《牙持ち、フィン》だからこそできることなのである。
考えたのはメインデッキのみで、サイドは仮想敵が『カルドハイム』参入によりどう変わるかがまだ見えないのでなんとも言えないところ。ただ元のデッキで採用されていた《水晶壊し》はかなり良いアイディアだね。
これを変容させることで感染持ちのサイズをアップさせつつエンチャントやアーティファクトを破壊できて攻防一体だ。
サイド案として考えているのは《死住まいの呼び声》。
感染持ちを複数体戦場に戻しつつ、ブロックされにくくなる威迫と、勝利へのキーワード接死をカウンターという形で与える。破壊系の除去を使ってくる相手に対して戦線の立て直しに使ってみたいね。
接死を対クリーチャーだけでなく対プレイヤーにおいても脅威となる能力に昇華する《牙持ち、フィン》。唯一無二の能力の持ち主である彼が、今後どのような毒殺劇でマニアックなプレイヤーを魅了してくれるのか、ワクワクが止まらないね。プレイヤーを倒すために必要なのは腕力だけじゃないってことを思い知らせてやろう。
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