READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

スリヴァー今昔(レガシー&過去のフォーマット)

岩SHOW

 スタンダードやヒストリックが自分にとってのメインフォーマット、MTGアリーナが主戦場という方にはあまり実感はないかもしれないが、一部の他フォーマットをたしなんでいるプレイヤーにとっては、それを遊ぶ場というものがこの1年で激減してしまったものである。

 レガシーやモダンなど、歴史あるカードで対戦できるフォーマットを好んでいるプレイヤーの多くは、自分が何年にも渡って所持している宝物のようなカードたちを実際に使ってゲームをするのが好きで、かつ同じフォーマットを愛する者同士で集うことで発生する空気感というものを味わっている。

 どちらもMagic Onlineで自室から遊ぶことはできるが、それだけだと物足りない。世界中のプレイヤーがどうやら同じ思いらしく、これらのフォーマットにおいては画面共有のできるコミュニケーション・ツールを用いて、リモートでの対戦が活発に行われている。カードに触れ、シャッフルし、対戦相手と談義しながら対戦を行うのがやっぱり最高。集結できないならせめてリモートで、そんなプレイヤーが集まって日夜リモート大会が開催されている。

 それらの大会結果を覗き、デッキリストを探す機会が増えたものである。あるレガシーの大会結果を見てみると、同世代なら思わずニッコリしてしまうリストを見つけた。

tensai - 「5色スリヴァー」
Paper Legacy Discord Saturday tournament - 1/2/21 4位 / レガシー (2021年1月2日)[MO] [ARENA]
2 《Tundra
4 《魂の洞窟
4 《スリヴァーの巣
2 《手付かずの領土
2 《古代の聖塔
2 《カラカス
3 《不毛の大地
-土地(19)-

4 《風乗りスリヴァー
3 《先制スリヴァー
4 《水晶スリヴァー
4 《筋肉スリヴァー
4 《筋力スリヴァー
4 《捕食スリヴァー
3 《斬雲スリヴァー
2 《冬眠スリヴァー
2 《吸管スリヴァー
4 《不確定な船乗り
3 《スレイベンの守護者、サリア
-クリーチャー(37)-
4 《霊気の薬瓶
-呪文(4)-
2 《封じ込める僧侶
2 《エーテル宣誓会の法学者
2 《翻弄する魔道士
1 《アゾリウスの造反者、ラヴィニア
2 《調和スリヴァー
2 《疫病を仕組むもの
2 《大祖始の遺産
2 《四肢切断
-サイドボード(15)-
MTGMelee より引用)

 

 「5色スリヴァー」だ。スリヴァーは単体では恐れるに足らずなクリーチャーであるが、複数種類が戦場に並ぶと、それらで能力を共有しあうのでどんどんと厄介になっていく。気が付けば人を踏み潰すモンスター軍団が誕生して勝負アリ。

 そのメカニズムと、独特の見た目に惹きつけられたプレイヤーは数知れず。とにかくクリーチャーを出して殴るのが好きというプレイヤーには、一度はプレイしていただきたい伝統的なアーキタイプだ。

 スリヴァーも複数の世代があり、そのいずれもで存在するのが全体強化。《筋肉スリヴァー》より始まる系譜で、《筋力スリヴァー》《捕食スリヴァー》と全部で12枚体制となれば複数体を並べて圧倒的なサイズに育て上げることが可能だ。

 これに速攻を与えて勝利へのタイムラグをなくす《斬雲スリヴァー》は同時に飛行も与えて、《風乗りスリヴァー》とともに地上を固める他のクリーチャー・デッキを嘲笑う。《吸管スリヴァー》で絆魂もつくので、スリヴァー相手に殴り合いで勝とうというのは愚かな選択となってしまうだろう。

 除去を使ってくるコントロール系のデッキ相手にも《水晶スリヴァー》の被覆で単体除去は無視し、対象を取らない除去も《冬眠スリヴァー》で逃げてしまえば恐れるに足らず。

 多相で実質スリヴァーな《不確定な船乗り》、そしてデッキ内における唯一の非スリヴァーである《スレイベンの守護者、サリア》でも除去体制を高めるとともに相手の自由な行動を阻害し、こちらのペースに引き込む。恐ろしいビートダウンである。

 5色のわがままなデッキを支える土地は5色生み出せるもののオンパレード。《スリヴァーの巣》をはじめとする、スリヴァーやクリーチャーにのみ使える5色のマナで楽々運用してやるのだ。《霊気の薬瓶》も無茶な攻勢を支え、また数が並ぶことが重要なスリヴァーの展開速度を支える。ほとんどのスリヴァーが2マナなので運用もしやすいね。

 で、現在のレガシーでスリヴァーが使われるのをたまに見かけるたびに、思い出すデッキがある。それはかつてのスリヴァー・デッキの理想型。『テンペスト』ブロックの、いわゆる第1世代のみが存在した頃……今から20年以上前の話だ。

Christian Luhrs - 「カウンター・スリヴァー」
プロツアー・シカゴ1999 3位 / エクステンデッド (1999年12月3~5日)[MO] [ARENA]
3 《Tundra
4 《Underground Sea
1 《Volcanic Island
1 《Tropical Island
2 《Scrubland
4 《氾濫原
4 《真鍮の都
2 《宝石鉱山
2 《知られざる楽園
-土地(23)-

4 《有翼スリヴァー
4 《水晶スリヴァー
4 《冬眠スリヴァー
4 《筋肉スリヴァー
4 《酸性スリヴァー
-クリーチャー(20)-
3 《Demonic Consultation
2 《剣を鍬に
4 《対抗呪文
2 《解呪
4 《意志の力
2 《誤った指図
-呪文(17)-
3 《水流破
2 《剣を鍬に
3 《死者への敬意
2 《解呪
2 《名誉の道行き
3 《非業の死
-サイドボード(15)-

 

 これぞ「カウンター・スリヴァー」。その名の通り、カウンターこと打ち消し呪文で相手の妨害をしながらスリヴァーで殴る。かつて存在したエクステンデッドというフォーマットにおいて定番デッキのひとつだった。

 クリーチャーを展開するデッキに《意志の力》を添え、ライフを詰めつつ要所を打ち消すという手法がエクステンデッドにおける各種コンボデッキ相手に有効な手段だったのだ。

 このリストはその中でも「DDスリヴァー」と呼ばれるもので、2つのDが意味するのはDemonicとDirection。《Demonic Consultation》で必要なスリヴァーをサーチし、《誤った指図》で打ち消し合戦により強く、という仕様だ。なんともノスタルジーを感じるカードたちである。

 最近のスリヴァーではめっきり見なくなった《酸性スリヴァー》というチョイスもたまらないね。

 スリヴァーを生け贄に捧げることで《ショック》が撃てるようになり、ライフを追い詰めたらこれで投げきって終了というわけだ。当時はまだ数少ないスリヴァーの中でも特に攻撃的で、強力なカードだったなぁ。

 いっそのこと、こういう懐かしいデッキばかりを持ち寄ったリモート大会なんてやっても面白いかもしれない。長くマジックを楽しんだ友人らと「どの時代が一番好きだった? じゃあその時代のデッキ組んでリモート対戦しようぜ」なんて具合にね。

 そして気兼ねなく顔を合わせてカードで遊べる日が来たら、その時は改めて同じテーブルを囲んで……あぁ、そういうのが幸せってやつだなぁ。

 また『カルドハイム』では多相能力が再登場。《不確定な船乗り》のような強力なものが登場すればスリヴァー・デッキはまた強化されるかもしれない! そっちも楽しみだ。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索