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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
バザール・アグロ(ヴィンテージ)
今回の原稿を書いているのは1月2日。お正月のど真ん中だ。例年と比べると、やはり新春大売り出しとか大バーゲンみたいなことをやっていないし、僕自身を取り巻く個人的な環境も変化があったので特別なお正月感はない。なんというか、いつも通りの日常よりちょっと街が静かに感じるくらいかな。
皆はどういうところに正月・新春を感じるのだろうか。お雑煮におせちといったこの時期ならではのご馳走や、福袋を買いに行ったり、家族が集まってこたつでみかんを頬張りながらテレビを観たり……そんなところだろうか。僕が小さい子どもの頃には、河原に凧をあげにいったりしたもんだよ。今のキッズもそういう遊びをしてくれていたらなんだか嬉しくなるが、さすがに前時代すぎる発想かな。友人知人で集まってマジックをすることがお正月恒例って人も少なからずいそうだね。
僕は、ニュースなどで市場の様子を目にすると、あぁ年が明けたなぁと実感する。有名なところだとマグロの初競りだ。毎年、驚くような価格が飛び交うのも目を引くが、活気に満ちた市場の光景はなんだか昔から興味をくすぐる。お正月で市場といえば昔話の「かさこじぞう」で、おじいさんがかさを売りに行く市場の光景も絵本で見てからすっかり虜だ。各種野菜やお米など、いろいろと生活に必要なものが並んでいる。市場はひとつのテーマパークみたいなものだ。
マジックで市場といえば……バザール! 《バザールの大魔術師》《バザールの交易魔道士》といったカードのモデルになった《Bazaar of Baghdad》!
非常に古いカードのため背景世界の多元宇宙設定も定まりきっておらず、現実世界のバグダッドにおける市場を連想する名前とアートを与えられているのが面白い(今ではアラビア風次元ということになっている)。
バザールとは元来、ものに値段が設定されておらず、店と客の間でのやりとりで値段が決まる市場のことだ。このカードもそんな取引の様をカード化した能力を与えられているのだろう。カードを2枚引いて3枚捨てるという能力のみを持ったマナが出ない土地だ。手札の総数は減少するため、起動すれば得をするというわけではない。取引相手はなかなかやり手の店主だったのだ。
だがしかし、手札の枚数的には損をすると言っても、土地を置いてタップするだけでこれだけの手札入れ替えが行えるのは破格というほかない。特に3枚捨てるという点に注目。言うなればこれは3枚ものカードを墓地に置くことができるメリットですらあるのだ。
そんなわけで墓地利用系カード、あるいは手札を捨てることで誘発したりする能力持ちなどと組み合わせることで、1ターン目から想像をはるかに超えるヤバい動きをかます土地なのである。
現在は通常の構築戦ではヴィンテージでしか使うことができない。そのかわりヴィンテージでは制限カードではなく4枚使えるので、この土地のパワーを思う存分楽しむことができる。代表格は「ドレッジ」。《ゴルガリの墓トロール》ら発掘カードと組み合わさると一瞬でライブラリーを墓地に落としきってしまえる。
このイメージが強いのでバザール=ドレッジという認識が広まってしまっているが、実は他にもバザールデッキというものは存在する。今日は活気あふれる市場がフル回転するデッキを紹介しよう。
1 《沼》 1 《ドライアドの東屋》 2 《Bayou》 1 《Scrubland》 1 《Underground Sea》 4 《新緑の地下墓地》 4 《不毛の大地》 1 《露天鉱床》 4 《Bazaar of Baghdad》 -土地(19)- 4 《日を浴びるルートワラ》 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《縫い師への供給者》 4 《恐血鬼》 4 《復讐蔦》 4 《虚ろな者》 4 《甦る死滅都市、ホガーク》 -クリーチャー(28)- |
1 《Mox Jet》 1 《Mox Emerald》 1 《精神的つまづき》 1 《Ancestral Recall》 1 《輪作》 4 《むかしむかし》 4 《活性の力》 -呪文(13)- |
3 《狼狽の嵐》 3 《剣を鍬に》 2 《暗殺者の戦利品》 4 《虚空の力線》 1 《精神壊しの罠》 1 《貪欲な罠》 1 《殺し》 -サイドボード(15)- |
土地が19枚採用されているが、これはヴィンテージのデッキの中では多い方だ。これにはバザールからマナが出ないというのも関係があるね。あれは土地の形をした呪文と考えた方が良いだろう。
さて、バザールを出して起動することで2枚引いて3枚捨てる、このアクションからクリーチャーの展開に繋げて勝とうというのがこのデッキ「バザール・アグロ」だ。
まずはそのクリーチャーの中から、カードを捨てるという行為そのものと関係があるものと、墓地に置くことに意味があるものとで分類してみよう。
- 捨てる:《日を浴びるルートワラ》《虚ろな者》
- 墓地:《死儀礼のシャーマン》《恐血鬼》《復讐蔦》《甦る死滅都市、ホガーク》
まずはカードを捨てることで活きてくるクリーチャーから解説。《日を浴びるルートワラ》は1マナのクリーチャーながらマッドネスにより、これを手札から捨てた際に{0}で唱えることができる。手札から捨てることでマナなしでクリーチャーを展開していけるというわけだ。
たかが1/1、能力を使って3/3というスペックそのものは決して高くはない。それでもマナ不要で、かつ本来捨てるはずだったカードがしっかりクリーチャーとして出てくるということの意味は大きい。そして小粒でも、後述の墓地から帰還する連中に繋がるので非常に重要な構成要素なのである。
《虚ろな者》は手札を捨てた枚数×2マナ分コストが軽減されるので、すなわちバザールを起動すればこれも{0}で唱えられるということ。
こちらはサイズも4/4と頼もしい。先手1ターン目に複数体並べれば、大抵のデッキを踏みつぶしていくことだろう。
墓地利用組は大きく分けて《死儀礼のシャーマン》とそれ以外で用途が異なる。
死儀礼は墓地を追放することでマナやライフを得たり、対戦相手のライフを失わせる。これには相手の墓地を追放してもいいので、基本は相手の墓地利用を防ぐためにそうするが、墓地がたっぷりとあればこちらのそれをコストに充ててやれるので能動的に仕掛けていける。回復を選ぶことはあまりないかもしれないが、残りの2つは「スピーディーに勝つ」というアグロデッキにおけるメインミッションの遂行をアシストしてくれることだろう。
後の連中は墓地から戦場に戻る能力を持った、帰還組である。これらをドサッと捨てて戻すことで、手札の損失を高速展開へと繋げるのだ。
《恐血鬼》は土地を出せば墓地から戻る、条件はかなり緩めだ。《輪作》を絡めればバザールを出したターンに戻すことだってできる。
《復讐蔦》はこのデッキの主役その1。墓地にある状態で同一ターンにクリーチャー呪文を2回唱えれば、その時に全員まとめて墓地から戦場へと這い出てくる。
これをルートワラや《虚ろな者》を使うことで1ターン目から達成させ、速攻を活かしてガツンと殴っていくのである。
最大サイズの8/8、《甦る死滅都市、ホガーク》は早いターンに繰り出すことで早期決着を狙える主役その2。
墓地から唱えられ、また探査で墓地をコストに割り当て、戦場のクリーチャーも招集でマナに置き換えてコストを支払える。ルートワラや《恐血鬼》の重要性がよくわかったことだろう。バザールを2回ほど起動すれば探査コストを払って戦場に降臨させることができるはず。無論、ゲームが長引いても何度でも墓地から唱えられるのでしつこさの勝負になってもどんとこいだ。
これらのクリーチャーをガンガンと展開するため、メインデッキにおける妨害要素は最小限のものに。ヴィンテージでは素直なクリーチャーデッキ同士のぶつかり合いというのは少ないので、クリーチャー除去よりも優先してアーティファクト対策を。というわけで《活性の力》。
マナを支払ってでは唱えられない状況でも、手札を消費することでマナなしで唱えられるのがヴィンテージの速度の中では頼もしい。驚異のアーティファクト2枚割りで、相手のマナ基盤や妨害要素をバキバキ壊していこう。
サイドボード後には打ち消しも使えるように青マナ源を忍ばせ、どうせ青が出るなら使わない手はないと《Ancestral Recall》をしっかりと採用しているのが心憎い。
1マナ3枚ドロー、マジック史上最強クラスのドローはこのデッキにおいても美味しい1枚だ。
ヴィンテージは他の環境と毛色が大きく異なり、使われているデッキもヴィンテージならではのものばかり。この「バザール・アグロ」のように他のフォーマットでは味わえないマジック体験を提供してくれるデッキに満ちているので、興味がある人は挑戦してみても良いのではないかな。
まずはカードを集めるため、このバザールのように活気のある場所へと繰り出したいものだ。となると、マジックフェストのマーケットを思い出してしまうね。早く開催できるようになったら良いなぁ。
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