READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

セレズニア・エンチャント・ブリンク:そして犬(スタンダード)

岩SHOW

 犬の仲間は群れで暮らす動物。群れには序列があり、それは一般的な家庭と飼い犬も同じ。きちんとしつけができていれば、お宅のわんちゃんは序列では上位になる飼い主に忠実に従う賢い子になるでしょう。

 まあ犬にも個性はありますから、手に負えないいたずら好きなんかもいるもんです。飼い主が目を離している間に、大事な眼鏡などのアーティファクトを壊されてしまった、なんて話は多元宇宙のそこかしこで耳にするものです、ハイ。

 そんな暴れん坊な犬とともに暮らすのであれば、大人しくなるようにしつけ直すのも手ですが……いっそそれを個性だと、割り切ってあげることもまた大切です。壊されて困るものはきちんと彼らの手の届かないところに閉まって、いくらでも好きに噛みつき踏みつぶし投げ飛ばしてかまわない、壊れても良いおもちゃを与えてやるのも大事なことです。きちんと飼育しその個性を伸ばしてやれば、《やんちゃな犬》として対戦相手がコントロールするもののみを対象とするようになります。

 では、今日はそんな《やんちゃな犬》にのびのびと壊させてやっているお宅を訪問してみましょう。イコリアにお住まいのヨーリオンさん一家のご自宅に行ってきました。

AlfaceVerde - 「セレズニア・ヨーリオン」
Lotus E-Sports FNM - Traditional Standard 5位 / スタンダード (2020年11月20日)[MO] [ARENA]
10 《平地
6 《
4 《豊潤の神殿
4 《枝重なる小道
-土地(24)-

4 《命の恵みのアルセイド
4 《青銅皮ライオン
4 《絡みつく花面晶体
4 《セテッサの勇者
4 《太陽の恵みの執政官
2 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン
3 《空を放浪するもの、ヨーリオン
2 《やんちゃな犬
-クリーチャー(27)-
4 《ケンリスの変身
2 《メレティス誕生
2 《狼柳の安息所
4 《払拭の光
2 《太陽の神のお告げ
1 《バーラ・ゲドの復活
4 《エルズペス、死に打ち勝つ
4 《エメリアの呼び声
4 《運命の手、ケイリクス
2 《太陽の宿敵、エルズペス
-呪文(29)-
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン
-相棒(1)-

4 《鎖巣網のアラクニル
4 《運命を紡ぐ者
2 《やんちゃな犬
2 《魂標ランタン
2 《魔術遠眼鏡
-サイドボード(14)-
MTGMelee より引用)

 

 というわけで、今日のデッキは「セレズニア・ヨーリオン」。《空を放浪するもの、ヨーリオン》を相棒とした80枚デッキだ。

 ヨーリオンを使う以上白か青を用いることになるが、どちらかといえば人気なのは白。ヨーリオンの持つ、パーマネントを一時的に追放し戦場に戻す能力、通称「ブリンク」を活かすには戦場に出たときに能力が誘発するパーマネントが重要になってくる。現在のスタンダードではそういったカードは白に良いものが多いため、白+1~2色のヨーリオン・デッキがコントロールの代表格となっている。

 今回のリストはセレズニアということで、相方は緑。《修復の天使》で《スラーグ牙》をブリンクしていたころのように、この戦術と緑という色は相性が良い。緑はマナ加速に優れており、マナを食いがちなブリンクデッキにとってはありがたいものだ。

 そしてこのリストはエンチャントをテーマの1つにしている。「エンチャントレス」と呼ばれるデッキに見られるように白と緑はエンチャントの色だ。《運命の手、ケイリクス》はその象徴的な1枚でもある。

 具体的にどのようにエンチャントを活かすのかというと、1つに星座能力がある。エンチャントが戦場に出るたびにサイズアップしカードを1枚引ける《セテッサの勇者》と、ペガサスを生成する《太陽の恵みの執政官》。

 除去の枠を《払拭の光》などのエンチャントに徹底することで、どのアクションにもこれら星座能力のボーナスが付与される。それをケイリクスが補佐することで、手札と盤面が常に潤い、かつパーマネント処理能力の高いデッキに仕上がっている。

 除去エンチャントの中でも最強格の《エルズペス、死に打ち勝つ》やライフ回復+トークン生成によりがっちりと防御を固める《太陽の神のお告げ》などをヨーリオンでブリンクし、能力を再度誘発させるだけでも強力なのに、そこに星座が上乗せになってもう何が何だか。そんな楽園のようなゲーム展開を目指す、欲張りなデッキだ。

 で、ここでようやく冒頭の怪文書を回収しよう。このリストにはメイン/サイド併せて4枚の《やんちゃな犬》が採用されている。このカードがここまで使用されているリストを見るのは初めてのことだったので、取り上げた次第だ。

 エンチャントかアーティファクトを破壊できるという能力は悪くないが、5マナというコストにより見送られることがほとんどのこの犬を4枚フル投入とは、かなり思い切った構築だ。

 現在のスタンダードにおいて、ヨーリオンで使い回せるノーリスクなエンチャント&アーティファクト破壊はこの犬くらいしかいない、というのは事実である。《グレートヘンジ》《予言された壊滅》などのパーマネントに苦しめられた末の結論が、この犬で破壊するというものだった……のだろう。どんなカードが注目されるかわからないからこそ、構築シーンは面白い。

 よく「リミテッド番長」などと呼ばれ、リミテッド専用で構築シーンでは活躍する可能性がないカードと思い込まれているものがある。それらもタイミングと構築センスなどが噛み合えば、十分に力を発揮するのかもしれない。

 すべてのカードに可能性がある。気になっているけれど誰も使っていないカードがあるって時は、周りの目を恐れずに自分で使ってみてから結論を出してみよう!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索