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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

青黒ならず者(スタンダード)

岩SHOW

 「ならず者」というタイプを初めて目にした時、ちょっと面白いなと思った人もいるんじゃないだろうか。職業:ならず者の人なんて会ったことないしなぁ。

 マジック的には『モーニングタイド』でプッシュされ、以降青と黒によく見られる主要タイプの1つとなった。あまりコストの重いカードは多くなく、どちらかと言えば軽量クリーチャーの代表格。パワーやタフネスに優れるというよりは、トリッキーな能力で相手を撹乱するのを得意としている。俊敏さ、侵入を得意とすることを表現した回避能力。盗みの技術を表現したドローやコントロール奪取に関する能力などが主だ。

 これらに加えて、最近のセットでは切削に関する能力も与えられている。切削は精神的外傷や記憶の消失により起こるものとしてカード化される傾向にあり、ならず者のそれは組織や建物に侵入して破壊工作を行う様を表しているのかもしれない。

 いずれにせよ、相手のライブラリーを削って墓地に落とし、それによりボーナスを得るのがならず者のやり方だ。今日はスタンダードのならず者デッキを紹介しよう!

Andrea Mengucci - 「青黒ならず者」
スタンダード (2020年9月29日)[MO] [ARENA]
8 《
5 《
3 《欺瞞の神殿
4 《清水の小道
2 《寓話の小道
-土地(22)-

4 《盗賊ギルドの処罰者
4 《マーフォークの風泥棒
4 《空飛ぶ思考盗み
4 《厚かましい借り手
2 《悪ふざけの名人、ランクル
4 《トリックスター、ザレス・サン
-クリーチャー(22)-
4 《湖での水難
4 《無情な行動
4 《高尚な否定
2 《神秘の論争
2 《アガディームの覚醒
-呪文(16)-
4 《夜鷲のあさり屋
4 《血の長の渇き
3 《塵へのしがみつき
2 《苦悶の悔恨
2 《否認
-サイドボード(15)-
Andrea Mengucci氏のTwitter より引用)

 

 『基本セット2021』の《盗賊ギルドの処罰者》がいよいよ本領発揮だ。

 彼女や他のならず者を序盤から展開して相手のライブラリーを切削。《マーフォークの風泥棒》の攻撃が通ればそこでも切削、そして《空飛ぶ思考盗み》でならず者が攻撃する度に切削!

 怒涛の切削ラッシュで相手のライブラリーを削り、墓地を一気に貯める。墓地が8枚以上になると処罰者が3/2接死となり、思考盗みでならず者のパワーが1上昇。こうして上がった打点で殴り勝つ、手数で勝負するのがスタンダードのならず者デッキだ。

 ならず者といえば、スタンダード以外でも活躍する最強クラスのカードがいるね。《厚かましい借り手》に《悪ふざけの名人、ランクル》だ。

 これらが戦場に出たり攻撃することでも切削が行われるし、そういった部族サポートがなくてもこれらのカードは1枚で十分に強いので実に頼もしい。

 相手の墓地が増えれば嬉しいのはならず者だけではなく、インスタントも強力になるものがある。《湖での水難》だ。

 クリーチャー除去か打ち消しとして、相手の墓地を参照する。ゴリゴリ削った後なら、《対抗呪文》のような2マナ確定打ち消しとして運用できるのがとても強い。

 このカードに加えて、ならず者の多くが飛行を持っていることから《高尚な否定》も採用。

 追加の{4}を支払えなど序盤ではまず無理なので、これで相手のアクションを打ち消しつつ、ならず者を展開・攻撃・切削を続けよう。

 こういったコストが低いカードで相手の動きに対処しながら戦っていくデッキを「テンポデッキ」と呼んだりする。ハマった時の強さは相当なもので、このならず者もその例に漏れず、相手を完封して勝てるポテンシャルを秘めている。

 ここまでは線が細いカードが主体だったが、このデッキにも大技はある。《トリックスター、ザレス・サン》だ。

 攻撃しているならず者と入れ替わる能力を持っており、本来のコストよりも軽く飛び出てきていきなり戦闘ダメージを叩き込む様はその名の通りトリックスター。これにより手札に戻したならず者を再利用できると考えることもできるので、《厚かましい借り手》を戻してもう1回《些細な盗み》として使うのはちょっとしたコンボ気分。

 そしてザレス・サンが対戦相手に戦闘ダメージを与えたことに成功した暁には、相手の墓地からパーマネント・カードを1枚奪ってこちらの戦場に出せるというとんでもない能力が誘発する。つまり、ならず者でガンガン切削して、相手の墓地に《精霊龍、ウギン》とか《エンバレスの宝剣》のようなヤバいお宝を落としておくとそれを美味しく頂戴することができるってわけだ。躊躇なく切削し、相手がそのカードを引く機会を奪いながらこちらが代わりに唱えてやる。これぞ、正真正銘のならず者。

 ザレス・サンの能力起動や、打ち消しを構えながらのクリーチャー展開といった複数行動をするために土地を4~5枚は並べたい。しかしながら6マナ以上のカードは採用していないので、土地を引きすぎても勝利のために活かしにくい。そこで土地の枚数をなるべく削った構成にしたい……のだが、それそれで土地が引けない事故が怖い。

 なんというか欲張りなことを言っているようだが、これぐらいのわがままはカードが許してくれるので甘えよう。『ゼンディカーの夜明け』の、第2面が土地のカードを使うのだ。《アガディームの覚醒》は《地下遺跡、アガディーム》としてアンタップ状態で出せる点が偉い。

 3点のライフを失うことになるが、こっちのライフをガンガン攻めてこないデッキ相手には気になる損失ではない。序盤に引いた際には土地として戦場に出して運用していこう。もう土地はいらないという状況下で引いた場合には、X=2~3くらいで唱えて墓地からならず者を複数体戻して戦場を立て直す切り札として取っておこう。

 最後に、このデッキの主役であるザレス・サンについて紹介しよう。彼はゼンディカーでも屈指の盗みの腕を持ったならず者でありながら、エルドラージとの戦いにより崩壊した海門の再建に本気で打ち込んでいたという熱いスピリットの持ち主だ。アキリ、カーザ、オラーとパーティーを結成し、彼らとの間に強い仲間意識を感じていたそうだ。ある日ナヒリからゼンディカーを癒す石成の核というお宝の発見を依頼されたパーティー一行。ザレスはナヒリを信用しておらず、この依頼にも懐疑的だったが彼女との賭けに負けたため探索に同行。無事に石成の核を発見するに至ったのだが……ナヒリがそれを起動した際に巻き込まれて、ザレスは石化したのだった。

 ザレスの復活はあるのかわからないが……ありし日の姿をカードではいつでもイキイキと見せてくれる。ザレス・サンよ、カードの中で永遠なれ!

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