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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

青黒ライブラリーアウト(モダン)

岩SHOW

 増量、マシマシ、倍プッシュ。僕たちの好きな景気の良いフレーズだ。何でも増えるのは良いことだ、減るよりは増えるに越したことはない。

 マジックの世界で増える、というといろいろあるが……最も嬉しい「増える」は同じ役割で同じコストのカードが増えること、ではないだろうか。

 マジックの歴史は長く、非常に多くのカードが作られてきた。それらの中でデザインが優れており、プレイヤーからの人気も高かったものは後のセットで再録されることがある。ただ再録されるというだけではそのカードをもう持っているプレイヤーからすると集める楽しみが半減するかもしれないし、そもそもそのカードに与えられた固有名詞が再録を難しくしていることもある。

 そんな時に行われるのが同型再録だ。能力や効果が全く同じ、あるいはかなり似通ったカードを違う名前で新しいセットに収録するという方法である。『ゼンディカーの夜明け』でもこの同型再録の一例が確認できる。《遺跡ガニ》だ。

 このカニは『ゼンディカー』が初出の《面晶体のカニ》の同型再録と呼べるものである。

 《面晶体のカニ》は上陸能力を持ち、土地を戦場に出すだけでライブラリーを3枚切削する。これを駆使して、《汚染された三角州》のような上陸を複数回起こせるカードと組み合わせて高速で切削を行うのは強力な動きだった。対戦相手のライブラリーをみるみるうちに削って、カードが引けない=ライブラリーアウト負けに陥れるのだ。

 《面晶体のカニ》はこの能力で自分のライブラリーも切削できたので、墓地を貯めて悪さをするコンボデッキにも採用される人気の高いカードだ。これをそのまま再録するとそういったデッキの方が強化されてしまうことになるので、純粋に対戦相手をライブラリーアウトに持ち込めるものに能力を限定し、名を改めたのが《遺跡ガニ》というわけなのである。

 これら2種類のカニ、モダンなどのフォーマットであれば共演させることができる。初代カニと新生ガニ、あわせて8枚体制だ。どちらも1マナなので早いターンから複数体並べて、三角州などのフェッチランドなどを用いて上陸を誘発させまくり、相手のライブラリーを削り切るデッキが組める。

 モダンで玄人が愛好していた「青黒ライブラリーアウト」、ここにきて大幅強化!

TheEnzym - 「青黒ライブラリーアウト」
Magic Online Modern Challenge #12208829 優勝 / モダン (2020年9月19日、『ミラディン』~『ゼンディカーの夜明け』)[MO] [ARENA]
3 《
1 《
3 《湿った墓
4 《汚染された三角州
1 《溢れかえる岸辺
2 《虹色の眺望
3 《闇滑りの岸
1 《海の中心、御心
1 《雲の宮殿、朧宮
3 《廃墟の地
-土地(22)-

4 《面晶体のカニ
4 《遺跡ガニ
-クリーチャー(8)-
2 《外科的摘出
4 《血の長の渇き
4 《致命的な一押し
4 《彼方の映像
1 《塵へのしがみつき
4 《不可思の一瞥
3 《催眠の宝珠
2 《正気減らし
4 《書庫の罠
2 《夢を引き裂く者、アショク
-呪文(30)-
3 《厳格な放逐
2 《不敬な遺品
2 《アズカンタの探索
2 《否定の力
1 《墓所への乱入
1 《罠の橋
4 《貪欲な罠
-サイドボード(15)-

 

 カニ8枚体制により、序盤の動きがグッと安定した。フェッチランドに《廃墟の地》、さらには《雲の宮殿、朧宮》も利用して、何度でも上陸をさせようという強い意志を感じるリストである。

 土地を置くたびに3枚切削、カニが2体で6枚切削。かなりのスピードである。これに加えて《不可思の一瞥》や《書庫の罠》でもゴリッと一気に削ることで早期のライブラリーアウトを目指す。

 《書庫の罠》は相手がフェッチランドを起動したところに{0}で撃ち込む、このデッキのあいさつ代わりの一発だ。相手がそういうカードを使ってこなくとも《廃墟の地》で強引にライブラリーを探させることで条件を満たして唱えることも可能だ。

 継続的に削るカードとして《催眠の宝珠》も頼もしい。

 相手がクリーチャーや土地をタップするたびに終わりがじわりじわりと近づいてくる。これらのカードの効果を《正気減らし》で倍増させることで、速やかな任務完了を目指す。

 モダンには冒頭で述べたように、これらの切削を嬉々として受け入れる墓地悪用デッキもいくつかある。敵に塩を送るというのもなんなので、しっかりと墓地対策も採用してこれに対処する。

 《外科的摘出》は相手の墓地にコンボのキーカードなどが落ちた時にこれで追放することで、手札やライブラリーからもそれを消し去ることが可能だ。これぞというカードを引っこ抜いてやりたい。

 《塵へのしがみつき》はドローかライフをもたらすおまけ付きなので有効に使いたい。モダンにも多い《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はこれでシャットアウトだ。

 能力を起動するたびに切削と墓地追放を行ってくれる《夢を引き裂く者、アショク》も加われば隙は無い。スマートな野郎だぜ……。

 このデッキの同型再録と呼べるカードはカニだけではない。1マナの定番除去である《致命的な一押し》も増えた。《血の長の渇き》だ。

 ソーサリーにはなったが、1マナで2マナ以下のクリーチャーを問答無用で破壊する便利さは共通。そして条件を満たすことで、それ以上のコストのものにも対処できる点も似ている。こちらはプレインズウォーカーも破壊できるので、いざという時にはなんとかしてくれるかもしれない。この除去がモダンなど、スタンダード以外のフォーマットでもどれだけ活躍するか楽しみだ。

 良きカードが名前を変え、マイナーチェンジを施されて帰ってくる。元祖と共演させることでその恩恵をフルに受けるという構築、大いにアリ。

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