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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

出現の根本原理(ヒストリック)

岩SHOW

 『イコリア:巨獣の棲処』シーズンはもう終わり、あっという間に『基本セット2021』シーズンの開幕だ。なんか一瞬で過ぎ去ったような2か月間だったなぁ。世界的にいろいろあるタイミングだったが、『イコリア』のおかげで楽しく家に籠れたというのは間違いないな。このシーズンは生涯忘れることはなさそうだ。エキサイティングなひと時を与えてくれたセットに感謝を。

 そういえば『イコリア』の内容が明かされる前に、主席デザイナーのマロ―ことマーク・ローズウォーター/Mark Rosewater氏がちらりと公開していた情報の中には「10年以上プレイヤーから作ることを望まれてきたサイクル」(サイクルについては過去の本記事を参照)が収録されるというものがあったな。なんだなんだと話題になったが、それは根本原理サイクルのことだったね。

 根本原理の初出は『アラーラの断片』。アラーラ次元を形成する、3色のマナに基づく5つの断片。その中心となる色マナを3つ、残り2色を2つずつ要求するとてつもなく濃いコストを持ったソーサリー。それが《残酷な根本原理》に代表される根本原理サイクルだ。

 異常とも言える唱えにくいコストを持つだけあって、いずれも破格のパフォーマンスを誇る根本原理。これに色の組み合わせとしては楔3色などと呼ばれる、新しい5枚が『イコリア』にて登場した。

 色マナサポートが豊富なこの時代であればこれらを唱えるのも容易いのでは、なんて考えながらシーズンを迎えたが……やはりそう甘いものではなかったね(笑)。扱うのは非常に難しいが、だからこそ使いたくなる。これぞ人情、人の性。今日は『イコリア』の根本原理を用いた、最近(ちょっぴり)話題のコンボについて考えてみたい。

 このころ、ヒストリックにハマっておりランク戦をよく遊んでいるのだが、頻繁とは言わないがその姿をちらほらと見るようになったコンボデッキがある。《出現の根本原理》を用いるものだ。

 このソーサリーはライブラリーの中から単色のカードを3つ選び、その中から対戦相手が選んだ1枚はライブラリーに戻して残りの2枚をマナを支払わずに唱えるという……要するに重くて強い単色のカードを7マナで2枚唱えて得しちゃおうというカードだ。

 この根本原理で持ってくる3枚、いろいろと思い浮かぶだろうが、ヒストリックでは往々にして以下のものを選ぶ。

 一見何のまとまりもないカードのように見えるが、これが巧妙に仕組まれた勝利へのピースだ。この中で一番ヤバそうなカードとなると、次なる根本原理に繋がりそうな《全知》。そこでこれを選ぶと……リリアナ、祝賀の順で唱えられる。リリアナが戦場に出たら、4回選ぶモード中3回以上「増殖を行う。」を選んだ祝賀を解決。するとリリアナの忠誠度がいきなり9を超える。[-9]能力を起動すると、パーマネントが大量に吹き飛ぶ。土地も1枚を残して根絶やしになるので、これをかまされると逆転することはかぎりなく難しくなってしまう。決着。

 それは嫌だということで祝賀かリリアナを選ぶと、それはそれで《全知》で無茶苦茶されてしまう。要するに根本原理を許した時点でアウト!

 この腕白なコンボと遭遇する機会が日を経るごとに増えているように感じるのだ。今回はネットで見かける中央値的なサンプルリストを紹介しよう。

「出現の根本原理」サンプルリスト
ヒストリック (2020年6月)[MO] [ARENA]
3 《
3 《
4 《繁殖池
4 《内陸の湾港
4 《草むした墓
4 《森林の墓地
4 《湿った墓
4 《水没した地下墓地
-土地(30)-

2 《樹上の草食獣
4 《願いのフェイ
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ
-クリーチャー(10)-
4 《成長のらせん
3 《絶滅の契機
2 《首謀者の収得
3 《出現の根本原理
3 《次元を挙げた祝賀
2 《全知
3 《戦慄衆の将軍、リリアナ
-呪文(20)-
1 《星霜の学者
1 《魂標ランタン
1 《古呪
1 《ムラーサの胎動
1 《漂流自我
2 《首謀者の収得
1 《アショクの消去
1 《絶滅の契機
1 《煤の儀式
1 《最古再誕
1 《逃れ得ぬ猛火
1 《思考のひずみ
1 《千年嵐
1 《出現の根本原理
-サイドボード(15)-

 根本原理のコストは重い! だからいち早く唱える! そんなわけでスタンダードでもお馴染み《樹上の草食獣》《成長のらせん》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を使って30枚も採用した土地をよどみなく戦場に出し、1ターンでも早い根本原理への到達を目指す。

 その間ノーガードではさすがに殴り倒されてしまうので《絶滅の契機》で自身を護る。

 あとは根本原理から前述の3枚を持ってきて地獄の選択を迫る。

 このデッキの特徴的なカードは《願いのフェイ》と《首謀者の収得》だ。

 これらはサイドボード、あるいはライブラリーから根本原理を探してくる追加カード的な役割で、コンボ精度を上げてくれると同時に、《煤の儀式》などの除去や《思考のひずみ》などコンボを通すのに必要なカードを手札に加えるユーティリティーカードだ。

 そして根本原理後、もし《全知》を唱えられたのであればこれらのサーチ呪文で一気に勝利まで持っていく。《首謀者の収得》から《首謀者の収得》をサーチし、2枚目から《星霜の学者》をサーチ。これを唱えて墓地から2枚の収得を拾い、1枚で《千年嵐》を持ってくる。

 《千年嵐》下で2枚目の収得を唱えると、そのコピーが複数作られる。いろいろなカードを持ってきてぐちゃぐちゃにしてやるのが最高だが、《逃れ得ぬ猛火》でこれのコピーを作ってライフを焼き尽くすのがフィニッシュとなる。

 なかなかすごいコンボでしょう、実際にプレイした後にこうして文章に起こすと「ほんまにむちゃくちゃしとるな……」とちょっと引いてしまうレベルだ。つまり、このコンボが動き出すと最高に楽しいってこと。

 ランク戦でプレイするなら1本勝負、BO1がオススメだ。コンボ耐性の薄いアグロデッキが多いので、それらに粉砕されることなく根本原理まで繋げれば勝てる。サイドボードにさまざまなカードを詰め込んでいる特性上、サイドボーディングを行っての2本目・3本目を戦うのは少々難しい。

 根本原理を撃つところまで生き延びるには、コンボパーツであるリリアナや祝賀が良い時間稼ぎをしてくれる点も忘れずに。回復し、トークンで粘り、サーチで除去を持ってきて……耐えきった末に最高のコンボが君を待っている。そういう構造に美学を感じるなら、手に取って清々しいコンボを決めてやってほしい。

 注意点として、《時を解す者、テフェリー》を相手に出されると《出現の根本原理》は死んでしまう。

 カードを探してきて相手が選んだ後、ソーサリーを唱えられるタイミングではない状況で2枚のカードを唱えることになるので「唱えられない」と警告されてそのまま何も起こらない。この悲劇に悩まされるものが1人でも少ないことを願って、ここに記しておく。

 『基本セット2021』からは《精霊龍、ウギン》なんかが選択肢に加わることになる。《出現の根本原理》からは唱えられないが、《全知》からはもちろん、このデッキなら普通にもプレイできるだろう。《深淵への覗き込み》とかも《全知》からぶっ放したいな。ヒストリック、アツくなってくるぜ。

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