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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
Kiki-Top(モダン)
かつてモダンには「Kiki-Pod」というデッキが存在した。名前だけだとなんだかかわいいなとさえ思えるのだが、これが当時最強のコンボデッキの1つだった。
Podは《出産の殻》の英名から。このアーティファクトはクリーチャーを生け贄に捧げて、それよりも点数で見たマナ・コストが1大きいクリーチャーをライブラリーから戦場に出す。適当なマナクリーチャーから早いターンに設置して、二度三度起動するとコンボが完成してしまう。
そのコンボとは《詐欺師の総督》と《鏡割りのキキジキ》による無限トークン。
キキジキで総督を対象に能力を起動し、そのコピーであるトークンを生成する。総督のコピー・トークンが戦場に出たので能力が誘発、その対象はキキジキ。タップ状態のキキジキをアンタップして、もう一度総督のコピーを……これを好きなだけ繰り返し、速攻を持ったトークンの無量大数の軍勢で攻撃して瞬殺する。総督の枠は《修復の天使》などでもOK。
とりあえず殻さえ引ければ、多数詰め込まれたクリーチャーを餌にこれのコンボパーツにアクセスできる、お手軽で圧倒的な強さを誇った。《出産の殻》は禁止カードとなり、「Kiki-Pod」の時代は終わったのであった……あ、Kikiはキキジキのことね。
殻が去った後、Kikiユーザーたちはどうしたか。その一部は他のKikiデッキを手に取るようになった。「Kiki-Chord」だ。Pod時代にも殻と併用してクリーチャーを探す手段だった《召喚の調べ》を使えばまだデッキとしてやっていける!と意気込んだプレイヤーたちがキキジキによる無限コンボを楽しんでいたが、その難易度は上昇した。時間が経って《異界の進化》が登場したことで探す手段が増え、また人気を獲得していた時期があった。
以上がモダンにおけるKikiデッキの歴史だ。《鏡割りのキキジキ》は信じられないぐらいアドバンテージを稼ぎ出すし、コンボが決まれば瞬殺。『神河物語』版では龍とともに描かれた伝説のゴブリンの勢いも凄まじく、僕もかなり好きなカードの1つだ。
このキキジキを用いたKikiコンボの最新型が、この夏に登場するかもしれない。そのカギを握るのは『基本セット2021』に収録される新カード《人目を引く詮索者》!
ゴブリンが窓ガラスに顔を押し付けて中を覗く、なんだかホラーなんだかかわいらしいんだかわからんイラストが目を引くが、そのテキストはなかなかに強烈なものだ。懐かしの《ゴブリンのスパイ》を思い出す自分のライブラリーの一番上のカード、いわゆるトップを公開したままゲームを行う常在型能力はデメリットにも見える。しかしその公開されているトップがゴブリン呪文であった場合、それを唱えることができる。これは大きなアドバンテージ源だ。たった2マナでこれができるのだから、相手に見られるくらいのデメリットはかわいいもの。
さらに恐るべきは、この小さなゴブリンはその公開されているゴブリンが持つ起動型能力も得るときたもんだ。このカードがSNS上で公開されてすぐに、多くのプレイヤーがこう投稿した。「トップにキキジキ置いたらこのゴブリンで無限トークンじゃないか!」と。なるほど、キキジキから授かったコピー生成能力を自身に起動し、出てきたコピーでさらにコピーしてと無限にゴブリンを増殖させられる。この仕込みには《ボガートの先触れ》を使うというアイディアも同時に出てきており、ネット時代のコンボ解明速度に改めて唸らされた。
コピーを好きなだけ作ったら、あとはボガートのコピーを作ってトップを《モグの狂信者》に置き換えて、すべてのゴブリンを狂信者のフレイバーテキストよろしく「わかったぞ!」or「やったぞ!」と叫ぶように生け贄にして相手のライフを焼き切る。勝利!
2ターン目に《人目を引く詮索者》、3ターン目に《ボガートの先触れ》と動くだけで決まるこのお手軽さは、「Kiki-Pod」を使っていたプレイヤーにもそうでないプレイヤーにとっても、グッとくるものがあるのではないだろうか。
デッキリストを考えてみよう。デッキ名は……「Kiki-Top」なんてどうかな?
3 《山》 1 《沼》 2 《血の墓所》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《樹木茂る山麓》 4 《婆のあばら家》 2 《黒割れの崖》 4 《魂の洞窟》 -土地(22)- 3 《スカークの探鉱者》 2 《モグの狂信者》 2 《ゴブリンの群衆追い》 2 《飛び道具の達人》 4 《ボガートの先触れ》 4 《ゴブリンの女看守》 3 《ゴブリンの戦長》 1 《パシャリク・モンス》 3 《ゴブリンの首謀者》 2 《投石攻撃の副官》 1 《ゴブリンの損壊名手》 2 《鏡割りのキキジキ》 4 《人目を引く詮索者》 -クリーチャー(33)- |
4 《霊気の薬瓶》 1 《巣穴の運命支配》 -呪文(5)- |
モダンのゴブリンは現在、赤黒かそれに緑を足したものが主流だ。ここでは赤黒の2色デッキに《人目を引く詮索者》《ボガートの先触れ》を足した形にしてみた。コンボのフィニッシュは《人目を引く詮索者》とキキジキの無限増殖からの《モグの狂信者》か《投石攻撃の副官》で相手のライフが何点あろうがすり潰せる。
《投石攻撃の副官》は普通に戦場に出しても仕事をする点が偉い、これにより殴り勝つという展開も強く狙っていける。
殴り勝つといえば、相手が《神聖の力線》などで対象にできない時には無限増殖からダメージが与えられないので、《パシャリク・モンス》も併せて使う。
無限に増えたトークンを《スカークの探鉱者》でマナに変換し、そのマナでモンスの能力を起動してタップ状態のトークンを生け贄に捧げてアンタップのゴブリンを得る。《ゴブリンの戦長》でそれらに速攻をつけて一斉攻撃! 手間はかかるが、そういうこともできるようにデッキの引き出しを増やしておくのは大事なことだ。
《ゴブリンの群衆追い》《飛び道具の達人》など殴り合いに強いゴブリンも採用しているので、これらを《ゴブリンの女看守》や《ゴブリンの首謀者》で補充してビートダウンするプランも楽しい。《鏡割りのキキジキ》でコピーしてやれば天下無敵。
そういう時の選択肢として《巣穴の運命支配》もこっそり忍ばせておいた。
このカードはソーサリーにしてゴブリンのタイプを持つので、各種カードで手札に加えたり《人目を引く詮索者》から唱えられたりといったトリッキーな動きが可能だ。効果自体はそれほど大きいものでもないが、予想の範囲外から生け贄を迫れるのでドヤ顔で唱えて気持ちがいい瞬間もある……はず。
《人目を引く詮索者》はとにかく面白く、ゴブリン・デッキを次のステージへと押し上げる1枚だ。キキジキ無限が狙えるモダンやレガシー以外のフォーマットでも、あらゆるゴブリンを絡めて何か楽しいことができそうだ。こういう可能性を拡げるカードが出てくると、基本セットといえど侮れんなと再確認させられる。『基本セット2021』のリリースが待ち遠しい!
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