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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
オルゾフ・アグロ(スタンダード・独自ルール)
マジックの楽しみ方ってのはいろいろある。最新鋭のカードを用いたトーナメントで活躍するデッキを組んで真剣勝負を行うのが楽しいというプレイヤーがいる一方で、さしてゲーム自体はプレイしないが欲しいと思ったカードを手に入れて眺めるだけで満足するコレクターがいたり。
どれが正しい楽しみ方というのはなく、各々の思うがままに楽しめば良い。これはなかなか他のゲームでは体験できない自由度というか懐の深さというか、とにかくマジックはすごいコンテンツだと日々実感する。
今日もこのコラムで紹介するデッキを探していると、興味深いコミュニティを見つけた。そこではMTGアリーナを用いたリーグ戦を行っているのだが、ルールが独特なのだ。
スタンダードのデッキでサイドボードあり2本先取の対戦を行うが、そのデッキ構築にルールがある。デッキに採用できるレア・カードはメインとサイドあわせて4枚まで、加えてそれらのカードは重複してはならない。その上でアンコモンも15枚までしか採用できないという、構築に大きく制限をかけたものとなっている。
このルールをそのまま遊ぶというのを勧めるわけではないが、考え方は面白いなと。特にマジックを、スタンダードを始めたばかりのカードが揃っていないプレイヤーにとっては良いのではないだろうか。カードが揃っていないならパウパーのようなコモン限定で遊ぶのも良いが、レア・カードのパワーを体感した方が圧倒的に楽しい。それに上級者と初心者でパウパーで対戦すると、力量をカードパワーで補えないのでどうしても差がついてしまいがちというのもある。初心者はせっかく持っているレアを使える、慣れたプレイヤーは制限の中でデッキを考える楽しさがある。こういうマジックの楽しみ方もあるんだなと。
それでは今回は、その独自フォーマットでのリーグで活躍したデッキを取り上げよう。
10 《平地》 9 《沼》 4 《磨かれたやせ地》 -土地(23)- 4 《命の恵みのアルセイド》 4 《憎しみの幻霊》 4 《癒し手の鷹》 1 《鋸刃蠍》 4 《アジャニの群れ仲間》 1 《情熱的な扇動者》 -クリーチャー(18)- |
4 《死者の神のお告げ》 2 《死の重み》 2 《ケイヤ式幽体化》 1 《灯の収穫》 1 《魂標ランタン》 3 《ぬかるみの捕縛》 2 《きらきらするすべて》 1 《希望の夜明け》 1 《最後の支払い》 1 《エレボスの介入》 1 《永遠の終焉》 -呪文(19)- |
1 《夢の巣のルールス》 -相棒(1)- 3 《強迫》 1 《死の重み》 1 《ケイヤ式幽体化》 2 《灯の収穫》 1 《希望の光》 2 《存在の破棄》 1 《解呪》 1 《最後の支払い》 1 《記憶漏出》 1 《息詰まる噴煙》 -サイドボード(14)- |
《夢の巣のルールス》を相棒にした白黒のエンチャント主体デッキだ。なるほど相棒カードであれば、1枚あれば機能するのでこのルールでは非常に使いやすい存在だろう。
あと3枚レアカードを採用できるが、そのチョイスは腕の見せどころ。ただルールス・デッキなので、デッキを構成する大部分は2マナ以下のパーマネント。そうすると自ずとコモン・アンコモンが中心になるので、このリストではレアは除去を優先している。それもコストに{X}を含む柔軟なもので、よく考えられている。
X呪文とともに採用されているレアは《希望の夜明け》で、これらのレアの共通点は余ったマナの使い道となってくれるという点。
ルールスで2マナ以下のパーマネントを再利用して勝つのが基本だが、土地を引きすぎた時に機能してくれるこういうカードがあると戦略に幅ができてありがたいね。
さて、この構築方法ではある意味レアよりも重要なポジションであるアンコモンを見ると、デッキのやりたいことが見えてくる。まずはクリーチャー、《命の恵みのアルセイド》《憎しみの幻霊》《アジャニの群れ仲間》の3種を4枚ずつ。
絆魂持ちとライフを得るたびに大きくなる群れ仲間で、白黒のお家芸であるライフゲイン系デッキだということがわかる。攻めの主役である群れ仲間が育つ前に除去されてしまっても、ルールスで再出撃。あるいは《命の恵みのアルセイド》で護ってやり、アルセイドをおかわりしてしぶとく立ち回ろう。
《憎しみの幻霊》の仕事は回復以外にもあって、それは《ぬかるみの捕縛》《死の重み》と組み合わさることで相手のクリーチャーを除去しつつドローする、デッキのエンジン的な役割である。
ルールスでこれらのマイナス修整オーラを再利用することで、手札を消費することなく相手を無力化し、それどころかこちらは手札が増える。《憎しみの幻霊》が2体以上並ぶと?祭りの始まりだ!
残りのアンコモンは《きらきらするすべて》。
アルセイドに幻霊にと、何かとエンチャントが並ぶデッキにおいて大きなプラス修整をもたらし、群れ仲間以外の攻め手を生み出してくれる。
最後の1枚《魂標ランタン》はルールス・デッキの嗜みとも言える。
墓地対策であり、毎ターンこれを唱えて生け贄に捧げて1枚ドロー、計2マナで尽きることのないアドバンテージをもたらしてくれるので消耗戦はばっちりだ。脱出やリアニメイト系のコンボなどを妨害しつつ手札を潤そう。
最近のこの手のデッキで人気なのは《ケイヤ式幽体化》。
これはルールスを護るのが主な役目だ。その強さゆえに真っ先に除去されがちなルールスにこのオーラをつければ、破壊だけでなく追放系の除去からも護ってやることができる。このオーラ自体をルールスで使いまわせるので、そっちの手が尽きるまで付き合ってやるぞってなもんである。
これと《死者の神のお告げ》で、デッキの最重要カードであるルールスをはじめ、デッキ内のクリーチャーたちに死後の再誕を保証し、じっくりと攻めあげるゲームで勝利をものにするのだ。
このデッキは特殊な遊び方に基づいて組まれてはいるが、その設計思想は通常のスタンダードにも応用可能だ。《きらきらするすべて》をもっと増量し、《癒し手の鷹》のようなクリーチャーにオーラをベタ貼りして殴り合いを制するデッキは、密かな人気を博している。
カード1枚1枚で見れば大したことのないものばかり、それこそアンコモンとコモンばかりだが、それらが束になると思いがけない脅威となる。もし遭遇したならば侮ることなく、慎重に戦うべし! カードを集めやすく組みやすいという点からも、スタンダードのルールス・デッキは初心者にもオススメだ!
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