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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ボロス・サイクリング(スタンダード)
今は失われてしまったフォーマットの1つに、「ブロック構築」というものがある。
そういえばそもそもブロック制度がもう過去のものなので、そこから説明しよう。かつてマジックのセットは3つで1つのブロックを形成していた。1つ目のセットは大型で収録枚数が多く、基本的なカードを再録しつつ新メカニズムを登場させる。それに続く2つの小型セットで、そのメカニズムをさらに昇華する。ブロックの締めくくりとなる第3セットは自然と強力なカードが多くなるので期待できるとか、そういう話で盛り上がったものである。
で、共通ブロックのセットにカードプールを絞ってデッキを構築して行うのがブロック構築なわけである。セットのリリースタイミングによっては2セットだけで行ったり、変則的なブロックは4つのセットが使えたりしたのだが、なんであれスタンダードよりもさらに狭められたカードプールの中からデッキを作るので、意外なカードやデッキが活躍するのが面白かったものである。
今現在発売されているセットは、すべて過去で言うところの大型セットに準ずるので、やろうと思えばブロック構築を再現することも可能だ。あるいは、スタンダードに存在する各セットごとにデッキを作って、どのセットが最強かという遊びも楽しめそうだ。
ただ、もしその企画をするのであれば『イコリア:巨獣の棲処』はアイアムナンバーワンと自信満々に名乗りを上げてくるだろう。何せ、現スタンダードではほぼ『イコリア』のカードで形成された……具体的に言うとメインデッキの56枚がイコリア産のデッキが登場したからである。それだけ偏った構築を施しているのに、これがなかなか強いのだ。
今日はそんなフル・イコリアなデッキを紹介しよう。
10 《平地》 4 《山》 4 《聖なる鋳造所》 2 《サヴァイのトライオーム》 -土地(20)- 4 《繁栄の狐》 4 《ドラニスの癒し手》 4 《ドラニスの刺突者》 4 《雄々しい救出者》 -クリーチャー(16)- |
4 《血の希求》 4 《驚くべき発育》 4 《記憶漏出》 4 《天頂の閃光》 4 《霜帳の奇襲》 4 《願い与えの加護》 -呪文(24)- |
1 《夢の巣のルールス》 -相棒(1)- 2 《命の恵みのアルセイド》 2 《希望の光》 4 《雷猛竜の襲撃》 2 《切り裂かれた帆》 3 《轟音のクラリオン》 1 《ヴァドロックの神話》 -サイドボード(14)- |
これぞサイクリング・デッキだ! 『イコリア』の再録能力であるサイクリングを活かす……というか、土地でないカードは4枚を除いてすべてサイクリングを持っている(なんだったら土地にもついている)。
そして、そのサイクリングに共通するのは、《雄々しい救出者》以外はコストが{1}であるという点。これにより気軽にそのカードを捨ててカードを引けるので、どんどんとサイクリングして手札を回転させるってわけだ。色が合っていなかったりほとんど唱えるつもりのないカードが採用されているのは、サイクリングをすることが最優先だからである。
毎ターンのようにサイクリングを繰り返すことで、手札の枚数は減らないがライブラリーを掘り進めていくことができる。そして戦場にクリーチャーがいれば、それらの能力が誘発する。1ターン目《繁栄の狐》から入れれば最高だ。グングン成長させて、重い一撃をガツンと叩き込みたい。
《ドラニスの刺突者》もダメージ源として優秀だ。2体以上並べばサイクリングしているだけでみるみる相手のライフを削り落とす。
これら攻撃的なものもいれば《ドラニスの癒し手》は回復薬で、相手がクリーチャーで殴るデッキであればこれがもたらしてくれるライフは馬鹿にならない。
《雄々しい救出者》は各ターンに1回だけ誘発しトークンを生成する。こうして増えた人間軍団で殴るもよし、相手の攻撃を凌ぐ使い捨てブロック役に回してもよしだ。
そうやってサイクリングとクリーチャーで押していくわけだが、もちろんそれだけで勝てるほどゲームは甘くない。とっておきの決め手が必要だ。そこで唯一の非サイクリング呪文である《天頂の閃光》の出番である。
4マナで墓地のサイクリングを持つカードの枚数分のダメージを飛ばす火力であり、与えた分ライフ回復のおまけつき。リミテッドではかなり強力なアンコモンとして知られているが、このカードは構築でも火を噴くぞ。1ターン目からジャキジャキとサイクリングを繰り返せば、墓地が10枚以上貯まるなんてザラだ。サイクリングを繰り返すことで《天頂の閃光》を引き込み、対戦相手本体に向けてぶっ放す! コンボデッキ的な決め技を持っているというわけ。
この閃光は本体だけでなくクリーチャーやプレインズウォーカーに撃ち込んで除去にも使えるので、ゲーム展開に合わせて使い分けていきたい。最後の一発で20点なんてことも不可能じゃないから、思い切って使っても問題ない。回復がまた強く、相手のクリーチャー軍団の攻撃1回分くらいは無効化してくれる点が素晴らしい。
これらサイクリングの織り成すシナジーをサイドボードから見つめるのが、相棒《夢の巣のルールス》だ。
サイクリングしたクリーチャーを墓地から唱えて戦場を作るというのが主な役目である。《繁栄の狐》などを出して即除去されても、後からルールスで再召喚できるという安心感は大きい。サイクリングでドローを進めて閃光を探しつつ、捨てたクリーチャーを唱えてブロッカーにして1ターンしのぐという動きで勝利に繋げるべし。
サイクリング・デッキであれば、相棒として《黎明起こし、ザーダ》も選択肢になるだろう。
こちらは能力の起動コストを{2}軽減してくれるという能力を持つ(1点未満にはできない)。2マナ以上のサイクリング持ちを使いたいのであれば、ザーダを相棒にするとデッキの動きがより滑らかになる。《壮麗牝馬》で狐や刺突者に絆魂をつけたり、《さまよう怪物、イダーロ》でゴジラを突撃させるのも楽しいぞ。
サイクリングは非常に優れたメカニズムであるが、《天頂の閃光》を得たことでより攻撃的なアプローチが可能となった。スタンダード以外のフォーマットでもこのコンセプトを応用したデッキが活躍する可能性は十分にあるね。あとはリミテッドでも閃光から綺麗なサイクリング赤白を組めると最高に楽しいので、ドラフトに挑戦もしてみてほしい。『イコリア』という最高のセットを堪能し尽くすべし!
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