READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

白単ライフゲイン(スタンダード)

岩SHOW

 『テーロス還魂記』の主人公は誰かと言えば、そりゃあ誰が見てもエルズペスだろう。彼女は死の国からの帰還を望まれ続けていて、今回それを果たしてメインストーリーに復帰できるような状態となった。友であるアジャニやコスとの再会が今から楽しみでならない。

 では『テーロス還魂記』における悪役は誰だろう。エルズペスの脱出を阻もうとした者の中でも、やはり親玉と言える存在はヘリオッドだろう。

 白マナに基づく太陽の神でありながらラスボスというのは珍しくも感じるが、ヘリオッドは神でありながらその威光を保とうとする人間的な側面が強かった。以前のテーロスのお話で、ヘリオッドは神を討つ力を持ったエルズペスを脅威であると認知し、また彼女がエレボスの死の国へと行く代わりにダクソスを蘇らせるという約束を果たさせるためにも、彼女を槍で貫いてその命を奪った。こうして己の神としての地位を脅かす者を排除したヘリオッドは、多くのマジックプレイヤーに嫌われる存在となってしまった。悪役の宿命であろう。

 今回のお話では死の国から脱出するエルズペスにとって最後の敵として立ちはだかるが、影槍に貫かれて倒れる。力を失ったヘリオッドを、この機を逃すまいとエレボスは捕らえて巨岩を支え続ける刑に処した。彼のことをテーロス中の人々が忘れ、その信心が皆無となる日まで……。

 太陽の光に照らされることで生まれた影であるエレボスは、それを恐れたヘリオッドによってテーロス世界を取り巻く大河の向こう側・死の国へと追放されていた。エレボスはその処遇を受け入れて死の国の守り手としてヘリオッドに協力していたが、ついに報復することに成功したってわけだ。

 エルズペスとエレボスは目的を果たし、自らを最高神であるとうたっていた(実際は逆らえない存在がいる)ヘリオッドは文字通り地の底に落ちた。これがカタルシスってやつだろうか、多くのプレイヤーの溜飲が下がったことだろう。そういう意味で、僕はヘリオッドというキャラクターが好きだ。テーロスの物語を面白くしたのは彼なのだ、良い仕事してくれたよヘリオッド。

 ヘリオッドのキャラクターはともかく、新しく彼をカード化した《太陽冠のヘリオッド》は人気が高いカードだ。パイオニアではこれと《歩行バリスタ》の2枚を揃えればそのままゲームに勝てる、コンボパーツとしてデッキを確立させている。

 スタンダードでも、他の神々を扱うデッキは目立ってはいないところで、ヘリオッドを用いる白単は有力な候補の1つとなっている。リストをご覧いただこう。

James Gustafson - 「白単ライフゲイン」
Star City Games Standard Classic Philadelphia 13位 / スタンダード (2020年2月9日)[MO] [ARENA]
19 《平地
4 《アーデンベイル城
1 《総動員地区

-土地(24)-

4 《命の恵みのアルセイド
4 《癒し手の鷹
3 《巨人落とし
4 《アジャニの群れ仲間
4 《太陽に祝福されしダクソス
2 《高名な弁護士、トミク
4 《太陽冠のヘリオッド
3 《不動の女王、リンデン

-クリーチャー(28)-
2 《影槍
2 《黒き剣のギデオン
4 《群れの力、アジャニ

-呪文(8)-
2 《静寂をもたらすもの
4 《敬虔な命令
2 《希望の夜明け
2 《解呪
2 《ガラスの棺
2 《不敗の陣形
1 《黒き剣のギデオン

-サイドボード(15)-
Star City Games より引用)

 

 ライフを得ることでクリーチャーを強化できるヘリオッドを活かすために、白の軽量クリーチャー、ライフ獲得手段が多数採用されている。

 《癒し手の鷹》《命の恵みのアルセイド》などの絆魂持ち、

 ヘリオッドに《影槍》《黒き剣のギデオン》の絆魂付与、

 《太陽に祝福されしダクソス》《群れの力、アジャニ》と直接的ライフ回復源……

 すべてはライフゲインのためにある。これらを展開しながら回復し、ヘリオッドと《アジャニの群れ仲間》の+1/+1カウンターを置く能力を誘発させまくって高い打点を弾き出して勝つのだ。

 ヘリオッドと最も相性の良いカードを選ぶとしたら……彼の勇者である《太陽に祝福されしダクソス》は信心も濃く、ガリガリと回復能力を誘発させて貢献してくれるが、彼よりももっと白の信心に厚く、瞬間的にとてつもない回復量を叩き出すのは《不動の女王、リンデン》だ。

 彼女を出して白の信心を5以上に引き上げてヘリオッドをクリーチャー化させつつ、全軍突撃で攻撃クリーチャー1体につき1点回復を3回以上同時に誘発させてカウンターをばら撒けば……勝負ありッッ。綺麗に動けば4ターン目にこんな動きから12点!みたいな強烈なムーブをかませるのだ。

 打点もさることながら回復量もエグいので、アグロデッキにとっちゃダメージレースが完全に崩壊してもうオシマイってな感じである。特に「赤単アグロ」なんかは泡を吹いて倒れるだろう。ダクソスが硬すぎて突破できないのも苦しい。そういったデッキによく当たるのであれば、この「白単ライフゲイン」なり「白単信心」なりと呼ばれるデッキは有力なアンサーとして立ち上がってくるだろう。

 悪役っぽい部分が強く伝わっているヘリオッドだが、彼への信心を示せばしっかりとプレイヤーを勝利へと導く、太陽神であることもまた事実だ。まだ彼を使ったことがないプレイヤーには、その力を体感してみてほしい。彼のことを忘れない人々がいる限り、彼は巨岩の下敷きになっているということを考えながらね……。

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索