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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
ロータス・ブリーチ(パイオニア)
《Black Lotus》はマジック最古のカードのひとつであり、イラストも印象に強く残るものであるためマジックでも最も人気のあるカードのひとつだ。もちろん、カードとしても大変に強力であり、最古の最強カード群「Power 9」の筆頭にカウントされている。0マナにして3マナを生み出すという、マジックの常識を打ち破るマナブーストっぷりはまさしくワンアンドオンリー。
《Black Lotus》の登場から約26年、時折このカードのリメイク的なカードがデザインされ世に放たれてきた。好きな色マナを3つ得るという、人類の夢。これを叶えるためにリメイクカードはある程度の代償・プロセスを要する。
それらの中でも最新の1枚は《睡蓮の原野》。
これは正確にはLotusのリメイクである《水蓮の谷間》のリメイク、先代と違ってタップインなのでマナを出すのにタイムラグはあるが、生け贄に捧げる土地はタップ状態でもよくなり、そして何より呪禁を持つので、せっかく出したのにすぐさま破壊されて大損、ということが起こりにくくなっている。
手堅くなったとはいえ《睡蓮の原野》は癖のあるカードなのは事実。なのでスタンダードではこれを使いこなせるデッキは現れていない。が、フォーマットが変われば話は別だ。パイオニアにおいては希少な、土地1枚から3マナを生み出すカードである。そしてこのフォーマットには土地をアンタップする手段がいくつかある。《睡蓮の原野》から3マナ出してアンタップ、さらにアンタップ……この手順を何度も行えば、膨大なマナを得ることが可能だ。
フォーマット設立から少し経ったころ、この《睡蓮の原野》と土地アンタップカードでガンガンマナを生産するコンボデッキが誕生した。それは時間の流れとともにその形を変え続け、そしてプレイヤーズツアー・フェニックス2020の時点でひとつの完成形へと至った。
それでは「ロータス・ブリーチ」を紹介しよう。
1 《森》 4 《睡蓮の原野》 2 《繁殖池》 4 《植物の聖域》 4 《神秘の神殿》 3 《ヤヴィマヤの沿岸》 1 《隠れた茂み》 4 《演劇の舞台》 1 《爆発域》 -土地(24)- 4 《樹上の草食獣》 4 《願いのフェイ》 2 《サテュロスの道探し》 4 《砂時計の侍臣》 -クリーチャー(14)- |
4 《見えざる糸》 4 《巧みな軍略》 4 《森の占術》 3 《死の国からの脱出》 1 《神秘の論争》 4 《熟読》 1 《時を越えた探索》 1 《発展 // 発破》 -呪文(22)- |
2 《自然のままに》 1 《秘本掃き》 2 《霊気のほころび》 1 《死の国からの脱出》 2 《神々の憤怒》 1 《失われた遺産》 1 《神秘の論争》 2 《至高の評決》 1 《思考のひずみ》 1 《神秘を操る者、ジェイス》 1 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(15)- |
このデッキが一体どのような動きをするのか、その解説には実際のゲーム内容を振り返るのが一番かもしれない。プレイヤーズツアー・フェニックス2020でこのデッキを使用し、準優勝まで勝ち上がったウィリアム・ジェンセン/William Jensenのゲーム展開を振り返ってみよう。
1ターン目:《植物の聖域》から《樹上の草食獣》、2枚目の《植物の聖域》を置いてエンド
2ターン目:《森の占術》から《睡蓮の原野》を持ってきて出し、《植物の聖域》2枚を生け贄に捧げてエンド
3ターン目:《睡蓮の原野》から{G}{G}{G}。《演劇の舞台》を出して2マナで能力を起動して原野のコピーになる。残った{G}で《樹上の草食獣》から《植物の聖域》を置いてエンド。
4ターン目:原野から{U}{U}{U}、《砂時計の侍臣》をサイクリングして原野をアンタップし、もう一度タップで計4マナ。これで《願いのフェイ》を出来事《成就》として唱え、サイドボードから《精霊龍、ウギン》を手札に加える。2枚目の《演劇の舞台》を出してターンエンド。相手のエンドに舞台の能力を起動し、原野のコピーに。これで戦場には実質原野が3枚。
5ターン目:すでに土地から10マナ得られる異常事態。原野とそのコピーをタップして9マナ、《精霊龍、ウギン》を戦場へ。相手の戦場には《太陽冠のヘリオッド》と《歩行バリスタ》が揃っており、ターンを返すとバリスタに絆魂をつけられて無限ダメージのコンボが完成するという状況。ここはウギンでバリスタにダメージを与えることを選んで除去。残ったマナを使って3枚目の《演劇の舞台》も原野のコピーにしてマナはもうフルスロットル。
6ターン目:ウギンの[-3]能力で戦場を平らに。追放領域から《願いのフェイ》を唱え、すぐさまこれの能力を起動、不要な土地を捨てて手札に戻し、再び《成就》として唱えて《神秘を操る者、ジェイス》をサーチ。そのまま唱え、[+1]能力でドローしてターンエンド。
7ターン目:《砂時計の侍臣》をサイクリング、原野をアンタップ。ジェイスの[+1]能力を起動し、対象は自分。《熟読》を含む2枚が墓地に置かれ、1枚ドロー。フェイを出して戻して《成就》の動きを再び、持ってきたのは《死の国からの脱出》。十分な量の墓地を確認し、対戦相手は投了する。
なんとも鮮やかな動き、尋常ならざるマナ生産力だろうか。最後、なぜ対戦相手が投了したのかというと……戦場には十分な量の《睡蓮の原野》があり、墓地には《熟読》があり枚数もたっぷり。これを唱えてドローし、土地を2枚アンタップしてマナが増える。引いてきた《見えざる糸》《砂時計の侍臣》《熟読》でさらにマナが増える。《願いのフェイ》ループで《秘本掃き》を持ってきたら後はこれを自分に対して唱え、ありったけのマナを注いで脱出連打! ライブラリーを空にしたところでドロー呪文を唱えれば《神秘を操る者、ジェイス》の条件が達成されて勝利と相成るのである。実に美しいコンボではないか。
《睡蓮の原野》を《死の国からの脱出》と絡めて、何度もアンタップしてライブラリーを落とし引き切って勝利する、というコンボは『テーロス還魂記』発売直後からその数を増したが、プレイヤーズツアー名古屋およびブリュッセルでは、合わせてトップ8に1名のみだった。フェニックスではこのデッキを用いたジェンセン含む2名がトップ8に進出し、一気に存在感をアピール。前者2つのトーナメントから1週間空いたため、プレイヤーたちのこのデッキへの理解度・熟練度も増したのだろう。
また、その1週目に大いに活躍した「真実を覆すものコンボ」と対戦相性が良いというのもこのデッキのセールスポイントだ。まあ《真実を覆すもの》系のデッキのみならずほとんどのデッキに対して勝ち越し、今大会の一番の勝ち組デッキではあったのだが。
もちろん完全無欠というわけではなく、原野を準備している間にライフをかっさらう「赤単アグロ」には大きく負け越している。今後はこのデッキを含むコンボ系を圧倒するために赤単が増えそうな予感だ。
パイオニアのメタゲームは、確実に回転していくのだろう。これぞトーナメントシーンって感じがするなぁ。
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