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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
アゾリウス・スピリット:引き算の構築(パイオニア)
構築戦において多色のマナを生み出す土地の存在は大きい。単色では成し得なかった動きを実現するための重要な基盤であり、我々が各フォーマットで扱うデッキはこの多色土地の存在によってコントロールされていると言っても過言ではない。
カードプールが拡がればそれだけ多色土地の選択肢が増えデッキの自由度が増す。結果として構築戦では単色のデッキよりも3色以上のデッキと遭遇することが多かったりする。各色のパワーカードを集結させるのだから、そりゃあ多色デッキは強い。組むことを許してくれる基盤があるのであれば組むべきだろう。
ただ、いたずらに色を足すだけというのは推奨できることではない。ここがマジックの奥深いところだ。いくら多色土地が強いと言っても、3色以上のデッキはマナトラブルに陥ることを100%回避することはできない。2色以下のデッキと比べればその差は大きなものだ。
3色の強いデッキがあったとする。それが3つの色を持つ多色カードを主軸にしているなら話は別だが、そうでない場合……例えば、2色のクリーチャーをもう1色のカードでサポートするといった構成のデッキであったとする。そのようなデッキは往々にして、3色目が抜け落ちることが多い。これとこれは相性が良くて、土地がそれを可能にするから足す……という足し算の構築から、オーバーキル気味だし、2色で十分だろうという引き算の構築へ。
パイオニアではこの変化を遂げたデッキがプレイヤーツアー予選を勝ち抜いた。スピリットだ。
8 《島》 5 《平地》 4 《神聖なる泉》 4 《氷河の城砦》 1 《港町》 2 《シェフェトの砂丘》 -土地(24)- 4 《霊廟の放浪者》 4 《鎖鳴らし》 4 《無私の霊魂》 4 《至高の幻影》 4 《呪文捕らえ》 3 《厚かましい借り手》 3 《ネベルガストの伝令》 2 《拘留代理人》 2 《天穹の鷲》 2 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー(32)- |
4 《時を解す者、テフェリー》 -呪文(4)- |
2 《往時の主教》 2 《弁論の幻霊》 2 《反射魔道士》 1 《豊潤の声、シャライ》 2 《石の宣告》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《ドビンの拒否権》 2 《残骸の漂着》 -サイドボード(15)- |
パイオニアのカードプールには各自思い入れの強いカードが多数存在する。一時代を築き上げた《集合した中隊》もその1つだ。3マナ以下のクリーチャーを2体戦場に出すこのインスタントで、《反射魔道士》や《呪文捕らえ》をライブラリーからシュシュッと参上させてがっぽり得する「バント・カンパニー」という3色デッキがスタンダードに君臨していた。
モダンでも、そのままクリーチャー陣を強化したデッキや、《呪文捕らえ》に合わせて《ドラグスコルの隊長》などスピリットを多くした「バント・スピリット」が覇権を争う一角だった時期があった。
パイオニアには《集合した中隊》と各種スピリットが揃っている、これすなわち「バント・スピリット」を組むしかないと思い込んで、これを使うプレイヤーは少なくなかった。これは決して間違いではないのだが、わざわざ《集合した中隊》を使うために緑を足す必要もないのでは、と実感したプレイヤーもまた少なくなかったようだ。そんなわけで引き算、バントから緑を引いてアゾリウスにしたデッキがこのリストだ。
やることはいたってシンプル、メインデッキの非クリーチャー呪文が《時を解す者、テフェリー》だけなことからもわかる通り、クリーチャーをガンガン展開して殴り勝つのである。
クリーチャーの大半をスピリットで固めることで《至高の幻影》で強化が可能。また、このデッキのスピリットは皆飛行を持っているので、《天穹の鷲》も追加の強化役として仕事をする。
またスピリットたちは《鎖鳴らし》がいるとインスタント・タイミングで唱えられる。
自分のターンでは土地を置いて攻撃し、相手のターンに《呪文捕らえ》や《鎖鳴らし》を構えて除去や大きなアクションに対して睨みを利かせる。それらが飛んで来たら、これらのスピリットで対処しつつ殴れるクリーチャーを増やし、平穏にターンが終わるのであれば他のスピリットをターン終了ステップに唱えて戦場をより強くしていく、という具合に瞬速を最大限に活かして戦うのだ。
《ネベルガストの伝令》もまた瞬速と相性が良く、これで相手のサイズで上回るクリーチャーの攻撃を防ぎながら、空からペシペシと殴ってライフレースを勝つことも狙っている。
非スピリットのクリーチャーも優秀なスタッフが揃っている。《厚かましい借り手》と《拘留代理人》はパーマネントへの対処を担う。
そして《大天使アヴァシン》、彼女は……まさしくスーパーカードだ。
ブロック決定後にサッと飛び出て自軍に破壊不能を与えて一方的に討ち取ったり、この手のデッキにとって危険な《至高の評決》へのアンサーとなったり。また、《霊廟の放浪者》や《無私の霊魂》のような生け贄に捧げるスピリットを用いることで意図的に《浄化の天使、アヴァシン》へと変身させ、3点ダメージばら撒きで相手の大群を薙ぎ払うなんてことも。
上記の瞬速スピリットたちにこのアヴァシンなどがいれば、《集合した中隊》がなくても確実な仕事ならお任せあれってわけだ。
ちょくちょく紹介しているが、《時を解す者、テフェリー》と《呪文捕らえ》という相性抜群のコンビにも要注目。
《呪文捕らえ》は一時的な打ち消しとして機能する便利なヤツではあるが、これが戦場を離れると追放していた呪文が再度唱えられてしまうという弱点がある。しかし《時を解す者、テフェリー》が戦場にいると、対戦相手はソーサリーのタイミングでしか呪文を唱えられなくなる。《呪文捕らえ》の能力が誘発しても、その追放したカードは唱えられないものとして処理されるのだ。恐れるものは何もない、テフェリーの[-3]能力で《呪文捕らえ》を回収し、相手のアクションをことごとく封じてしまおう!
3色デッキという足かせから脱することでデッキとして一皮むけ、大きな結果を残すことに成功したスピリット・デッキ。引き算構築の成功例だね。もちろん、引き算だけがすべてではないのですべてのデッキがこれを見習う必要はないのだが、今使っている3色以上の多色デッキがどうにも振るわないという際には、思い切って引き算に挑戦することをオススメするよ!
さて、早いもので今年ももう終わるわけで……当コラムの年内更新はこれが最後となる。今年もたっぷりデッキを紹介できて、実に充実した1年だったなぁ。楽しくやらせてもらっているのも読者の皆さんあってこそ。今年も1年お世話になりました。テーロスやゼンディカー、新次元が待ち構えている2020年にまたお会いしましょう! 良いお年を!
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