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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

野獣はエルフに恋をする(あるいはゴブリン)(パイオニア)

岩SHOW

 『エルドレインの王権』において登場したコレクター泣かせの新要素、ショーケース・カード

 ブースターパックから時折飛び出す、他のカードとは一線を画す枠デザインに優美なイラストの数々……思わず全部集めたくなるというものだ。MTGアリーナでもこれらのアートに切り替えるスタイルが手に入るイベントが行われていたので、しっかり入手したファンも多いことだろう。僕はマジックフェストで出張中だった週のものを取り逃してしまった……が、個人的に最も美しく、またかわいらしいと思っている《恋煩いの野獣》は入手できたので一安心。

jp_pu1CyUVKNE.png

 まさしく絵本の1ページを切り抜いたような、この美女と野獣を描いたアート、良いよねぇ。

 カードとしても3マナで5/5と破格のサイズで強く、構築シーンでも活躍しているのが嬉しいところ。1/1をコントロールしていなければ攻撃できないというデメリットもゲームにおいては構築を工夫させ、か弱い美女が居なければ心を開かないというのもフレイバー的に素晴らしく、絶妙なものだ。

 現行スタンダードでは、自身の出来事である《切なる願い》から出した人間や、《エッジウォールの亭主》でこの問題をカバーする。美女と野獣がモデルだが亭主のようなおっさんでも良いし、《穢れ沼の騎士》のようにゾンビであっても問題ないという博愛主義な野獣である。

 このカードと最も相性が良いと言えるのは《ラノワールのエルフ》だろう。

 1ターン目にラノワール、2ターン目に野獣、3ターン目から5/5が殴るという動きはなかなかの圧力。スタンダードではローテーションにより叶わない恋に終わってしまったが、パイオニアであれば二人の仲を阻むものはない。パイオニアであればラノワールと全く同じ1マナエルフの《エルフの神秘家》も使えるので、4枚以上用いることも可能だ。

 今日は野獣を用いたパイオニアのデッキを紹介だ!

David Hall - 「グルール・アグロ」
Magic Online Pioneer League 5勝0敗 / パイオニア (2019年11月12日)[MO] [ARENA]
8 《
6 《
4 《踏み鳴らされる地
4 《獲物道
-土地(22)-

2 《ラノワールのエルフ
4 《エルフの神秘家
4 《ゴブリンの熟練扇動者
4 《軍勢の戦親分
4 《恋煩いの野獣
2 《砕骨の巨人
3 《探索する獣
2 《熱烈の神ハゾレト
-クリーチャー(25)-
2 《乱撃斬
4 《むかしむかし
4 《密輸人の回転翼機
3 《エンバレスの宝剣
-呪文(13)-
2 《漁る軟泥
1 《栄光をもたらすもの
3 《燃えがら蔦
2 《ドムリの待ち伏せ
2 《英雄的介入
2 《溶岩コイル
1 《力ずく
2 《反逆の先導者、チャンドラ
-サイドボード(15)-
David Hall氏のTwitter より引用)
 

 赤と緑のいわゆる「グルール・アグロ」、古くは「ステロイド」と呼ばれた形のデッキだ。

 サイズに優れたり、速攻を持ったりするクリーチャーを最序盤からガシガシと展開し殴るというのがこのデッキの目指すところ。そのためのアプローチの1つとして上述のエルフと野獣の組み合わせを用いる。1マナのマナエルフは合計6枚採用し、《むかしむかし》も4枚あるので、大抵の場合は1ターン目にこれらのエルフを出して2ターン目には3マナが得られるという作りになっている。そこで、野獣のみならず3マナの強力クリーチャーを多く採用し、2ターン目からそれらで圧をかける!というのをメインコンセプトにしている。

 野獣以外の3マナ域、それを担うのが……Wラブルだ。

 ラブルというのは「Rabblemaster」が由来で、《ゴブリンの熟練扇動者》の英名からつけられた略称だ。戦闘開始ステップに1/1速攻のゴブリン・トークンを生成する能力を持っており、除去することができずに放置してしまうとこれ1枚でワラワラと軍団を生み出してしまい、手が付けられなくなる。

 何かと似ているなと思ったプレイヤーはご名答、これは現スタンダードにいる《軍勢の戦親分》の先代とも言える存在だ。

 すなわち戦親分は2代目ラブルであり、このデッキはWラブルを備えているってことだ。ゴブリンを率いるこれらのリーダーの相性も抜群で、並んでしまうと熟練扇動者のパワーがモリモリと増長して一気にゲームが終わってしまう。除去自体は簡単にされてしまうカードではあるが、だからこそ数で勝負。野獣との計12枚の3マナ域で波状攻撃を仕掛けるべし。

 ラブルたちと野獣がそもそも相性が良いのも嬉しいところ。毎ターン1/1を呼び出してくれるので、愛しいエルフや人間が除去されてしまっても安心だ。

 また、これらの1/1は殴りに行っても無駄死にするような状況になっても使い道が用意されている。《密輸人の回転翼機》だ。

 飛行持ちで3/3とサイズに優れて手札を入れ替えできる……今さら説明するまでもないほどのパイオニアを代表するパワーカードにトークンを搭乗させることで、1/1も無駄なく打点として運用しよう。

 《ゴブリンの熟練扇動者》の「ゴブリンに強制的に攻撃をさせる」能力から他のゴブリンを護るという手段にも使える。搭乗は何体でも可能だからね。今は全軍突撃する時じゃないってケースでは、コプターにゴブリンをぎゅうぎゅう詰めに乗り込ませて自滅を防ごう。

 あるいは開き直って、フルパンチをかましつつブロック指定後に《エンバレスの宝剣》を投げつけてゲームエンド、という展開もたびたびあるだろう。

 大量のゴブリンとともに攻撃してパワーを膨れ上がらせた熟練扇動者に持たせたりすると、二桁ダメージも夢じゃない。

 分厚い3マナ域を2ターン目からプレイして対処を迫り続ける。除去しても同様のカードがどんどんと出てくるし、さらに《探索する獣》と《熱烈の神ハゾレト》など後続もズシリと重たいパンチ力を誇っている。クリーチャー除去を最低限に抑えることで可能となった構築である。

 もっと相手の戦場に干渉したいという場合には《乱撃斬》の枚数を増やしたり、《ドムリの待ち伏せ》をメインから採用したり……いっそのこと3マナ圏にドムリ本人を採用するって手もある。《ボーラスの壊乱者、ドムリ》でも良いが、野獣が永遠に殴れなくなってしまうのでここは《ドムリ・ラーデ》を推しておこう。

 こんな具合に、パイオニアの選択肢は無数に存在する。勝っているリストをネットで見つけたら、まず回してみて、そこから徐々に自分自身や環境に合うように調整していくのが良いだろう。デッキチューニングは楽しいよ、野獣の恋が実る構築を各々考えてみてね!

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