READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

エルドレイン×エルドラージ(モダン)

岩SHOW

 『エルドレインの王権』の世界観はどちらかといえば平和なものだ。なにせ《めでたしめでたし》で終わるセットだからね、久しぶりにハッピーエンドとなったわけで、そのことにほっとしたファンも少なくないはず。

 ただ、このセットが発表されたばかりの、まだほとんどがヴェールに覆われていたタイミングでは、不安を抱くファンもいたものだ。なぜかというと、そのセット名。エルドレイン、背景ストーリー的にはちょっと不吉な響きでもあって……かつて次元の破壊者として暴れ、貪り喰らいまくった「エルドラージ」を思い出してしまうのだ。

 エルドラージは、最初は封印されていたゼンディカーに壊滅的な打撃を与えた。親玉2体が退治されてゼンディカーは一件落着となったが、『異界月/Eldritch Moon』がエルドという響き繋がりで、もしかしたら……と噂され、その予想通りにエルドラージはイニストラードに侵入。最後の親玉、エムラクールが次元のすべてと同化しようとするが、これを月に封印することでひとまず沈静化した。

 しばらくは多元宇宙の脅威はニコル・ボーラスが務めていたが、彼が表舞台を去った今、エルドレインはもしかして……と。

 これは杞憂で終わって、本当にめでたしめでたしというのが個人的な感想だ。ただ、エルドレインにエルドラージの魔の手が伸びることはなかったが、モダン環境ではむしろエルドレイン側がエルドラージに接触しているとのことだ。

 コズミックホラーとおとぎ話の強烈なコラボレーションをご覧いただこう!

C_E.L - 「シミック・エルドラージ」
Magic Online Modern PTQ #11995292 5位 / モダン (2019年10月20日)[MO] [ARENA]
2 《冠雪の森
1 《冠雪の島
1 《荒地
1 《繁殖池
3 《霧深い雨林
4 《虹色の眺望
4 《ヤヴィマヤの沿岸
4 《エルドラージの寺院
1 《ウギンの聖域
1 《魂の洞窟
-土地(22)-

4 《貴族の教主
2 《極楽鳥
4 《作り変えるもの
2 《空中生成エルドラージ
4 《難題の予見者
4 《現実を砕くもの
1 《希望を溺れさせるもの
1 《終末を招くもの
2 《老いたる深海鬼
1 《歩行バリスタ
-クリーチャー(25)-
4 《古きものの活性
4 《むかしむかし
2 《四肢切断
3 《王冠泥棒、オーコ
-呪文(13)-
2 《溜め込み屋のアウフ
3 《墓掘りの檻
3 《頑固な否認
3 《部族養い
2 《軽蔑的な一撃
1 《統一された意思
1 《仕組まれた爆薬
-サイドボード(15)-
 

 現在スタンダードのベストムーブとされるのは、1ターン目《金のガチョウ》からの2ターン目《王冠泥棒、オーコ》だ。食物・トークンを生み出し、それを3/3の大鹿に変えて盤面を固める。あるいは相手のクリーチャーを大鹿に変えて戦力ダウンさせたり、食物と相手のクリーチャーを交換したり……という悪だくみを、相手の体制が整う前のド開幕から狙うわけだ。

 モダンであれば《貴族の教主》《極楽鳥》と1マナクリーチャーの選択肢も増え、より決まりやすくなる。

 このスタンダードのブン回りと、マナクリーチャー&《エルドラージの寺院》の加速により序盤から《難題の予見者》や《現実を砕くもの》を展開するモダンのエルドラージ系デッキのブン回り。これらを融合させたのがこの「シミック・エルドラージ」だ!

 モダンでもオーコは果たして強いのか? 答えはYES。モダンはスタンダード以上に低コストで強烈な能力を持ったクリーチャーがわんさかと存在する環境。たとえば《死の影》とかね。これをスッと能力なしの3/3にしてやれば、相手は《死の影》を出すためにただライフを失って状況を悪くしただけになってしまう。《献身のドルイド》《療治の侍臣》のようにコンボのパーツを担うクリーチャーも無害な鹿に変えてやろう。

 また、アーティファクトも能力なしにしてしまえる点は非常に大きい。このデッキであれば《罠の橋》を設置されると攻撃がストップしてしまうが、鹿にしてしまえば渡れぬ橋などない。エルドラージの群れでひき潰してやろう。

 エルドラージたちは無色であるため色対策に引っかからず、また点数で見たマナ・コストに対して優秀なサイズを持ちつつ、さらにゲームを有利に進めるための能力を有している点が素晴らしい。

 {C}(無色マナ)を要求する《難題の予見者》《現実を砕くもの》は格別で、これらを用いるために《ヤヴィマヤの沿岸》などの{C}を生み出せる土地を採用している。

 それは他のエルドラージ系デッキでもお馴染みなのだが、このリストでは色マナを必要とする面々もまた強力だ。特に攻撃をねじ込むことをサポートする。

 《希望を溺れさせるもの》はエルドラージ・末裔・トークンを2体引き連れてきてクリーチャー3体として換算できると同時に、その末裔を生け贄に捧げて相手のクリーチャーをタップする。

 《老いたる深海鬼》はさらに強烈で、これを唱えただけでパーマネントを4体もタップしてしまう。普通のデッキであればこれで守りはがら空きになり、総攻撃でジ・エンド。

 この深海鬼は8マナと重いが、瞬速持ちで効果も大きい。そして「現出」能力により、青マナとさらに生け贄を要求するが、より軽いコストで唱えることが可能となる。5マナくらいだったら現実的なコストだ。《空中生成エルドラージ》《作り変えるもの》など生け贄に捧げても痛くない、カード1枚で2枚分の働きをする連中を供物にして、タコ・エルドラージを降臨させてゲームを決めよう。

 これらのクリーチャーと、そしてこのデッキの重要なエンジンであり引けた時とそうでない時とでその動きに格段に差がついてしまう《エルドラージの寺院》の双方にアクセスできるもの。これまでは《古きものの活性》がその役を担っていたのだが、『エルドレインの王権』からの新カード《むかしむかし》がここに加わった。

 最初に唱える呪文であればタダ、これは速度勝負のモダンでもむちゃ強! デッキの安定感はより増すこととなったのだ。

 『エルドレインの王権』からの新カードで安定した動きに拍車をかけ、そしてブン回りルートも1つ増え、パーマネントへの対処能力も上がったエルドラージ・デッキ。青緑の2色という、これまでにはあまり見なかったカラーリングでも強いデッキが組めるようになったのは喜ばしい。オーコはスタンダードのみならずモダンでも大鹿を量産だ!

 ……え、さらに深いフォーマットでも暴れているって? その話は明日のお楽しみだよ!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索