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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

ケシス・コンボ:隠された伝説(スタンダード)

岩SHOW

 昨今のセットでは背景世界のストーリーも公式サイトに記されるようになり、プレイヤーにとってより身近なものに感じられるようになっている。それらのストーリーの登場人物たちはプレインズウォーカーや伝説のクリーチャーという形でカード化され、ゲーム内でも強いカードとして存在感を放っている。

 古いセットではプレインズウォーカーはそもそもカードにならず、伝説のクリーチャーはまったくいなかったり、いても1~2枚だったり、そもそも一体このキャラ誰なん?状態だったり。そもそも伝説のクリーチャー自体があんまり強くないカードが多かったりしたね。大変に強力な伝説のカードがあふれたこの時代は素晴らしいと思うよ!

 今回はそんな伝説のカードがデッキの大多数を占める、稀に見る尖った構築が為されたデッキを紹介しよう!

Honey - 「ケシス・コンボ」
2019ミシックチャンピオンシップⅤ(MTGアリーナ)予選ウィークエンド 本戦権利獲得 / スタンダード (2019年8月17~18日)[MO] [ARENA]
3 《神聖なる泉
3 《氷河の城砦
4 《湿った墓
1 《水没した地下墓地
4 《繁殖池
1 《神秘の神殿
1 《神無き祭殿
3 《静寂の神殿
3 《疾病の神殿
2 《寺院の庭

-土地(25)-

4 《精励する発掘者
4 《迷い子、フブルスプ
4 《万面相、ラザーヴ
4 《隠された手、ケシス

-クリーチャー(16)-
4 《モックス・アンバー
4 《ケイヤの誓い
2 《ウルザの殲滅破
4 《時を解す者、テフェリー
2 《夢を引き裂く者、アショク
3 《伝承の収集者、タミヨウ

-呪文(19)-
2 《紺碧のドレイク
2 《祖神の使徒、テシャール
1 《狼の友、トルシミール
2 《軍団の最期
2 《古呪
2 《漂流自我
1 《ウルザの殲滅破
1 《夢を引き裂く者、アショク
1 《神秘を操る者、ジェイス
1 《伝承の収集者、タミヨウ

-サイドボード(15)-

 

 赤以外の4色からなる「ケシス・コンボ」デッキだ。デッキ名の通り、キーカードは《隠された手、ケシス》。

 伝説のカードのコストを軽減し、また墓地から伝説のカードを2枚追放することで他の伝説のカードが墓地から唱えられるようになる能力を持つ。これ以外のカードを伝説で固めれば、コストが安くなるし、もし対処されてもその伝説のカードを再利用できるぞ! 伝説で固めてあるので《モックス・アンバー》もマナ加速としてしっかり機能する! 《ケイヤの誓い》《ウルザの殲滅破》でクリーチャーを除去し、《時を解す者、テフェリー》や《伝承の収集者、タミヨウ》で有利な状況に蓋をして勝利しよう!

……なんて生温いデッキではない。

 このデッキはケシスと《モックス・アンバー》を組み合わせることで、相手の喉首を狙いに行く、そんなゴリゴリの殺意にあふれたコンボデッキである。ケシスとアンバー、そして《精励する発掘者》がコンボパーツだ。

  1. まずはケシスと発掘者が戦場に並んでいる状況を作る。
  2. アンバーを手札から唱える。伝説の呪文を唱えたので発掘者の能力が誘発、対象を自分にしてライブラリーを2枚墓地に置く。アンバーからマナを得る。
  3. 2枚目のアンバーを唱え、同様にライブラリーを墓地に落とす。新しいアンバーを残して使用済みのものは墓地へ。アンバーからマナを得る。
  4. ケシスの能力で墓地から2枚、アンバー以外の伝説のカードを追放する。墓地からアンバーを唱える。発掘者で自分を対象に、使用済みのアンバーを墓地に置いて新しいアンバーからマナを得る。
  5. ケシスの能力を都度起動し、(4)の動きを繰り返す。ライブラリーのカードが墓地に落ちることで、アンバーをはじめ伝説のカードの枚数が増え、どんどんマナが増える。《迷い子、フブルスプ》を何度も唱えてカードを引いたり、タミヨウや《夢を引き裂く者、アショク》によって自分のライブラリーを全て墓地に落とす勢いで掘り進む。
  6. 発掘者が2体以上並ぶ状況になったら、アンバーをグルグル回しながら発掘者の能力の対象を対戦相手にしてライブラリーを削って0枚にする。あるいはアンバーから白マナと黒マナを交互に得て、《ケイヤの誓い》を何度も唱えて3点ダメージを本体に撃ち込み続けてライフを0にして勝利する。

 

 ケシス、アンバー、発掘者のエンジンでマナを得まくりライブラリーを落としまくって、ループを形成して勝つ……実にコンボデッキらしい、芸術度の高いデッキである。いわゆる無限マナではないが、ゲームに勝利するにはそんなオーバーキルをしなくても良いということを思い出させてくれる。

 とりあえず発掘者と伝説のカードがあれば、自分のライブラリーを削ってアンバーとケシスのキーカードを探しに行ける。ケシスは《伝承の収集者、タミヨウ》の[-3]能力で回収したり、《万面相、ラザーヴ》から変身させるという寸法だ。これらのカードもまたライブラリーを削ってアンバーと伝説のカードを落としてループの形成を助ける、補助エンジン的な存在だ。テフェリーでコンボ妨害されない状況を作って、ケシスを出したら即座に決めに行こう!

 サイド後はケシスや発掘者への除去が厳しくなるだろう。なので《祖神の使徒、テシャール》をサイドインして、アンバーを唱えてこれらのカードを蘇生させ、悠々とコンボを決めてやろうじゃないか。《神秘を操る者、ジェイス》という別の勝ち手段も追加できる点も抜かりなしだ。

 一見大変に複雑なコンボデッキだが、僕も初見で難なくコンボを始動して勝つことができたので、見た目よりもずっと簡単だ。MTGアリーナでプレイすると時間が足りるのか?と思うかもしれないが、1つ1つのクリックでうーんうーんと悩んだりせず、スタック上の呪文や能力をすべて解決するボタンを活用すればまったく時間を気にせず、自分のライブラリーをすべて墓地に落としてダメージなりライブラリーアウトなりで勝利することができる。大事なのは落ち着きだ。次のケシス起動でどう動くのかをしっかりとイメージしながら落ち着いてクリックしていけば、君もこのコンボの快感をちゃんと味わえるぞ!

 このデッキは以前にも注目のプレイヤーとして紹介したオンドレイ・ストラスキー/Ondřej StráskýがMTGアリーナで行われたミシックチャンピオンシップ予選にて使用し、見事上位16名に食い込み権利を獲得したリストだ。ほぼ同一のリストでスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaも権利を獲得しており、この禍々しさあふれるデッキの強さを一晩で世に知らしめたのだった。

 チェコのマジックプレイヤー、ヤバいね! これからもイカしたデッキが彼の地から届けられることだろう。う~む、彼らのデッキ構築の原動力って、いったい何なんだ!?

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