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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

フェザー・アグロ(スタンダード)

岩SHOW

 不遇のキャラクターってのはどんな作品にも登場するもんだ。

 ラヴニカにおける赤白のギルド・ボロス軍の創設者にして初代指導者はラジア。『ラヴニカ:ギルドの都』にて《ボロスの大天使、ラジア》としてカード化されているので広く認知されている。このラジアよりもボロスのイメージが強いのは現指導者であるオレリア。『ギルド門侵犯』で《戦導者オレリア》として登場し、作中時間があまり経っていない『ラヴニカのギルド』でも健在、《正義の模範、オレリア》として再カード化されトーナメントシーンでも存在感を放った。

 この2名の天使がボロスの指導者であるわけだが……この2人の間にもう1人の天使がボロスを取り仕切っている時代があったことはあまり知られていない。

 ラジアは『ディセンション』のストーリーにて死亡、彼女の跡を継いだのがフェザーだ。フェザーはラヴニカ第1シリーズのストーリーにおける主役であるアグルス・コスの相棒なのだが、この時にはそのアグルス・コスとラジアがボロスの伝説枠を担ったためカード化されず。続く第2シリーズが始まる前にオレリアが彼女の指導に異を唱え、賛同者を得てギルドの実権を握り、フェザーは追放すると宣言したのだから、もちろん出番もカード化されることもなく……

 しかも追放決定後、魔法の球に囚われていた彼女の元に現れたのは、犯罪組織の長であるクレンコ。このゴブリンはフェザーの羽根を回収せよとの依頼を受けて潜入していたのだ。彼女の翼から羽根を引き抜いたところに衛兵がやってくるも、クレンコはフェザーが脱走しようと襲い掛かってきたと主張、憐れなフェザーはそのまま拘束される羽目に……ギルドの頂点から一転、人生はどん底へ。ちなみにこのフェザーの羽根を手に入れる任務をクリアしたクレンコは、依頼主からオルゾフ組の銀行が管理しているフェザーの金庫の鍵を手に入れ、彼女の財産をありがたく頂戴したそうだ。こんなひどい話があるかね。

 こんな不遇なキャラクターを、「ラヴニカ最終決戦! 出し惜しみなく全部出す!」と言わんばかりの『灯争大戦』がついに救いの手を差し伸べた。《贖いし者、フェザー》として初カード化だ!

 しかもこのフェザー、これまでになかったタイプの面白くて強い能力を有している! 環境最初期からフェザーを用いたボロスカラーのアグロデッキがさまざまな形で試されていた。そしてカンザスシティ、台北と続けて、グランプリのトップ8に名を連ねることに! いやぁ、ようやく報われたというか、活躍できて良かったなぁフェザー。

 それではそのデッキリストを確認しよう!

Teruya Kakumae - 「フェザー・アグロ」
グランプリ・台北2019 3位 / スタンダード (2019年6月8~9日)[MO] [ARENA]
8 《平地
6 《
4 《聖なる鋳造所
4 《断崖の避難所

-土地(22)-

4 《アダントの先兵
4 《戦慄衆の秘儀術師
4 《第10管区の軍団兵
1 《凶兆艦隊の向こう見ず
4 《贖いし者、フェザー
3 《軍勢の戦親分

-クリーチャー(20)-
4 《ショック
4 《無謀な怒り
4 《果敢な一撃
3 《防護の光
2 《黒き剣のギデオン
1 《暴君への敵対者、アジャニ

-呪文(18)-
3 《トカートリの儀仗兵
2 《凶兆艦隊の向こう見ず
1 《啓蒙
2 《溶岩コイル
3 《牢獄領域
2 《イクサランの束縛
2 《暴君への敵対者、アジャニ

-サイドボード(15)-
ChannelFireball より引用)

 《贖いし者、フェザー》は自身のクリーチャーを対象にしたインスタントかソーサリーの呪文を唱えると、ターン終了時にその呪文が手札に戻ってくるという能力を持つ。赤と白の2色のアグロデッキでは前のめりに攻めることは得意でも、すぐに手札が尽きてしまい、中盤から終盤にはドローに恵まれないと攻めきれずに終了……となりかねない弱点がある。フェザーはこの弱点を補うことができる能力を持ちながら、自身も3マナ3/4飛行と攻めに向いたスペックの持ち主。彼女自身や他のクリーチャーをインスタント or ソーサリーで強化して殴る、戻ったカードでまた強化して殴る、という粘っこい攻めで戦うのがこの「フェザー・アグロ」だ。

 少々ややこしい挙動に見えるフェザーだが、デッキの動き自体は非常にシンプル。クリーチャーを出して殴り、《果敢な一撃》で打点を上げるか相手の除去やブロックに《防護の光》を合わせる。

 これらのインスタントをフェザーがいる状況で使えば、手札を減らさずに押せ押せムードを継続できる。

 さらにこのデッキらしい1枚は《無謀な怒り》。

 1マナで相手のクリーチャーに4点という素晴らしいパフォーマンスを誇るが、同時に自分のクリーチャーも対象にして2点ダメージを与えなければならない。この一見デメリットな点も、自身のクリーチャーを対象にしている呪文なのでフェザーの能力で回収できると考えればただただプラスに働く。

 しかも対象にするのは破壊不能を得て2点ダメージを耐える《アダントの先兵》だったり、そもそもタフネス3以上のものだったり……《第10管区の軍団兵》だったり。

 この軍団兵がまた強い。上記のインスタントで対象に取るとサイズアップしつつ、占術1で次のターンのドローも調整してくれる。この軍団兵をガンガン育てるのがこのデッキの必勝パターンだ。

 インスタントを使いまわすフェザーは強いが、4枚の伝説のクリーチャーだけに頼るのは少々心もとない。このデッキをフェザーとともに成立させているのが《戦慄衆の秘儀術師》!

 このデッキのインスタントはどれも1マナなので、強化せずとも攻撃するだけで何かしらの呪文を再利用できる。《ショック》《無謀な怒り》を連発して相手のクリーチャーを焼き払うのは大変に楽しい。

 また、この秘儀術師の能力で唱えた呪文もフェザーの能力で手札に戻ってくるということをお忘れなく。唱えて解決され、秘儀術師の能力で追放される前にフェザーの能力で追放できるからだ。突然毎ターン4点除去を撃てるモードに突入できるのは最高のマジック体験なので、一度味わってほしい。

 一躍、強力カードとして新しいデッキを成立させたフェザーだが、『灯争大戦』の小説では出番はないらしい。欲張ってはいかんのだろう、カードが強くて楽しければ十分だと満足することが大事だ。慢心はまた失脚に繋がりかねないからね。

 ところで、このデッキでもエース級の活躍をする《戦慄衆の秘儀術師》だが、このカードを扱うデッキはこれだけに留まらない。明日は他の使い方を紹介しよう。

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