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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
マルドゥ・アグロ~歌姫と生け贄たち~(スタンダード)
本日もミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019にて活躍したデッキを紹介しよう。
このトーナメントは『ラヴニカの献身』発売から約1か月という準備期間を経て開催された。それだけの期間があれば、環境はかなり成熟した状態になる。新カードの強弱が十分に判明し、それすなわち有力デッキが浮き上がった環境での戦いとなる。どのデッキを選び、サイドボードにどのカードをどれだけ採用するのか、そういった各プレイヤーの細かい調整の結果を競う場になるわけである。
新セット発売から間もなくして開催されるトーナメントでは未知のデッキが出てきたりするが、今回のミシックチャンピオンシップではそういったまだ見ぬ強デッキが飛び出し大暴れ!ということはなかった。
……のだが、トーナメント終了後に公開されたスタンダード成績優秀デッキリストの中には、やはり面白いデッキたちが潜んでいた。毎回、こういう影で活躍していたデッキを見るのが楽しいのだ。
記念すべき第1回目のミシックチャンピオンシップにおいて8勝2敗という好成績を残した、とても個性的なリストがこれだ!
3 《沼》 4 《血の墓所》 2 《竜髑髏の山頂》 4 《神無き祭殿》 2 《孤立した礼拝堂》 4 《聖なる鋳造所》 2 《断崖の避難所》 -土地(21)- 4 《脚光の悪鬼》 4 《どぶ骨》 4 《アダントの先兵》 4 《火刃の芸術家》 4 《第1管区の勇士》 2 《忘れられた神々の僧侶》 4 《災いの歌姫、ジュディス》 3 《軍勢の切先、タージク》 -クリーチャー(29)- |
2 《喪心》 2 《屈辱》 4 《英雄的援軍》 1 《興行 // 叩打》 1 《炎鎖のアングラス》 -呪文(10)- |
2 《疫病造り師》 2 《強迫》 3 《溶岩コイル》 2 《ドリルビット》 1 《轟音のクラリオン》 1 《屈辱》 1 《不敗の陣形》 1 《実験の狂乱》 1 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》 1 《炎鎖のアングラス》 -サイドボード(15)- |
白黒赤、マルドゥと呼ばれる3色である。『ラヴニカの献身』にてラクドス(黒赤)とオルゾフ(白黒)が登場したことにより、すでにスタンバイしていたボロス(白赤)と組み合わせることで誕生したデッキとなる。
同じ3色デッキならスゥルタイ(黒緑青)やエスパー(白青黒)が目立った活躍をしているが、マルドゥが大きく注目されることはなかった。一応、オルゾフが持つ死後能力とラクドスが誇る伝説クリーチャー《災いの歌姫、ジュディス》と生け贄関係のカードを組み合わせて、コンボ色の強いクリーチャーデッキ・通称「アリストクラッツ」の最新型を作れるのではないかと注目しているプレイヤーは少なからずいた。
ただ……僕も少し考えてみたのだが、このコンセプトでデッキを作るのはとても難しいのだ(笑)。ジュディスと生け贄に捧げる用のクリーチャー、そして生け贄にするためのエンジン……これらをきちんとバランスよく引かなければデッキとして機能しないのが辛いのだ。
このデッキは、多くのプレイヤーが断念した「アリストクラッツ」の要素を取り込みつつも、それに依存しない形でデッキに仕上げた意欲作だ。
基本はジュディスを核にしたビートダウンデッキだ。彼女の相方としてこのデッキを成立させているのは《第1管区の勇士》。
他の3色の組み合わせでも活躍しているトークン生成のエキスパートだが、その強さはマルドゥでも輝く。2ターン目に勇士、3ターン目にジュディスと動けば、兵士・トークンが生成されそれが強化されて一気に強い盤面を作ることができる。《脚光の悪鬼》や《火刃の芸術家》といった多色のクリーチャーもどんどん展開し、打点をガンガンと高めていく。
トークン以外のクリーチャーはジュディスと並んでいると死亡するとダメージを飛ばすことができるので、相手のクリーチャーにサイズ負けしていても突っ込ませて、無理やり相討ちにしたりライフを削ったりといった、まさしくアグロに攻めまくることが可能だ。《英雄的援軍》でとどめを刺してやろう。
横展開をして殴るデッキとしての特性を高めつつ、アリストクラッツ的な動きを決められる時には狙っていこう。必要なパーツは《忘れられた神々の僧侶》。
これの能力は相手にクリーチャーとライフを失わせて、こちらは手札とマナを得られるというかなり強力なもの。そのコストはクリーチャーを2体生け贄に捧げるというヘビーなものだが、他のデッキではなかなか払えないそれを《第1管区の勇士》のトークン生成能力が支えてくれるというわけ。
また、それだけでなく《どぶ骨》も大車輪の活躍を見せてくれる。
生け贄に捧げて死亡しても、僧侶の能力で相手が2点のライフを失うため、《どぶ骨》の能力を即座に起動することが可能となる。その能力のために必要なマナもまた僧侶が生み出してくれるというわけだ。これで僧侶の能力を遠慮なく起動していける。これでバッシバッシと相手のクリーチャーを薙ぎ倒していく。
「青単アグロ」のようなクリーチャー除去が得意でないうえにクリーチャーで勝つというデッキには、このエンジンがまさしく地獄。これにジュディスが絡めば、骨が2体死んで2点飛んでさらにクリーチャーを生け贄にさせて骨回収……というハメパターンに持ち込むことができる。これはクリーチャーを用いないデッキにはあまり効かないのだが、だからこそ僧侶の枚数を抑えて2枚にしてあるのだろう。ハマる相手にはハマればラッキー、それぐらいの気持ちでデッキを組むのが良いかもしれない。このリストはそういうことを教えてくれた……ような気がする。
ミシックチャンピオンシップという大舞台に自家製のマルドゥで挑むというスタイル自体がカッコイイね。これからも形を変えて続いていく競技シーン、決勝ラウンドには進出できずとも味のあるデッキが顔を見せることがあるだろう。各種デッキリストには常に目を光らすべし!
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