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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

グリクシス・デルバー(レガシー)

岩SHOW

 《死儀礼のシャーマン》《ギタクシア派の調査》が禁止になったことで、複数のデッキが形を変えざるを得なかった。その中でも両方を採用していたこのデッキは……大打撃を受けたと言ってもいい。

 まずは前環境のリストを見て、在りし日の「グリクシス・デルバー」を思い出そう。

Daniel Duterte - 「グリクシス・デルバー」
グランプリ・シアトル2018(レガシー) 優勝 / レガシー (2018年4月6~7日)[MO] [ARENA]
3 《Underground Sea
2 《Volcanic Island
1 《Tropical Island
2 《溢れかえる岸辺
2 《汚染された三角州
2 《沸騰する小湖
2 《霧深い雨林
4 《不毛の大地

-土地(18)-

4 《死儀礼のシャーマン
4 《秘密を掘り下げる者
3 《若き紅蓮術士
2 《真の名の宿敵
2 《グルマグのアンコウ

-クリーチャー(15)-
4 《ギタクシア派の調査
4 《渦まく知識
4 《思案
2 《呪文貫き
4 《稲妻
1 《二股の稲妻
4 《目くらまし
4 《意志の力

-呪文(27)-
2 《外科的摘出
3 《陰謀団式療法
2 《紅蓮破
1 《狼狽の嵐
2 《悪魔の布告
1 《削剥
1 《古えの遺恨
1 《湿地での被災
1 《四肢切断
1 《最後の望み、リリアナ

-サイドボード(15)-

 前環境での使用率、実績ともにナンバーワン、レガシーで勝ちたいならコレを使えと言われた「グリクシス・デルバー」。青と赤を基調としたこのデッキに黒も織り込まれているのは《死儀礼のシャーマン》がいるから、この一言に尽きる。

 この稀代のマナクリーチャーであり、2点クロック(プレイヤー本体へのダメージ源)であり、たまに回復させてくれるスーパー1マナクリーチャーを最も攻撃的に用いていたのがこのデッキだ。《汚染された三角州》や《不毛の大地》をマナに換え、土地を極限まで削ったデッキの展開をサポートし、使い終わった呪文を追放してライフも脅かす。時に墓地利用デッキの前に1ターン目から立ちはだかる墓地対策となり、またタフネス2というのがニクらしかった……。

 死儀礼の能力をどう使っていくか、というプランを立てるのに《ギタクシア派の調査》も大いに貢献していた。

 マナを出してクリーチャーを出すよりも立たせて呪文を構えた方が有効……などなど、本来ちょっとした手掛かりなどから読み当てなければならない相手の手札を、公開情報にしちゃうことでイージーゲームに持っていく。マナのかからない点も魅力的で、《若き紅蓮術士》とつるんでしばしば悪さをしていたものだ。ここに《陰謀団式療法》まで絡むと……あぁ、苦い思い出だ。

 デッキの動きを支えるカードを失ったことで「グリクシス・デルバー」は解散するしかない……とも思われたのだが、どっこいなんとか生き延びた。各プレイヤーがこの8枚ぽっかり空いたスロットに何を採用しているのか?一部のプレイヤーは、少し前では考えられなかった、スタンダードのあの人気者を代役に起用していたりするぞ。

 それじゃあ、現環境の「グリクシス・デルバー」のサンプルリストを見てみよう!

Noah Walker - 「グリクシス・デルバー」
StarCityGames.com Team Open Worcester 3位 / レガシー (3人チーム構築戦) (2018年7月14~15日)[MO] [ARENA]
3 《Underground Sea
3 《Volcanic Island
4 《溢れかえる岸辺
4 《汚染された三角州
4 《不毛の大地

-土地(18)-

4 《ボーマットの急使
4 《秘密を掘り下げる者
2 《若き紅蓮術士
1 《真の名の宿敵
3 《グルマグのアンコウ

-クリーチャー(14)-
4 《渦まく知識
4 《思案
3 《定業
2 《呪文貫き
1 《陰謀団式療法
4 《稲妻
2 《二股の稲妻
4 《目くらまし
4 《意志の力

-呪文(28)-
3 《外科的摘出
2 《狼狽の嵐
1 《陰謀団式療法
1 《暗黒破
1 《紅蓮破
1 《赤霊破
2 《削剥
2 《悪魔の布告
1 《苦花
1 《最後の望み、リリアナ

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 過去に「グリクシス・デルバー」を用いて3回もグランプリトップ8に入賞した 「ミスター・グリデル」とでも呼ぶべきアメリカレガシー界トップクラスの強豪、Noah Walker。彼が「StarCityGames.com Team Open Worcester」で使用し、3位に入賞したデッキは《ボーマットの急使》入りグリデルだった。ボーマット? そう、あのスタンダードの赤いビートダウンデッキの先鋒を務める1マナアーティファクト・クリーチャーである。決して見間違いじゃない。

 死儀礼が抜けた1マナのスロットにボーマットが、そして《ギタクシア派の調査》の抜けた穴には《定業》3枚とメインからの《陰謀団式療法》1枚が投入される形となっている。これぞ新生グリデル、なのだ。

 ボーマットと死儀礼は能力が全くの別物である。代役を務めると言っても、その方向性は大きく異なる。1ターン目からガシガシ殴り、1点とはいえ着実にライフを削りながら「ボーマット貯金」を貯めていく。

 クリーチャーを展開し、《目くらまし》《意志の力》で打ち消し、出てきたクリーチャーには《稲妻》《二股の稲妻》で除去……と序盤から目まぐるしく動くグリデルは、すぐに手札が空っぽになってしまう。特にカードを2枚消費することになる《意志の力》は、唱えどころを間違えるとリカバリー不能となる損失を負ってしまうことも。

 ボーマットはこうして手札を高速で吐き出すグリデルにとって、貴重なアドバンテージ源となる。3枚も手に入れば十分、それ以上なら宇宙だ。別にこれが除去されてしまっても、《秘密を掘り下げる者》が生き残るのであれば問題ないというもの。対戦相手は後のドローか目の前の打点かを天秤にかけなければならない。

 手札をすべて捨てるというデメリットに目が行きがちなボーマットの能力だが、状況によってはうまく活用できることも。《渦まく知識》《思案》《定業》とうまく組み合わせることで、例えば……

 手札に不要な土地などのカードが複数枚あり、ライブラリーの上には上記の呪文で《グルマグのアンコウ》を仕込んでいるという状況。《思案》などを唱えて解決する前に、ボーマットの能力を起動してこの手札をすべて捨てる。追放されたカードが手札に入り、その後ドロー呪文を解決、手札にやってきたアンコウをボーマットと捨てたカードを探査コストに充てて唱える……という、ちょっとテクニカルな動きもできてしまう。

 実際、そんなに狙ってやることは無いだろうが、できるという引き出しの多さがレガシーにおいては大事だ。こういった点と死儀礼のいないことを加味してか、以前のリストではアンコウと《真の名の宿敵》が2:2だったがこのリストでは3:1とアンコウが優先されている。

 ボーマットは非常に面白く、グリデルはこれまでになかったエキサイティングな動きを見せるようになった。1マナ1/2という壁であった死儀礼がいなくなったことで悠々と殴りにいけるようになった、というのも採用されている理由だろう。このデッキに限らず、赤い殴るデッキでは今後採用されるようになるかもしれない。

 あるカードが禁止となることは悲劇ではあるが、それによって多数のカードが可能性の芽を伸ばす、というのは喜ぶべき変化だ。マジック25周年記念プロツアーでも、グリデルには要注目だ!

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