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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
構築譚 その6:Caw-Blade
マジックには時折……無敵のデッキが誕生してしまうことがある。一強状態というのはあまり好ましい状態ではないので、もちろん作り手側もそうならないようにカードをデザインしているのだが、プレイヤーたちの構築がその思惑を超えてしまったり、ちょっとした見落としなんかがあると、とてつもなく強いデッキが生まれてしまい、スタンダード環境を支配してしまうということがある。
いくつかの怪物たちが25年の歴史に名を刻んでいるが、その中でもこのデッキは、当時あの環境を経験した世界中のプレイヤーにとって忘れられないものになっているのではないだろうか。その名は「Caw-Blade」。
Cawというのはカラスなどの鳴き声を意味し、Bladeは剣のこと。要するに鳥と剣が入ったデッキなのだが……リストを見てもらった方が早いだろう、こちらをご覧あれ。
5 《島》 4 《平地》 3 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 4 《天界の列柱》 2 《墨蛾の生息地》 4 《地盤の際》 -土地(26)- 4 《戦隊の鷹》 4 《石鍛冶の神秘家》 1 《聖別されたスフィンクス》 -クリーチャー(9)- |
4 《定業》 3 《呪文貫き》 4 《マナ漏出》 2 《乱動への突入》 1 《神への捧げ物》 3 《四肢切断》 1 《饗宴と飢餓の剣》 1 《戦争と平和の剣》 1 《殴打頭蓋》 1 《ジェイス・ベレレン》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(25)- |
1 《太陽のタイタン》 3 《失脚》 2 《糾弾》 2 《神への捧げ物》 2 《瞬間凍結》 1 《天界の粛清》 1 《剥奪》 1 《四肢切断》 1 《審判の日》 1 《殴打頭蓋》 -サイドボード(15)- |
改めて、入っているカードを羅列するだけでもう強い。この時代のカードパワーは尋常じゃなかったな……。このデッキはその名の通り《戦隊の鷹》と装備品を主軸にした、クロック・パーミッションというデッキタイプに分類される。対戦相手のライフを刻むものをクロックと呼び、これを展開しながら対戦相手の呪文を打ち消すか、あるいは通すことを許可してやるパーミッション戦術をとるデッキがこれに分類されるのだが、「Caw-Blade」は歴代のクロック・パーミッションの中でもダントツの完成度・デッキパワーを誇っている。何が強いのか? それじゃあ見ていこうか…。
まず、デッキのメインクリーチャーである《戦隊の鷹》。
このカードは2マナ1/1飛行と、まあ回避能力はあるけどサイズは小さいなというクリーチャーなのだが、戦場に出ると仲間を呼ぶ能力を誘発させる。ライブラリーから同名のカードを好きなだけ手札に加えることができるのだ。これ、つまりは2マナ1/1飛行にMAXで3枚ドローがついてくるってこと。そりゃあ強いよ、クリーチャー出しながら手札が増えるもんな。これに装備品を付けるという戦略は実に理にかなっている。
飛行という回避能力を持つため、ダメージが通りやすく強化してやる甲斐がある。たとえ除去されてしまっても、次の駒は鷹1号がすでに手札に召集済み。除去っても除去っても装備品を担ぐクリーチャーが飛んでくる……まさしく悪夢。
さらに、その鷹が装備する剣というものがこれまた天下無敵。
《饗宴と飢餓の剣》は装備したクリーチャーを+2/+2してプロテクション(黒)と(緑)を与える。これだけでもむちゃくちゃ強いのに、さらにそのクリーチャーが対戦相手に戦闘ダメージを与えることに成功すると、相手の手札を1枚捨てさせ、こちらは土地がすべてアンタップする。この能力、クロック・パーミッションと噛み合い過ぎ!
土地がアンタップするということで、自身のターンは相手を追い詰めるためのクロックやそれらのサポートを展開することにマナを使えて、その後土地をアンタップして相手のターンには《マナ漏出》などの打ち消しを構えることが可能だ。もう許してくれ!
この《饗宴と飢餓の剣》をはじめとする装備品を、《石鍛冶の神秘家》でサーチする。シンプルなこの戦略が、もう泣くほど強い。
石鍛冶はサーチするだけでなく、2マナで装備品を手札から戦場に直接出すこともできる。剣を出すコストを軽くしつつ、インスタント・タイミングで起動できるので隙もなく、打ち消し呪文に邪魔されない。完璧すぎるのだ。
鷹と石鍛冶、2つのサーチクリーチャーでアドバンテージを得まくる……どっちも2マナなんだから、ちょっと信じられないよね。石鍛冶は剣だけでなく、《殴打頭蓋》をサーチしてこれを戦場に出すという仕事も担う。
4/4絆魂・警戒が3ターン目に戦場に出てくるというのだからもう泣くしかない。それまでも十分強かったのに、『新たなるファイレクシア』でこの戦法を手に入れてからはいよいよ手が付けられなくなった。
で、これらのクリーチャーとともにアドバンテージエンジンを担うのが《精神を刻む者、ジェイス》だ。
言うまでもなく、歴代最強クラスのプレインズウォーカー。アドバンテージ源でありフィニッシャーをも担うこのプレインズウォーカーは、ただでさえ強いのに上記のクリーチャーたちとも相性が良すぎる。[0]能力で3枚引いて、手札の鷹や装備品をライブラリーの上に置いて、鷹・石鍛冶でそれらを手札に加える。うん、極悪。当時は何度もこのムーブを決められて、涙を流したものである。
その他紹介しきれないが、細かいカードもとにかく強い。もうどうしようもない、ただただその高いデッキパワーに当時の環境は支配され、多くのデッキが駆逐されていった。
これを重く見たウィザーズはスタンダードにおいて《精神を刻む者、ジェイス》と《石鍛冶の神秘家》を禁止カードに指定する。当時、約6年ぶりの禁止カードの登場は大いに話題となったものである。この結末が「Caw-Blade」の無敵っぷりをより強く印象付けていることは間違いない。とにかく、強かった。
土地と一部の呪文を《渦まく知識》《意志の力》《剣を鍬に》に置き換えるだけでレガシーでも強いデッキになったのだから、そりゃあ他のスタンダードのデッキが勝つのは困難を極めるって話だ。
ただ不思議なもので、当時は苦しかったと記憶している「Caw-Blade」時代も、今振り返ると懐かしくて「あれはあれで楽しかったな」とさえ思える。こんな感情を呼び起こす、25年続いているマジックって、本当にとてつもないゲームだなと改めて噛みしめるのであった。
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