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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ウーズ・リアニ(レガシー)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ウーズ・リアニ(レガシー)
by 岩SHOW
前回は、完成度の高い瞬殺コンボとして世界選手権で華々しくデビューするはずが、悲運によりその機会を失ってしまった「おにぎりシュート」を紹介した。今日はまず、ここのところをさらに詳しく書いていこう。
1999年の世界選手権ではエクステンデッドが種目の1つに設定されていた。このフォーマットは、今でいうレガシーやモダンのようなもの。スタンダード・ローテーションにより現役を退いたカードたちがまだまだ戦い足りぬと、そのカードパワーをフルに発揮するイカれた戦場だった。歴代最強ドローソースの呼び声も高い《ネクロポーテンス》、1マナを3マナに増やすアーティファクト《魔力の櫃》、最軽量万能サーチ《吸血の教示者》などなど......今日ヴィンテージにおいても制限、レガシーでは禁止とされているパワーカードがじゃんじゃんと。
さらにはこの時期のエクステンデッドの特徴として、カードプールには含まれていないセットである『リバイズド』に収録されている多色土地=デュアルランドは使用可能というルールがあったものだから、ジャンクフードのごとくあれもこれもと盛り合わせたデッキが乱立。結局最も強かったのは、上記のドロー・マナ加速・サーチなんかを使える各種コンボデッキだった。
話は世界選手権に戻って、この1999年の大会のエクステンデッド環境を少しでも「まとも」にしたいという考えがあってか、トーナメント前日に各カードにエラッタ(修正)が出されることになった。カードに印刷されている挙動と、その当時のルールでの挙動が異なるカードを整備しようというわけだが、この時におにぎりこと《Phyrexian Devourer》も巻き込まれてしまい、かくして「おにぎりシュート」はその役目を果たせずにデビュー前にてお役御免。このエラッタは世界選手権限定のものだったのだが、後日改めておにぎりのエラッタは正式実装となり、この大きくなるおにぎりで遊ぶことはできなくなってしまった。
しかし、年月が解決してくれる問題もある。カードは印刷されている状態に限りなく近くあるべしとのポリシーに基づいて、さまざまなカードのエラッタが解除されるという流れに、おにぎりも乗った! 2011年9月、遂に《Phyrexian Devourer》の能力は印刷された状態へと戻り、パワーが7以上になった場合に生け贄に捧げるという誘発型能力がスタックにある状態で、好きなだけ起動型能力を使用できるようになった。パワー20を超えたおにぎりを《投げ飛ばし》することが可能となった。12年の時を経て、このコンボは成立するようになった!
......とまあ、感動的な話ではあるが......おにぎりには既に、新しい運命的なパートナーが誕生していた。《壊死のウーズ》である。
墓地にあるクリーチャーカードすべての起動型能力を持つというこのウーズ。これでおにぎりの能力をいただいて、ライブラリーを+1/+1カウンターに変換→そのカウンターを《トリスケリオン》の能力で対戦相手に投げつける→また乗せる、投げる、これを繰り返して勝利する、というコンボが考案される。これであればエラッタ解除前の能力でも、パワーが7にならなければこのコンボでプシュプシュとウーズが弾を撃ち込んで勝利することができたのである。
当時のレガシーであれば、墓地にキーカード2枚が落ちつつ戦場にウーズがいるという一見高難易度に見えるこのコンボを成立させてくれる1枚のエンチャントがあった。《適者生存》だ。
おにぎりトリスケ捨てつつウーズサーチ、勝ち。このコンボは......まあなんというか、簡単であった。このコンボと、そして《復讐蔦》という《適者生存》と相性の良すぎるカードが共存した「ウーズ・サバイバル」は、それはそれは強いデッキだった。レガシー環境がサバイバルに染まりつつある事態、そして今後のクリーチャーデザインの幅を狭めてしまいかねないことを懸念して、《適者生存》は2011年1月、レガシーにて禁止カードに指定される。おにぎりが力を取り戻した時には、そこには彼をスターダムにのし上げた友の姿はもうなかったというわけだ。
これで終わってはおにぎりのカード人生はなんとも寂しいものになってしまうが、大丈夫。まだ救いはある。《適者生存》というチームのまとめ役はいなくなったが、コンボを形成するウーズ&トリスケとのトリオは健在だ。レガシーには、これらをまとめて墓地に叩き込める《生き埋め》というカードがある。
ウーズごと埋めてしまって、《再活性》《死体発掘》なりで釣り上げる、「ウーズ・リアニ」の誕生だ!
3 《沼》 2 《島》 3 《Underground Sea》 4 《汚染された三角州》 2 《血染めのぬかるみ》 -土地(14)- 1 《朽ちゆくインプ》 1 《壊死のウーズ》 1 《トリスケリオン》 1 《Phyrexian Devourer》 -クリーチャー(4)- |
4 《水蓮の花びら》 2 《金属モックス》 4 《渦まく知識》 4 《暗黒の儀式》 4 《思案》 2 《親身の教示者》 4 《再活性》 4 《思考囲い》 2 《強迫》 3 《目くらまし》 3 《リム=ドゥールの櫃》 2 《死体発掘》 4 《生き埋め》 -呪文(42)- |
1 《魅力的な執政官》 3 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 3 《呪文貫き》 1 《蒸気の連鎖》 1 《目くらまし》 1 《残響する真実》 1 《ハーキルの召還術》 4 《実物提示教育》 -サイドボード(15)- |
リアニメイト系のデッキの中でも、特にコンボに特化した形となる「ウーズ・リアニ」。上述のおにぎりウーズコンボで以外では勝つ意志はないので、殴るクリーチャーはメインには採用されていない。すなわちクリーチャーが1体だけ墓地に落ちても意味がないので、《納墓》は不採用。《生き埋め》一本で狙っていくことになるが、どうしてもクリーチャーが手札に来てしまうことはある。そういう時のための《渦まく知識》であり、そして《朽ちゆくインプ》だ。
インプは起動型能力のコストで手札を1枚捨てることができるため、もし手札に《トリスケリオン》および《Phyrexian Devourer》がいる状態になっても、《生き埋め》で《壊死のウーズ》とセットで埋めてウーズを釣る→能力で手札をポイポイ捨ててコンボ始動、という動きが可能となる。青黒の2色でまとめて、手札破壊&打ち消しの妨害・ドロー・マナ加速と、コンボデッキが求めるものが一通り採用されている。都合のいい手札がくれば、1ターンキルだって可能だ。
このデッキは2011年のレガシー環境において非常に完成度の高い逸品であり、ビッグイベント「Eternal Party 2011」で見事優勝。決勝での瞬殺はまさしく圧巻であった。
《Phyrexian Devourer》はさまざまな出来事を乗り越えた、マジックのカード全体で見ても稀有な存在である。このカードにまつわる伝説を語り継ぐことができてうれしいものだ。これから先、また「おにぎり○○」とかいうデッキが誕生するかもしれない。その時には「おにぎり?」と不思議そうに思っている新規プレイヤーに、あなたがこの物語を伝えてあげてほしい。こういう思い出に浸れるっていうのも、レガシーというフォーマットの魅力だ。
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