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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゴーレムMUD(ヴィンテージ)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゴーレムMUD(ヴィンテージ)
by 岩SHOW
ヴィンテージというフォーマットは、マジックの四半世紀近い歴史のすべてがぶつかり合う、恐ろしい戦場である。と同時に、極上のテーマパークのごとき楽しさもある。古いカードを多用するため、新規プレイヤーの参入障壁が高くなっていることだけが難点ではあるが......Magic Onlineでは『Vintage Masters』なるパックを発売して、定番カードである《Black Lotus》などのカードが手に入るようになっている。
これらで手に入れたカードで、少なくないプレイヤーがオンラインでヴィンテージを楽しんでいる。世界トップクラスのプロプレイヤーたちがヴィンテージで戦う企画なども定期的に開催されており、観ているだけでも面白い。
ヴィンテージは現在リーグ戦は実装されていないが、デイリーイベントが開催されており、日々世界中のマニアたちがしのぎを削っている。ヴィンテージで意外なカードが活躍するものだ。そういう「シブい世界」というものをリストから味わっていただければ......そんな思いで紹介する今日のデッキはこちら。
4 《古えの墳墓》 3 《裏切り者の都》 4 《エルドラージの寺院》 4 《Mishra's Workshop》 1 《露天鉱床》 4 《不毛の大地》 1 《トレイリアのアカデミー》 -土地(21)- 4 《ファイレクシアの破棄者》 4 《難題の予見者》 3 《ファイレクシアの変形者》 1 《磁石のゴーレム》 4 《先駆のゴーレム》 4 《現実を砕くもの》 -クリーチャー(20)- |
1 《Black Lotus》 1 《Mox Pearl》 1 《Mox Sapphire》 1 《Mox Jet》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Emerald》 1 《魔力の墓所》 1 《太陽の指輪》 4 《抵抗の宝球》 4 《アメジストのとげ》 1 《無のロッド》 1 《三なる宝球》 1 《虚空の杯》 -呪文(19)- |
3 《ワームとぐろエンジン》 2 《トーモッドの墓所》 4 《墓掘りの檻》 2 《無のロッド》 2 《四肢切断》 2 《精神壊しの罠》 -サイドボード(15)- |
ヴィンテージにしては、まとまったデッキリストである。ヴィンテージと言えばもっともっと制限カードが採用され、ごちゃごちゃとしたパズルのようなデッキリストを想像する方も多いかとは思うが、このようになるべく同一のカードを4枚ずつ採用した安定感を重視したリストも存在するのだ。このデッキは一般に「MUD」と呼ばれるものである。
「MUD」とは何か? そのルーツから書くと長くなってしまうので割愛するが、要するに「アーティファクト単」である。デッキを構築するカードは土地とアーティファクト、そこに唱える際に色マナを要求しない呪文をちょいと足す、くらいの、ほとんどアーティファクトで勝負するデッキのことだ。
このデッキが存在する理由は2つ。まあ実質1つだが、2つのマナ加速方法を持っているという点がポイント。1つは「パワー9」と称されるカード群に属する、0マナアーティファクトたち。《Black Lotus》と各種Moxだ。これに《魔力の墓所》《太陽の指輪》も加えると、ほとんど元手なしでマナを伸ばすアーティファクトが8枚。大体どれかは1ターン目に置けることになる。
これと土地を併せる。《Mishra's Workshop》は、生み出すマナがアーティファクトを唱えるためにしか使用できないという条件付きながら、土地1枚で3マナを生み出すというぶっ壊れランドだ。
その他にもレガシーでもおなじみの《古えの墳墓》《裏切り者の都》も取り揃えて、1ターン目に4マナ!......どんなに少なくとも2マナは生産して、このロケットスタートから対戦相手の動きを封じるアーティファクトを設置したり、サイズが優秀なクリーチャーを展開したりで開幕から圧殺を狙う、ブルドーザーのようなデッキ。それが「MUD」だ。
制限カードである《虚空の杯》《三なる宝球》だけでは足りないので《抵抗の宝球》《アメジストのとげ》で対戦相手をギッチリと縛り上げる。
自分だけマナ加速した状況下でこれらを設置する、先手の際に特に強力なデッキだ。1ターン目がクライマックスで、怒涛のアクションに対して《意志の力》を撃たれるか否かで勝負がつくなんてゲームも多数。
行動を縛ってから展開するクリーチャーはなんでも良いっちゃ良いが、強力であるに越したことはない。こちらも強すぎて制限カードとなった《磁石のゴーレム》を筆頭に、《エルドラージの寺院》を採用して鉄板コンビ《難題の予見者》《現実を砕くもの》を採用。
「MUD」と言えばエルドラージ入りがすっかり定番になったのだが、最近はあるクリーチャーがスポットライトを浴びている。《先駆のゴーレム》だ。
5マナ3/3を3体戦線に投下できる、文句なく強いアーティファクト・クリーチャーだ。これまでもヴィンテージでその姿を見かけることはあったが、ちらほらと1~2枚というものが多かったように思う。このデッキでは4枚採用で、また他の「MUD」でも同様にこのゴーレムがクリーチャー打線の中軸を担っている。
先述のように、かつては《磁石のゴーレム》が4枚使用可能だった。相手の行動に制限をかけつつパワー5という強力なカードで......これと《先駆のゴーレム》の相性は良いとは言えなかった。《先駆のゴーレム》がいると、ゴーレムが除去の対象となればそのインスタントorソーサリーがコピーされて、すべてのゴーレムが吹き飛んでしまう。噛み合わせの悪さは言わずもがなだ。万が一の場合、相手を縛る《磁石のゴーレム》も他のゴーレムも吹き飛んで、戦線が完全に崩壊してしまう...ということを防ぐ意味合いでこのゴーレムを主力にするデッキは少なかったのだろう。
その《磁石のゴーレム》がデッキに1枚しかないのであれば、そのリスクよりもリターンを考えることができる。後は、先述のようにエルドラージが幅を利かせるようになったという事実にも目を向けたい。《現実を砕くもの》に対して、同じマナで3/3を3体展開できるのは頼もしい。除去の乏しい同型では、メインアタッカーを封じる鉄壁兼5マナで9点という高い打点が大いに武器になる。これを1枚でも多く展開できたほうが強いのだから、4枚採用も納得だ。
サイドのみならずメインにまで採用された《無のロッド》からも、同型をいかにして倒すかという気概が感じられる。
強さゆえに、己との戦いを強いられる「MUD」。新たなシークレット・テクニックが生まれてはすぐに常識となる、環境の変化速度も1つの見ものだ。さあ、《先駆のゴーレム》が拓いた道を追いかける新たなカードを考えてみよう!
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