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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:黒単プリズン(レガシー)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:黒単プリズン(レガシー)

by 岩SHOW

 6月に入って、今書いているこの原稿が掲載されるのはボチボチ梅雨入りのタイミングなのだろうか? 梅雨は......まあ皆、苦手な時期だと思う。日本特有の強い湿気に満ちた空気がねっとりと身体を覆うような......とにかく、蒸し暑くてかなわんと。移動するだけでもう疲労しちゃうような、そんな厳しい風物詩。

 マジックにもこんな梅雨の空気のような、じめじめねばねばしたアプローチで勝利を目指すデッキがある。相手する側は正直「鬱陶しい...!」と思ってしまうかもしれない(笑)。対戦相手の心を折るタイプのデッキは昔から「やる気デストラクション」と呼ばれたりしているが、今日のそれもそういったデッキで、相手をいたぶり続ける割になかなか勝たない、ある意味イジワルなものだ。

 対人ゲームにおいて心を折るというのは効果的なアプローチであることも事実で、そういうやる気デストラクション・デッキをトーナメントに持ち込む人も真剣に勝つためにその答えにたどり着いたのである。......と思うんだが、どうにも勝つ気はそんなになくて対戦相手と一緒にズブズブと底なし沼に飲み込まれていくのが好きで使っている、そんなユーザーが圧倒的に多い気がする(笑)。

 自分はトーナメントであまりいい成績を残せなくても良いから、トップメタのデッキを使っているプレイヤーを地獄に突き落としたい! そんな思いでトーナメントに臨むプレイヤーにオススメなのが「黒単プリズン」! キーカード《小悪疫》からとって「スモールポックス」と呼ばれたりすることもあるね。

qbturtle15 - 「黒単プリズン」
Magic Online Competitive Legacy Constructed League 5勝0敗 / レガシー (2017年5月29日)[MO] [ARENA]
8 《
4 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
4 《ミシュラの工廠
4 《不毛の大地
2 《古えの墳墓
2 《ガイアー岬の療養所

-土地(24)-

2 《冥界のスピリット

-クリーチャー(2)-
4 《モックス・ダイアモンド
3 《金属モックス
4 《Chains of Mephistopheles
4 《小悪疫
2 《チェイナーの布告
3 《世界のるつぼ
3 《The Abyss
2 《煙突
1 《女王への懇願
4 《虚空の杯
4 《ヴェールのリリアナ

-呪文(34)-
3 《惑乱の死霊
4 《トーラックへの賛歌
2 《集団的蛮行
2 《仕組まれた疫病
4 《虚空の力線

-サイドボード(15)-

 リストから伝わるこの粘り気! むせ返るような空気を可視化したようなデッキだ。以前も紹介させてもらったが、「プリズン」とは「牢獄」という名の通り、対戦相手を完全に封じ込めて何もできなくさせてしまう、超低速コントロールデッキの総称だ。

 《冬の宝珠》《氷の干渉器》《ハルマゲドン》などを軸に土地を攻めて何もできない状態に追い込む、白を中心としたものがその最初期では主流だった。今日紹介するものはレガシーの黒単、マジック24年の歴史で創造された暗黒面のカードで嫌がらせの限りを尽くす!

 《小悪疫》はすべてのプレイヤーにライフ1点・手札1枚・クリーチャー1体・土地1枚の損失を強制する。こちらはクリーチャーがいない状態で、対戦相手のみがそれをコントロールしている状態で使用したい。例えば1ターン目、相手が先手で《死儀礼のシャーマン》《秘密を掘り下げる者》をプレイしてきた返しでこれを唱えれば、対戦相手の出鼻を挫くどころかへし折ることもできる。そのために《モックス・ダイアモンド》《金属モックス》を合計7枚投入。自身が土地を生け贄に捧げても続くターンでマナを捻出可能だ。

 《小悪疫》で捨てる手札を《冥界のスピリット》にできれば、オートマチックなクリーチャー展開となりもはやコンボ。スピリットが無理でも、土地を捨てておけば《世界のるつぼ》で後々回収できるので問題ない。これは《モックス・ダイアモンド》で捨てる土地にも言えることだね。

 2種類の0マナ・アーティファクトで加速するのだから、1ターン目に2マナ出せるデッキの嗜みとして《虚空の杯》はもちろん常備。先手の場合はこれから入りたいね。レガシーの大半のデッキは1マナのカードがたっぷり入っているので、それらをバシッとシャットアウト。

 使いきりの手札破壊は不採用、除去も《チェイナーの布告》のみに抑えられており、《小悪疫》と《ヴェールのリリアナ》がそれらを兼ねる。このような構成になっているのは、対戦相手を行動不能に追い込んでいる状態でそれらのカードを引いてもほとんど意味がないからだ。

 除去役を担うカードには《煙突》も含まれる。これは実質的なフィニッシャーでもあり、対戦相手に毎ターン、パーマネントの生け贄を要求する。これも例によって自分にも被害が及ぶが、土地を生け贄にしつつ《世界のるつぼ》で回収すれば何の無理もなく維持することができる。この辺りで逆転の目がなくなるので、多くのプレイヤーが投了を宣言することだろう。

 フィニッシャーにあたるカードを確認するまで待っても良いが、そこは残り時間と相談してうまく調節してほしい。《冥界のスピリット》《ミシュラの工廠》であることがほとんどなので、わざわざ見る必要もないかなとも思うが...(笑)。工廠は割られようが何度でもるつぼから帰ってくる。《剣を鍬に》されそうになったら、自分の《不毛の大地》で割るという小技があることを忘れずに。

 さて、使いきりの《思考囲い》や《致命的な一押し》が採用されていない理由は、このデッキの顔とも言える2種類のエンチャントをガッツリと採用していることもその理由だ。『レジェンド』が誇る《Chains of Mephistopheles》と《The Abyss》!

 まずは簡単な《The Abyss》から......各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーはアーティファクトでないクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する(再生不可)。クリーチャーを主体とするデッキは、こんなのが早いターンで貼られてしまうと悶絶である。こっちは基本的にクリーチャーがいないので、何も気にすることはない。破壊不能だったり対象に取れない類のクリーチャーだけがネックとなるが、まあそれ以外の除去がすべて生け贄要求型のものなので困ることはないはずだ。

 《Chains of Mephistopheles》はちょっと挙動がややこしい。その名前のカッコ良さから存在を知っている方は多いかもしれないが、挙動に関しては認知されきっていないと思うのでここで改めてわかりやすく紹介。

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 ドロー呪文や能力では、どう足掻いても手札が増えなくなる。手札が空の時のドロー呪文は、ただの紙切れになってしまう。《渦まく知識》《思案》《定業》といった定番カードに加えて《先触れ》《予報》などが飛び交う今のレガシー環境。《Chains of Mephistopheles》はまさしく時代に真っ向から挑む反逆者だ。《虚空の杯》《煙突》などとともにこれらのエンチャントも戦場に並べて、ねっとりと対戦相手のやる気を削いでいく......甘美なひと時である。

 サイド後にはコンボデッキに対抗するための使い切りの手札破壊が積まれていたり、ゲームを早く終わらせるための《惑乱の死霊》も控えているのも特徴的だ。こう見えて《暗黒の儀式》が採用されていないデッキなので、かつて日常茶飯事過ぎて「A定食」とまで呼ばれた1ターン目死霊展開という動きはやや難しいかもしれないが、それでも1ターン目《虚空の杯》、2ターン目《惑乱の死霊》と動ければ十分な強さ......というか、懐かしくて楽しい。

 このコラムを読んでワクワクしちゃった君は、もう暗黒面に片足を突っ込んでいる。さあ、あともう一歩を踏み出し、黒単の力を世に示すのだ!

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