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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:マーフォーク(モダン)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:マーフォーク(モダン)
by 岩SHOW
大多数の人間にとっては、マジックは楽しい趣味だ。そう、趣味なのである。ならば楽しんでナンボだ。使いたいカード、使いたいデッキをとことん使いこむ。自分にとっての「道」が見つかったプレイヤーは幸せ者である。いつまでも、どんな環境でも自分が好きなことを貫く......なかなかできることじゃない。
昔、毎週のように参加していたフライデー・ナイト・マジックに、毎回毎回、決まって緑単色のデッキを持ち込んでいるプレイヤーがいた。当時は2色土地もパワフルなものが多く、多色当たり前環境だった。そんな中で、ただ一人延々と緑単を使い続ける......その姿は求道者に見えた。もちろん周りのトップメタ多色デッキに負けることが多かったわけだが、毎回チューンを変えているようで、それがハマッた日に全勝した時には、他人事ながら何名かの常連が勝ち鬨の声をあげて喜んだものである(当の本人はおっとりした感じで平常運転だったが(笑))。
先日、ある道の達人がスポットライトを浴びた。ジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonが優勝したグランプリ・バンクーバー2017にて決勝でジョシュと激突したのはカナダのジョナサン・ザクゼック/Jonathon Zaczek。
彼は......なんというか、カリスマだ。ただただひたすらにマーフォークを愛し、マーフォークデッキを使い続けている。その愛はホンモノで、あらゆるフォーマットでマーフォークの可能性を突き詰めている(現行スタンダードでは部族シナジーがないので、モダンとレガシー中心となる)。信じられないほどの数のマーフォークに関する動画をアップし、そのスタイルはもはやマーフォーク学の権威。
モダンでは派手な活躍こそしないものの着実に環境に生き残り続けてきたデッキタイプだが、この度マーフォーク・マスターの手によってグランプリ準優勝という華々しいステージに躍り出てきた。彼のTOP8プロフィールはマーフォーク愛が伝わりすぎてくるものになっているので必見だ。それでは、海の民が集ったデッキリストを見てみよう!
12 《島》 1 《水辺の学舎、水面院》 1 《雲の宮殿、朧宮》 2 《魂の洞窟》 4 《変わり谷》 -土地(20)- 4 《呪い捕らえ》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 4 《銀エラの達人》 3 《潮流の先駆け》 1 《潮縛りの魔道士》 3 《メロウの騎兵》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 4 《波使い》 -クリーチャー(29)- |
4 《霊気の薬瓶》 4 《広がりゆく海》 3 《四肢切断》 -呪文(11)- |
2 《潮縛りの魔道士》 2 《大祖始の遺産》 3 《払拭》 4 《統一された意思》 4 《地盤の際》 -サイドボード(15)- |
《アトランティスの王》より続く由緒正しい海産部族。このタイプのクリーチャー達は単体のサイズこそ小さいが、複数並ぶことでそのパワーを増し、対戦相手を圧倒する。盤面を魚群で埋め尽くすのがこのデッキの目指すところだ。
以前に紹介したレガシーのデッキ同様、モダンの「マーフォーク」も《霊気の薬瓶》を心臓としている。
エルフのようにマナを生み出せるクリーチャーではないので、純粋にマナを用いて展開していくとなると結構なターンを食う。先に述べたようにサイズは細いので、他のマーフォークを強化する、いわゆる「ロード(※1)」の到着が遅れると対戦相手のクリーチャーにガンガン殴られることを許してしまう。《銀エラの達人》がぽつんと立っているのと、その横にカウンターが2個乗った《霊気の薬瓶》があるのとでは天と地の差だ。
これは攻撃時にもトリックとして使える。ただのパワー2の攻撃、3/3でブロックすれば難なく討ち取れるが、もし《アトランティスの王》が飛び出して来たら相討ちに......と、ブロックを躊躇させることもできる。時にはこれをブラフとして巧く使っていく必要もあるだろう。
(※1:マーフォークやゴブリン、ゾンビなどに+1/+1修正を与え、さらにオマケの能力を付加する、という能力を持ったクリーチャーは、かつてロードというタイプだった。どう見てもマーフォークなのに、自分自身の能力で強化されては強すぎるから......という理由で設けられたロードであったが、ロードが2体並んだ時になぜお互いが恩恵を受けられないのか?という問題があったため、これらは後にロードに加えて自身が強化するものと同じクリーチャータイプを得ることに。能力は「他の」同タイプのクリーチャーを強化するというものに変更され、これでロードを部族デッキに複数採用することによるデメリットはなくなった。2007年にロードというタイプは廃止されているが、特定部族のサイズをアップさせるクリーチャーをロードと呼ぶ習慣は残っている)
《霊気の薬瓶》は単にロード連打を後押しし、土地を引けなくても事故らないようにしてくれるカードだが、さらにトリッキーに用いることも可能だ。《潮流の先駆け》をこの薬瓶から出すと、攻撃してタップ状態のクリーチャーを手札に戻してダメージを防げる。コンボデッキが高速で戦場に繰り出した《グリセルブランド》なんかを弾き返すと気持ちいい。
《メロウの騎兵》の誘発型能力でこれをアンタップして2体展開、なんて動きも狙える。カウンターが2個乗った薬瓶をコントロールしていて自身のターンを迎えたとしよう。アップキープに3個目のカウンターを乗せるか否かの能力が誘発し、解決前に薬瓶を起動→2マナのマーフォークを出す。その後3個目のカウンターを薬瓶に乗せ、メインにてマーフォーク呪文を唱え、騎兵の能力が誘発→薬瓶アンタップ。攻撃してブロック確定後に2体目の騎兵を出して相手のクリーチャーを蹴散らしても良いし、相手のドロー後に《ヴェンディリオン三人衆》を飛び込ませても良いね。
基本的には脳味噌筋肉的に最大効率でライフを削れる盤面を作っていけば良いが、時折こういったテクニカルな動きが最適解となることもある。簡単だけども奥が深い、名デッキである。
《広がりゆく海》はマーフォーク達の島渡りを活かすため、それと同時に対戦相手のマナ基盤を破壊するための手段として投入されている。そしてこのカードにはもう1つ役目が......陸地を海に変えることで、戦場にも波が届く。波の音が聴こえるか?《波使い》のご到着だ!
青の信心(※2)の数だけエレメンタルを呼び出すこのマーフォークは、盤面を支配してしまう驚異的な力を持っている。このデッキにはダブルシンボルのマーフォークが多数投入されているため、《波使い》は対戦相手のライフを容易く削り取るだけのエレメンタルを顕現させることができる。これによるダメ押しも強いが、全体除去などでリセットされた時に盤面をこれ1枚でリカバリーできるのも心強い。その際に、クリーチャーではない信心稼ぎカードとして《広がりゆく海》は大変良い働きを見せるというわけだ。
(※2:信心は『テーロス』ブロックにて登場したルール用語。プレイヤーは自身がコントロールするパーマネントが持つ色のマナ・シンボルの数だけ、その色への信心を持つ。この数を参照して、その効力を変化させるカードがこのブロックでは多数存在した。《波使い》はその中でも最強と呼ぶにふさわしい1枚)
「マーフォ―ク」といえばクロックパーミッション、クリーチャー展開と打ち消しの両方をやってくるデッキのイメージがあるが、このデッキにはメインには《呪い捕らえ》くらいしか打ち消し要素は備わっていない。モダンにおいては中途半端な妨害よりも、自身のブン周りを優先した方が良い結果にるながる、という一例だ。
もちろん、妨害が全くないわけではなく、サイド後はコンボ相手に7枚のカウンターを投入し、厳しく対処。この辺りはチューニングの腕前の見せどころ。ジョナサン自身も、マーフォークはメタゲームに合わせてその構造をフレキシブルに変えられるのが強みであると語っている。
メインに打ち消しが採用されることが全くないというわけではなく、そこは自身の参加するトーナメントのメタゲーム次第! どんな環境にも適応して生き延びてきた海の民、足が生えている連中には負けないという気概で使い続けるのが勝利の秘訣か。皆も愛する部族と添い遂げてみても良いんじゃないかな?
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