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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Wolf Spirit(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Wolf Spirit(スタンダード)

by 岩SHOW

 理解を越えたものと出遭った時、人は恐怖する。マジックをやっていても、時折未知との遭遇を経験することがある。対戦相手のデッキが、一体何なのかわからない。ネットが発達した昨今、強いデッキというものは結果を残したその瞬間から全世界の前プレイヤーに共有され、使用・研究・改良されていく。この時代、「知らないデッキ」を体験できるのは新セット発売から1週間ほど。新しいセットが生み出した新デッキは瞬く間に認知され、既知のものへと変わっていく。これにより、マジックのレベルは国による差が出にくくはなった。これは良いことだ。

 ただ、トーナメントに参加して未知のデッキと遭遇し、初見殺しに怯えるという経験は少なくなってしまった。あれは......マジックを始めた頃か。毎日毎日構成を変える自分と友人らのデッキ、初めて触れるカードに意図が読めない戦略......あれは楽しいものだった。もうそんな経験はできないのか?

 そんなことはない。君が自らの手で、新しいデッキを作ればいい。そりゃ、最近のプロが作り上げるデッキは完成度が高く強力で付け入る隙がない。だからと言って勝てないわけじゃない。このカードを使いたい、こういうデッキで優勝したい。その情熱を結実させる努力を怠らない。挑戦あるのみ。さすれば道は開かれん。

Tulio_Jaudy - 「Wolf Spirit」
Magic Online Competitive Standard Constructed League 5勝0敗 / スタンダード (2017年1月25日)[MO] [ARENA]
9 《
6 《
4 《植物の聖域
3 《森林地の小川
4 《伐採地の滝

-土地(26)-

4 《薄暮見の徴募兵
4 《ラムホルトの平和主義者
4 《鎖鳴らし
4 《ネベルガストの伝令
4 《狩りの精霊
4 《群れの守護獣
4 《新緑の機械巨人

-クリーチャー(28)-
2 《革命的拒絶
1 《街の鍵
2 《呪文萎れ
1 《腹黒い意志

-呪文(6)-
3 《祝祭の開幕
3 《月夜の狩り
2 《継続する調査
2 《根から絶つ
1 《呪文萎れ
2 《即時却下
2 《生命の力、ニッサ

-サイドボード(15)-

 はっきり言って凄いデッキリストである。マジか、と口にしてしまった。このデッキをどう形容すれば良いのだろう。狼、狼男、スピリットという3つの種族が混ざり合った謎の青緑デッキ。『イニストラードを覆う影』『異界月』のそれらのカードをふんだんに用いた、時代に逆行するかのような構築。凄まじい。

回転

回転

クリックで変身

 軽いところを務めるのは狼男。《薄暮見の徴募兵》《ラムホルトの平和主義者》で戦場を牽制。対戦相手が呪文を唱えられなかったら変身してサイズアップ、という選択肢を突きつける類のカードで、やはりこういうものは出されると鬱陶しくてかなわない。最近すっかり見なくなった《薄暮見の徴募兵》だが、戦場に出てきて手札補充能力を起動されると相変わらず嫌なもので。《ラムホルトの平和主義者》も2マナで3/3のサイズは依然として破格だ。中途半端なクリーチャーの攻撃は許してくれない。

 これらの狼男をサポートするのが、狼でありスピリットでもある《狩りの精霊》。狼および狼男のタフネスを3上昇させる能力の持ち主で、この修整はターン終了時までのものであるとはいってもなかなかの値。戦闘の合間にシュッと飛び出てこちらのクリーチャーだけ一方的に生き延びるという動きができれば対戦相手の顔色も変わることだろう。これを構えて動くと、自然に狼男たちが変身するというのも噛み合っている。

 さらにこちらも狼・スピリットである《群れの守護獣》。4マナ4/3瞬速にオマケで2/2の狼がついてくる...って、『テンペスト』の頃だったら環境を支配するレベルの性能だぞと。これまではなかなか使われることは無かったが(何せ緑の4マナには《集合した中隊》がしばらくいたからね)、全く意識していないところに差し込まれると「ツエ~」と雄叫びをあげてしまいそうだ。

 《狩りの精霊》《群れの守護獣》と狼であることが利点になるクリーチャーはいるが、ではスピリットであることの意味とは? 《鎖鳴らし》と《ネベルガストの伝令》だ。これらも瞬速で飛び出て、それぞれに仕事をする。

 《鎖鳴らし》はスピリットに呪禁を与え、《狩りの精霊》と併せてクリーチャーの除去耐性を向上させる。《ネベルガストの伝令》はスピリットすべてにタップ能力を付与する。これはクリーチャーを瞬速で投げつけるこの狼・スピリットデッキにはもってこいのカードだ。ターン終了時に《群れの守護獣》から6点分の打点を戦場に出しつつ相手のブロッカーを寝かせて次のターン総攻撃......なんかうっとりするね。

 このデッキで勝つのは無茶苦茶難しい。正直、しんどい。リーグ5-0程度がなんだと思われるかもしれないが、やり込みの結果の成績であることは間違いない。そう、ガチのデッキで勝ち星を重ねる以外にも、マジックにはカジュアルな楽しみ方がある。誰も使っていないカード・デッキで勝利すると、なんとまあ目立つことよ。目立ちたがり屋の君!スポットライトを浴びたいという願望を糧に、精進あるのみじゃ!

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