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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:スゥルタイ・ネメシス(レガシー)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:スゥルタイ・ネメシス(レガシー)
by 岩SHOW
豪華メンバーがTOP8に集ったグランプリ・ルイビル2017。そこで優勝したのは単色デッキの申し子「Death & Taxes」でもなく、《墓忍び》が帰還した「スゥルタイ・デルバー」でもなく。リード・デューク/Reid Dukeが用いた、今までありそうでなかった新デッキ「スゥルタイ・ネメシス」だ! 何はともあれリストも見てみよう。
1 《島》 1 《森》 2 《Tropical Island》 3 《Underground Sea》 1 《Bayou》 4 《霧深い雨林》 4 《汚染された三角州》 2 《新緑の地下墓地》 3 《不毛の大地》 -土地(21)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《貴族の教主》 1 《タルモゴイフ》 4 《真の名の宿敵》 2 《トレストの使者、レオヴォルド》 -クリーチャー(15)- |
4 《渦まく知識》 2 《思案》 2 《思考囲い》 3 《突然の衰微》 3 《目くらまし》 1 《森の知恵》 4 《意志の力》 1 《残忍な切断》 1 《梅澤の十手》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(24)- |
2 《夜の戦慄》 2 《狼狽の嵐》 2 《真髄の針》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《外科的摘出》 1 《思考囲い》 1 《苦い真理》 2 《精神壊しの罠》 2 《水没》 1 《梅澤の十手》 -サイドボード(15)- |
スゥルタイ(黒緑青)3色のデッキであり......現レガシーにおけるこの色の組み合わせでまず思い浮かぶのは先述の「スゥルタイ・デルバー」。しかしこのデッキにはデルバーこと《秘密を掘り下げる者》の姿はない。そこにいるのは宿敵(ネメシス)......《真の名の宿敵》だ。
この3マナのマーフォークは、それ以外のものが持たない唯一無二のプロテクションを持つ。「プロテクション(選ばれたプレイヤー)」だ。この魚人が戦場に出る際に指定されたプレイヤーがコントロールするクリーチャーではこれをブロックできず、そのプレイヤーが唱える呪文の対象にもならず、そのプレイヤーがコントロールする発生源からダメージを受けない。非常に強力な除去耐性と絶対的な回避能力を併せ持つ、驚異のクリーチャーだ。
『統率者(2013年版)』にて陸上にその姿を見せた方と思うと、瞬く間にレガシー環境を侵食。現在はブームの頃よりは数を減らしたが、3マナ圏に手堅いパンチ力、壁となれるカードを求める青絡みの中速デッキにて採用されている姿をよく目にすることだろう。
この《真の名の宿敵》を大胆にも4枚採用しているのがこのデッキの特徴だ。3マナとやや重い無敵のクリーチャーか、対戦相手のアクションに厳しい制限を与える《トレストの使者、レオヴォルド》をしっかりと2ターン目に戦場に出すために、1マナのマナクリーチャーを8枚採用しているのが目を惹く。
何度も何度も絶賛して申し訳ないが、レガシー最強クラスの1マナ万能クリーチャー《死儀礼のシャーマン》というスゥルタイデッキにおける4枚固定枠に追加で、《貴族の教主》を4枚だ。教主はこのデッキが欲しい黒ではなく白マナを生み出してしまうが、青と緑も出るので2色合っていれば問題なし。
《貴族の教主》はマナ能力だけでなく、賛美能力で単騎攻撃するクリーチャーを強化してくれる。そのため、後半に引いてしまっても安心だ。《真の名の宿敵》のパワーは3、これを4に上昇させるだけでライフ20点を削り切るのに必要な攻撃回数が7回から5回に減少する。この差がマジックにおいていかに大きいかはお分かりいただけるかと思う(実際のゲームでは《溢れかえる岸辺》などのフェッチランドや《思考囲い》なんかで相手のライフは変動するものだが)。攻撃性を持ったマナクリーチャーというのはこのデッキに置いてありがたい限り。
これらのマナクリーチャー経由で2ターン目に《真の名の宿敵》(orレオヴォルド)を戦場に出したら、後はまっすぐに攻撃させつつ、除去・打ち消し・手札破壊・ドローを繰り返し、対戦相手に好きなことをさせる前にゲームを終わらせる。それがこのデッキがたどるストーリーだ。
対戦相手のやりたいことをさせないこのデッキをデュークが使うきっかけとなったのは、かのクリス・ピキュラ/Chris Pikulaとのこと。ピキュラと言えば、彼のインビテーショナル・カード《翻弄する魔道士》が思い浮かぶ。やりたいことをさせない魔道士は、デュークに《渦まく知識》を使うデッキを使うように勧めたようだ。
「Death & Taxes」や「赤黒リアニメイト」などのように、《渦まく知識》を用いずとも一線級なデッキは複数あるが、やはり1マナで3枚のカードを引き込めるこの呪文は、依然としてレガシー環境では使い得であるということだね。
しかしまあ愚直なまでに無敵のパワー3で殴るこのデッキのデザイン、良いね。「ブロックされない死ににくいクリーチャーに《梅澤の十手》持たせて殴ったら勝てるんじゃね?」という皆が思いつき、そして一度試してみるもうまくいかずに諦めたであろうテーマを綺麗に形にして、結果を残す。もちろん、プレイヤー性能が世界トップクラスというのもあるが......時には素直に「僕の考えた最強デッキ」に挑戦してみることが大事なんだなということを再認識させてくれた。カッコつけずに、やりたいことをやる! わがままを押し通す力ってのは、そういう純粋な思考から生まれてくるのだろう。
サイドボードの綺麗さや、《タルモゴイフ》1枚だけを採用しているところにも注目だ。これもやり込みの成果なんだろうなぁ。《タルモゴイフ》なんて4枚採用してナンボかと思われているカード、これを1枚採用するに至った経緯なんかも詳しく見てみたい! まるでスープに一滴だけエキスを垂らす料理人のようである。
今回は「スゥルタイ・デルバー」との対比を狙って「スゥルタイ・ネメシス」と呼ばせてもらったが、本人は「トゥルーネーム・スゥルタイ」と解説していた。そっちの名前もカッコイイなぁ。
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