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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:スゥルタイ・デルバー(レガシー)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:スゥルタイ・デルバー(レガシー)
by 岩SHOW
前回、クレイグ・ウェスコー/Craig Wescoeの「Death & Taxes」について紹介したが、彼がTOP8に入賞したこのグランプリ・ルイビル2017のTOP8には他にも強豪がひしめいていた。リード・デューク/Reid Duke、BBDことブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duin、マイケル・メジャーズ/Michael Majors......実力も実績も文句なしな面々だ。
マイケル・メジャーズはプロツアー『テーロス』および『ニクスへの旅』でTOP16に名を連ねたこともある強豪であり、グランプリTOP8はこれで4回目。かつてグランプリ・サンディエゴ2015での優勝経験もある。まだ25歳と若いので、これからまだまだ脂がのってくるのではないか......というアメリカのプレイヤーだ。
彼はこのグランプリにおいて、ブラッド・ネルソン/Brad Nelson(2010年度プレイヤー・オブ・ザ・イヤー、通称ブラネル)直伝のデッキを用いてこの戦績を残している。そのブラネル自身も12位と好成績を残している。このデッキは、間違いなく強い。というわけでその内容を見てみると......これがまたなんとも懐かしいカードがいるではないか。今日のデッキは「スゥルタイ・デルバー」。しかし、マニアとしては別の名で呼んでみたいぞ!
4 《Underground Sea》 1 《Tropical Island》 2 《Bayou》 4 《汚染された三角州》 3 《霧深い雨林》 2 《新緑の地下墓地》 4 《不毛の大地》 -土地(20)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《タルモゴイフ》 1 《墓忍び》 -クリーチャー(13)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《突然の衰微》 4 《目くらまし》 4 《トーラックへの賛歌》 1 《四肢切断》 4 《意志の力》 2 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(27)- |
1 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《侵襲手術》 2 《思考囲い》 1 《見栄え損ない》 1 《真髄の針》 1 《ゴルガリの魔除け》 1 《冬の宝珠》 2 《毒の濁流》 2 《水没》 2 《精神を刻む者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
《秘密を掘り下げる者》を使用したデッキは数多くあり、その英語名から○○デルバーと呼称される。最近では、主流となっているのはスゥルタイ(青黒緑)か、それに赤を足した4色、あるいは青赤といったところか。今日のこのデッキも、スゥルタイカラーでまとめられたデッキだ。
黒と緑を用いる最大の決め手は、《死儀礼のシャーマン》。この1マナクリーチャー、当コラムでも何度も触れているが......やっぱりぶっ壊れ。1マナでマナを出す・2点回復・2点クロック(対戦相手のライフを削る)のと同時に墓地のカードを追放して対戦相手を妨害を行い、かつタフネスは2あるという......どこからどう見ても隙の無いデザインにはただただ恐れを抱くばかりだ。これと《秘密を掘り下げる者》で1マナクリーチャーは完璧だ。
デルバーデッキは《秘密を掘り下げる者》を《昆虫の逸脱者》に変身させたいのでインスタントorソーサリー呪文に比重を置いてデッキが作られる。削られるのは土地の枚数で、多くて20枚程度。この中には《不毛の大地》も含まれているので、色マナを供給する手段は乏しい。これを1マナのドロー呪文で補うわけだが、それでも十分なマナ源を確保できずに、いわゆる「事故ってしまう」ことが多々ある。かといって《極楽鳥》のようなマナクリーチャーを採用してもデッキ全体の攻撃性がパワーダウン。このジレンマを《死儀礼のシャーマン》は見事に解決したというわけだ。
これら1マナクリーチャーに続くのは《タルモゴイフ》。こちらも緑を採用する理由で、2ターン目にこれを出して次の相手のアクションは《目くらまし》で弾く、という伝統的な動きは、もはやコンボとも言える。
これと1マナクリーチャーで速やかにライフを削り取る、その時間を《不毛の大地》《目くらまし》《意志の力》で稼ぐのが緑系デルバーデッキのお約束。このデッキでは《タルモゴイフ》に加えて2マナ域に《トーラックへの賛歌》を採用している。
手札を無作為に2枚叩き落すこのソーサリー1枚によって、「これなら動ける」とキープした手札をズタズタに引き裂かれて敗北、という苦い経験、レガシープレイヤーなら一度はあるはずだ。2ターン目に《秘密を掘り下げる者》がその能力でこれを公開して来たら、もはやホラーである。レガシー怖い!
この《トーラックへの賛歌》と《目くらまし》《不毛の大地》のマナ否定パッケージ、そして《タルモゴイフ》と並ぶと......往年のレガシーファンなら、あるクリーチャーもまとめて想起してしまう(と、信じているんだが)。これらをまとめて採用したデッキは、一昔前......2008年頃に活躍していた「Team America」。これの初期版は《陥没孔》や《もみ消し》まで用いて徹底的にマナ基盤を叩く、尖ったデッキだったのだが......語りだすと長くなるのでここらで切り上げて。その「Team America」の象徴的なクリーチャーが《墓忍び》だ。
墓地のカードを追放してマナの代わりにコストの支払いに充てる探査能力を持った5/5飛行のデーモンで......2マナでこれを呼び出してボコスカ殴る、というのが当時は本当に強かった。当時の除去の代表格が《稲妻》だったというのも大きいね。
この《墓忍び》、いつしか「重い」「もっさりしている」「決定力がない」とレガシーのデッキからその姿を消すようになったのだが......ここに来て復活ッ! 考えてみれば、今は似たスペックの《グルマグのアンコウ》がデルバー系デッキで活躍する環境。このアンコウは1マナ5/5まで見込めるクリーチャーであるが、そう毎度探査コストに6枚のカードを充てられるわけではない。2マナ払ってアンコウを出しているのであれば、もう1マナ払うかあと1枚墓地に置いて《墓忍び》を出した方が強いじゃないかと。
同型であればただ睨み合うだけのアンコウだが、《墓忍び》はその頭上を飛び越えて攻撃に行ける。さらにはその点数で見たマナ・コストの大きさで、同型のデッキが除去として用いる《突然の衰微》も受け付けない。ということで、環境に多く存在する他のデルバーデッキ、中でもスゥルタイ同型戦でより有利に立ち回れることを見込んで、ブラネルがこの懐かしき悪魔に再び居場所を与えたのではないだろうか。この選択が正しかったかどうかは、冒頭に述べた成績が証明してくれている。
この帰ってきた「Team America」とでも呼びたくなるデッキ、しばらくレガシーを離れていたけど当時使っていたデッキはまだ残ってるよ~という人には是非ともトライしてほしい逸品だ。黎明期から近現代まで、マジックの名カードが集結するまさしくレガシー感溢れるデッキ。妨害して引いて殴ってと、マジックしている感も味わえて飽きることのないものじゃないかなと。あ~、《墓忍び》出してぇ~。
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