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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Elves(レガシー)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Elves(レガシー)
by 岩SHOW
「小枝を踏み折れば、骨を折ってあがないとする。
――― ラノワールのエルフの、侵入者への処罰」
《ラノワールのエルフ》、怖いよ。このカード以外にも、マジックのカードを眺めていればエルフという種族がやたらと排他的なのが見て取れることかと思う。今ではゲートウォッチの一員として人間や他の種族と連携を取るニッサも、初出の設定ではエルフ至上主義者だった。ローウィンに住まうエルフなんて、自分たち以外は醜悪で狩るべき対象とまで言ってのけるのだから恐ろしいものだ。
そんな、他種族・余所者には厳しいマジックのエルフたちだが、同族は大好きという極端な性格をしている。カードとして、同タイプのものを強化し、数が並べば並ぶほど恩恵が得られる能力を持ったものが多数だ。今日はそんなエルフを大集合させたレガシーのデッキを紹介しよう。
2 《森》 2 《Bayou》 2 《ドライアドの東屋》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 1 《新緑の地下墓地》 4 《ガイアの揺籃の地》 -土地(19)- 4 《死儀礼のシャーマン》 2 《Fyndhorn Elves》 4 《遺産のドルイド》 1 《樺の知識のレインジャー》 4 《イラクサの歩哨》 4 《クウィリーオン・レインジャー》 4 《ワイアウッドの共生虫》 4 《エルフの幻想家》 1 《再利用の賢者》 2 《孔蹄のビヒモス》 -クリーチャー(30)- |
4 《垣間見る自然》 3 《自然の秩序》 4 《緑の太陽の頂点》 -呪文(11)- |
1 《漁る軟泥》 1 《大祖始》 3 《トーモッドの墓所》 3 《陰謀団式療法》 2 《思考囲い》 2 《突然の衰微》 2 《窒息》 1 《自然の秩序》 -サイドボード(15)- |
少し前まではレガシーの3強の1つであると言われたりもした「Elves」。今でこそ全盛期の勢いはなくなったが、それでもデッキパワーは健在だ。何より「Elves」は回っているのを見るのが楽しい。実力と華を兼ね備えたベテラン選手とでもいおうか。根強いファンもいるしね。
「Elves」における1ターン目最良のアクションは...やはり《死儀礼のシャーマン》。9枚採用されている《樹木茂る山麓》などの生け贄に捧げる土地・フェッチランドをから1ターン目に戦場に出して、2ターン目にそれを墓地から追放して3マナ分動く、というのが黄金ムーブである。そして、墓地のインスタントorソーサリーを追放して2点ライフを失わせる通称「死儀礼ビーム」はこのデッキでは後述するカードにより他のデッキよりも強力に運用される。
追加の1マナ・マナクリーチャーは《Fyndhorn Elves》。これは......《ラノワールのエルフ》《エルフの神秘家》でも構わない。まあ《Fyndhorn Elves》が一番レガシーっぽいから、せっかくだからというのはあるね......。
《遺産のドルイド》《樺の知識のレインジャー》もマナを伸ばすのが役割だ。これらは召喚酔いに影響されないタイプのマナ能力だが、他のエルフをタップすることを要求してくる。このマナ生産をサポートする有能なスタッフであるのが《イラクサの歩哨》だ。これを2体出して《遺産のドルイド》本人と併せて3体のエルフをタップして3マナ得る。追加のエルフを唱えると、歩哨2体がアンタップ。この2体と、今しがた唱えて戦場に出たばかりのエルフをタップしてさらに3マナ得て......と、緑の呪文をクルクルと唱え続けていくことが可能となる。これが「Elves」の心臓だ。《樺の知識のレインジャー》は生み出せるマナの量は少ないが、好きな色マナを生み出せるのでサイドボードの黒いカードの運用を助けるシブいカードだ。
このエルフエンジンをフル回転させて、終わりなき展開を生み出すのが《垣間見る自然》だ。このソーサリーを唱えれば、そのターンの間クリーチャー呪文すべてに1枚ドローがオマケでついてくる。エルフエンジンより緑マナを生み出し、エルフを唱え、カードを引く。これを延々繰り返し、戦場にとてつもない数のエルフを展開してしまおう。
この爆発的な展開力をさらに伸ばす、ニトログリセリンのようなカードが《クウィリーオン・レインジャー》《ワイアウッドの共生虫》だ。レインジャーは《森》を、共生虫はエルフを手札に戻すことで、クリーチャーを1体アンタップすることができる。これでマナを生み出すエルフをアンタップしつつ、レインジャーの場合は戻した《森》を再度出してマナを伸ばし、共生虫は《エルフの幻想家》を使いまわしつつ《イラクサの歩哨》《垣間見る自然》でマナもドローも伸ばすというわけだ。これらのカードが、エルフの最大の強みである、と言い切っても良いレベルだ。
どちらもエルフや《ドライアドの東屋》をブロックさせてから手札に戻すことで、対戦相手の攻撃を食い止めつつ絆魂での回復や《梅澤の十手》にカウンターが乗るのを防ぐことができるということを忘れずに。こうやって時間を稼ぎつつ、《死儀礼のシャーマン》をアンタップしてビーム2連発、といった方法でダメージレースを制することもある。
さて、アドバンテージもマナも得まくり祭りの果てには、大技で勝負を決めるとしよう。《ドライアドの東屋》やマナ・エルフをサーチするマナ加速兼、《遺産のドルイド》《イラクサの歩哨》上記のアンタップ係といったエンジン形成カードサーチ兼、《再利用の賢者》《漁る軟泥》のような特定の相手に効く1枚挿しサーチ兼、フィニッシャーを兼ねる《緑の太陽の頂点》を用いるか、超万能クリーチャーサーチ《自然の秩序》か、あるいは手札から素出しか。いずれかの方法で《孔蹄のビヒモス》を戦場に叩き付けるのだ。
このビヒモスの誘発型能力で、自身の戦場にいるすべてのクリーチャーはその数と同じだけ+1/+1修整を受けトランプルを得る。召喚酔いしていないエルフたちとこのビヒモスでズドドドドドと地鳴りが聴こえるようなアタックをブチかまして、対戦相手のライフを削り切るのだ。轢き潰す快感がクセになること間違いなし!
そんな簡単にマナが揃うのかって? 《ガイアの揺籃の地》をなめちゃいけない。これ1枚タップして8マナ、なんて光景をちょくちょく見る。マジックの歴史上でも屈指のパワーを誇るこの土地を使えることもまた、「Elves」の強みである。
現在はトップメタ(環境最上位)から一歩後退した感のあるエルフデッキ。理由は苦手とする「奇跡コントロール」の使用者がとても多く、それらのプレイヤーの習熟度が以前よりも高まったため、一筋縄ではいかなくなったこと。このデッキリストでも、サイドボードに《突然の衰微》《窒息》と気持ちばかりの対抗手段は積んではいるが、どちらかというと「奇跡コントロール」戦はもう開き直って、他のデッキ相手に取りこぼさないようにしようという姿勢が見える。
《トーモッドの墓所》の採用などはまさしくそうだ。これは墓地を用いるコンボデッキ相手に、特に「リアニメイト」戦を強く意識してのチョイスだ。《死儀礼のシャーマン》もいるし、《漁る軟泥》もあるのに、その上墓地対策が必要なのか? それにしても《トーモッドの墓所》以外にもアドバンテージが取れる類のものを用いればいいのに......とお思いの方もいらっしゃるかもしれない。しかし、今の「リアニメイト」を相手にして、上記の対策ではとてもじゃないが間に合わないのだ。対戦相手は全力で1~2ターン目でのコンボ成立を狙ってくる。さらにはそれを《別館の大長》でバックアップしようという構えで臨んでくる。これに対して召喚酔いするようなカードや墓地追放に合計2マナ以上必要な手段は、間に合わないことがほとんど。《大修道士、エリシュ・ノーン》を釣られてゲームオーバーにならないよう、0マナで設置から起動まで行える《トーモッドの墓所》は非常に優秀だ。直近のトーナメントでも「リアニメイト」はTOP8に食い込むことが多く、これを強く警戒してのサイドボードは良いチョイスだと思うね。
扱うには少々練習が必要だが、回せば回すほどに引き出しが増えていくタイプのデッキだ。グランプリ・千葉2016のためにこのデッキを組もうという方は、どうか生涯かわいがってやってほしい。一人回しが楽しいのもこのデッキの良いところだ!
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