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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ストーンフォージ・スティル(レガシー)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ストーンフォージ・スティル(レガシー)

by 岩SHOW

 かつて「ランドスティル」というデッキが存在した。スティルこと《行き詰まり》を用いたコントロールデッキだ。

 《行き詰まり》を設置すると、先に呪文を唱えた方が相手にカードを3枚引かれてしまうという「動いたもん負け」の状況となる。このエンチャントで蓋をしてから、呪文でない攻め手......ミシュラランドこと《ミシュラの工廠》のようなクリーチャー化する土地を用いて攻めていく。打点は低くとも、これが続けば対戦相手はいずれ対処しなければならなくなる。

 除去なりブロッカーなりを用意しようと動くと、《行き詰まり》の能力が誘発し、これを生け贄に捧げて3枚ドロー。増えた手札で除去を打ち消すなり、クリーチャーを農場送り(※1)にするなりしてやれば良い。そうやって対処したら、また《行き詰まり》で蓋をする。かつてはレガシーを代表するデッキの1つだった。

(※1:マジックの歴史においても最強クラスの除去呪文《剣を鍬に》。武器を農耕具に替えられたクリーチャーは、戦場を離れて農村で穏やかに暮らす......というフレイバーを意識して、この呪文でクリーチャーを追放することを「農場送り」と呼ぶ。相当な数の《タルモゴイフ》が家畜として地を耕していることだろう)

 このデッキは、現代マジックに取り残されて消えていく。青白コントロールの系譜は「奇跡コントロール」に受け継がれ、「ランドスティル」という老兵は去りゆくのみ......だったのだが。つい先日、隠居していると思っていた「ランドスティル」の姿をトーナメントシーンで見つけることができた。もちろん、その姿はかつてのどっしりコントロールとは別のものではあるが......《行き詰まり》で蓋をする戦略はまだ終わりじゃないのかもしれない、そんな希望を抱かせてくれる新たなスティルデッキを紹介しよう。「ストーンフォージ・スティル」の登場だ!

Dave Patwell - 「ストーンフォージ・スティル」
StarCityGames.com Classic ミルウォーキー 準優勝 / レガシー (2016年10月23日)[MO] [ARENA]
1 《
4 《Tundra
2 《Volcanic Island
4 《溢れかえる岸辺
2 《霧深い雨林
1 《沸騰する小湖
1 《カラカス
4 《ミシュラの工廠
1 《変わり谷
3 《不毛の大地

-土地(23)-

4 《渋面の溶岩使い
4 《呪文づまりのスプライト
4 《石鍛冶の神秘家
3 《ヴェンディリオン三人衆

-クリーチャー(15)-
4 《渦まく知識
3 《剣を鍬に
1 《狼狽の嵐
3 《行き詰まり
4 《意志の力
1 《梅澤の十手
1 《饗宴と飢餓の剣
1 《火と氷の剣
1 《殴打頭蓋
3 《精神を刻む者、ジェイス

-呪文(22)-
2 《青霊破
1 《水流破
1 《赤霊破
2 《紅蓮破
4 《安らかなる眠り
2 《解呪
3 《神聖の力線

-サイドボード(15)-
StarCityGames.com より引用)

 《石鍛冶の神秘家》+装備品というお手軽勝利パッケージを軸としたデッキに《行き詰まり》を加えた青白赤の3色デッキだ。実はかつても同様のコンセプトを用いたデッキが存在した時期があり、レガシープレイヤーの間では話題になった。......ごくわずかの期間ではあるけれども。確かに《石鍛冶の神秘家》と《行き詰まり》の相性は良い。石鍛冶は起動型能力で手札の装備品を戦場に出すので、《行き詰まり》で蓋をした状態でも手札から装備品を展開できる。その状況下で《殴打頭蓋》をどうにかしろと言われても至難の業である。

 ただ、若干にオーバーキルではある。石鍛冶が通って、次のターンを無事に迎えられている時点で勝利には十分に近づいている。これを通すためのカウンター合戦で失った手札を補填するというのは確かに強いが......対戦相手の方がガンガン展開してくるデッキだった場合、《行き詰まり》を設置する暇はないし、3枚ドローを盤面に還元する時間もないかもしれない。ということで先にも述べた通り、《行き詰まり》は時代遅れの呪文としてレガシーでは見られなくなった。

 《行き詰まり》の姿を見なくなってからは《宝船の巡航》《時を越えた探索》とイカれたドロー呪文がレガシーで暴れまくり、こちらは強制的に環境から退場させられた。そして、この2016年に久しぶりのスティルデッキの登場だ。どうしてもカードを引きたいプレイヤーが無理やりに用いたのか、あるいはレガシーならではの「最近やってなかったけど家にあったデッキで久しぶりに参加してみた」なのか、真意は不明だが......いい。いいよねこれは......特にスティルデッキを使ったこともないのだが......なんかこう旧友に久しぶりに会ったかのような感覚がね。

 上記の通り、石鍛冶絡みの攻防により失った手札を《行き詰まり》により回復させるのが主な戦術となる。「ランドスティル」よろしく、ミシュラランドからの強気の《行き詰まり》でごゆっくりタイムも健在だ。

 このデッキで特徴的なのは、フェアリー・シナジーを採用していること。《呪文づまりのスプライト》はフェアリーの数を参照して呪文を打ち消す能力を持ったクリーチャーだが、呪文が総じて軽いレガシーでは2~3体もいればほとんどの呪文に対処することができるだろう。これのフェアリー・カウントを増やすのが、単体で十分に強力な《ヴェンディリオン三人衆》に、《行き詰まり》と好相性の《変わり谷》。このヴェンディリオン×スプライトのパッケージも随分前にレガシーで流行った時期があり、やはりこれを使用したDave Patwellはレガシーにふらっと復帰してみたところ好成績を残したのかもしれない。最近のプレイヤーはまず意識しないカードであるからこそ、効果的に刺さったのではないだろうか。

 基本的には青白のデッキだが、《渋面の溶岩使い》とサイドボードの《紅蓮破》《赤霊破》のために赤がちょい足しされている。文字通りシブくて、こいつぁたまらん。果たしてグランプリのような長丁場を、最新鋭のレガシーのデッキを相手に戦い抜けるのかどうかは定かではないが......レガシーにはいつでも戻ってきていいんだよ・どんなデッキを使ってもいいんだよとのメッセージのようで、勇気をくれるじゃないか。皆も押し入れで眠っているデッキで、近くのレガシートーナメントに参戦してみてほしいってぇ!

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