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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Thought Lash Combo(レガシー)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Thought Lash Combo(レガシー)
by 岩SHOW
近年のマジックは実に華やかだ。プレインズウォーカーたちが主役になり、さまざまな魅力的な次元を飛び回り、戦いの物語を紡いでいく。カードにもジェイスをはじめとするゲートウォッチのメンバーが頻繁に登場し、イラストはCGで描かれたリアルで鮮やかなものが主体となり......こんなカッコイイ見た目なのにコモン!?と驚くようなカードも多数。これは良いことだ。プレイヤーの増加にも繋がっているんじゃないかと思う。ビジュアルというものはゲームにおける重要なファクターであると再認識。
......ただ、昔のマジックのビジュアルも僕は心から愛している。日本語版がまだ存在しなかった頃のカードなんて、たまらない。アメリカン・グロテスク・ファンタジーとでも言おうか。一体何の目的があって描かれたのかわからないレベルのぶっ飛んだイラストのカードが多数存在し......そしてそれらはその見た目と同じくぶっ飛んだ能力を持っていたりするものである。そういうカードが、心をとらえて離さない。
《Thought Lash》はそんな愛すべきクレイジー・カードの代表である。ひとまず、現在のこのカードのテキストを日本語で書くとこうなる。
累加アップキープ ― あなたのライブラリーの一番上からカード1枚を追放する。(あなたのアップキープの開始時に、このパーマネントの上に経年カウンターを1個置く。その後あなたがこの上に置かれている経年カウンター1個につきアップキープ・コストを1回支払わないかぎり、これを生け贄に捧げる。)
プレイヤー1人がThought Lashの累加アップキープを支払わなかったとき、そのプレイヤーのライブラリーのカードをすべて追放する。
あなたのライブラリーの一番上からカード1枚を追放する:このターン、あなたに与えられる次のダメージを1点軽減する。
ライブラリーをライフの代わりとすることができるようなエンチャントだ。イラストでは女性の後頭部が怪物の口のようなものに変形しており、彼女の表情は虚ろなものになってその口からは数字が声に出されているようである。絶大なるインパクトを誇るイラストに、累加アップキープを支払わなかった場合ライブラリーがすべて吹き飛ぶという凄まじいペナルティが合わさり......ネタカードとしては相当に上位に位置する逸品だ。
ただ、マナを支払わずにライブラリーを追放できるという能力自体は、怪しげなコンボ好きからすると評価できる点である。このエンチャントを4枚採用したデッキリストを発見したので、これは紹介せずにはいられないなと。人は奇怪なものに惹きつけられる。皆もこういうのが見たかったんだろう?「Thought Lash Combo」の全貌、刮目せよ。
5 《島》 3 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《古えの墳墓》 -土地(20)- 4 《研究室の偏執狂》 4 《技を借りる者》 1 《鏡割りのキキジキ》 -クリーチャー(9)- |
4 《渦まく知識》 4 《思案》 4 《師範の占い独楽》 1 《彩色の宝球》 3 《白鳥の歌》 2 《衝動》 1 《残響する真実》 1 《長期計画》 4 《Thought Lash》 4 《意志の力》 2 《誤った指図》 1 《命運の鏡》 -呪文(31)- |
3 《Mystic Remora》 2 《墓掘りの檻》 1 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 3 《粉々》 3 《血染めの月》 2 《コジレックの帰還》 -サイドボード(15)- |
なんともまあ形容しがたいデッキである。レガシーにおいてその姿を観ることがほとんどないカードがずらずらと名を連ねる。「リアニメイト」や「ANT」のような普通のコンボにゃ用がないというコアなプレイヤー達もこのリストには興味を示してくれるのではないだろうか。カード1枚1枚を見ても一般のプレイヤーには何がしたいデッキか少々わかりにくいと思うので、このデッキが目指すコンボをご紹介しよう。
I: 《Thought Lash》+《研究室の偏執狂》
《Thought Lash》の能力でライブラリーをすべて追放し、《研究室の偏執狂》のライブラリーにカードがない時にカードを引く場合、代わりにゲームに勝利するという能力を用いて勝利するコンボだ。自身のライブラリーを吹き飛ばすカードと偏執狂のコンボは数多くあるが、この《Thought Lash》型はそのダメージ軽減能力を用いてプレイヤー自身を護りながらコンボを達成できるという独自性がなかなかに面白い。《師範の占い独楽》《彩色の宝球》や各種ドロー呪文を用いれば、ライブラリーを空にして即座に勝利することができる。もしこれらがなくても、自身のアップキープを迎えてからゴリゴリ削ってドロー・ステップを迎える、という勝ち方も狙える。とは言え《研究室の偏執狂》を危険に晒すわけにもいかないので、極力先述のプランで勝ちたいところだ。
II:《技を借りる者》+《鏡割りのキキジキ》
何とも珍しいコンボではあるが、いわゆる無限トークンである。対戦相手の終了ステップに《鏡割りのキキジキ》がライブラリーの上で公開されている状態で《技を借りる者》がいると、
- キキジキの能力を得た借りる者を使って自身のコピー・トークンを作る
- 速攻を持ったトークンでまた自身のコピーを......
という手順を繰り返す。これらのトークンは終了ステップの開始時に追放されるのだが、対戦相手の終了ステップに作られたものは次のあなたのターンの終了ステップの開始時まで生き延びるので、それを利用して無尽蔵に発生した《技を借りる者》とともに自身のターンを迎え、攻撃して勝つというものである。
レガシーには《渦まく知識》《師範の占い独楽》とライブラリーの上を好きなように並べることのできるカードが多数ある。これらに加えて、《Thought Lash》でキキジキが捲れるまでライブラリーを追放し続けるという手もある。カードが揃ってから勝利するまでにタイムラグがあるのが弱点ではあるが、2枚のカードを並べるだけのコンボなのでお手軽である。
上記2つの勝ち筋のどちらか、状況に合ったものを選択してコンボを狙う......なんとも異形のデッキである。《Thought Lash》を軸に、相性の良いカードが採用されているのも見逃せない。《長期計画》はカードを探してライブラリーの上から3番目に置くという少々使いにくい呪文だが、《Thought Lash》を置いている状態だとライブラリートップまで浮上させることができて実質《吸血の教示者》に。《命運の鏡》は追放されたカード7枚を新たなライブラリーとするアーティファクトで、これで追放されたコンボパーツを積んだり、あるいは《Thought Lash》《研究室の偏執狂》コンボを阻害された際に延命手段として用いることもできる。戻したカードで再度コンボを狙うのだ。
最大のセールスポイントは対戦相手にデッキがばれていないこと。さすがに見てもいない《Thought Lash》を警戒するほど危機察知能力の高いプレイヤーはいない。なので、警戒されていないデッキ=ローグなゲームを楽しむことができるだろう。個人的には、もっと《技を借りる者》とシナジーを形成するクリーチャーやアーティファクトを採用しても良いんじゃないかなと思う。《師範の占い独楽》とこれを並べて、ガチャガチャと毎ターンアドバンテージを得ていくゲーム、やってみたいね。
さあ、来週からは当コラムも『カラデシュ』参入後のデッキ紹介へと突入していく。奇怪で機械なデッキが暴れたりするのだろうか? これを書いている今はまだまだどの環境もどうなるのか読めないが......楽しみでしょうがないってぇ!
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