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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:リベリオン(過去のスタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:リベリオン(過去のスタンダード)

by 岩SHOW

 部族デッキを紹介する「部族ウィーク」でお届けしたこの一週間。最後を飾るデッキは何にするのか、アレも捨てがたい、コレも語りたい......そんな中から、実績的にもやはり外せないなと思った「リベリオン」をチョイス。「ゾンビ召集」と相当迷ったんだけどねぇ~やはり使用者があのお方なもんでね......。

 「リベリオン」とは、『メルカディアン・マスクス』で登場したレベルというタイプのクリーチャーを主軸として形成される部族デッキである。《レイモス教の兵長》《果敢な隼》のように、マナを支払いタップすることでライブラリーから直接レベル・クリーチャーをサーチして戦場に出すことのできる起動が型能力を持つものが存在するのがこのタイプの特徴で、原則的には白に属するクリーチャーたちである。

 レベル/Rebelとは反逆者・反抗者を意味し、『メルカディアン・マスクス』ではメルカディア市の圧政に反乱するレイモス教徒、『ネメシス』ではラースを支配するエヴィンカーとその要塞に対して立ち向かうコー・ヴェク・ダルの氏族、『プロフェシー』ではケルドの侵略に対抗する北東ジャムーラの都市国家連合軍・キパム連盟に、それぞれ属する存在がレベルとしてカード化されている。

 上述の手札を消費せずにクリーチャーを展開する能力、通称「リクルート」能力は、マナこそかかるもののリソースを消費せずにインスタントタイミングでクリーチャーを展開できるので隙がなく、打ち消されもしないために当時幅を利かせていた青いデッキに対して非常に有効であった。1ターン目に出した1マナクリーチャーが2マナクリーチャーを呼び、2マナクリーチャーが3マナクリーチャーを呼び......どんどん強くなっていくのだからたまらないね。

 むしろ、青の打ち消し呪文と組み合わせた「カウンターレベル」や、あるいはクリーチャーが増えることを活かした「レベル対立」なんてデッキも登場したが、今日紹介するのはオーソドックスなほぼ準白単の「リベリオン」だ。反乱という意味のRebellionからきているデッキ名だが、最近知ったのだが海外ではこの呼び方は浸透していないっぽいね。日本ローカルの呼び名のようで、英語圏のデッキリストではいずれも単にRebelsと記載している。まあ前置きが長くなったが、デッキリストを見てみよう。

Kai Budde - 「リベリオン」
プロツアー・シカゴ2000 優勝 / スタンダード (2000年12月1~3日)[MO] [ARENA]
16 《平地
4 《低木林地
4 《リシャーダの港
2 《黄塵地帯

-土地(26)-

4 《レイモス教の兵長
3 《長弓兵
3 《不動の守備兵
2 《果敢な隼
4 《果敢な勇士リン・シヴィー
2 《果敢な先兵
1 《反逆者の密告人
1 《熱風の滑空者
2 《レイモス教の空の元帥

-クリーチャー(22)-
4 《キマイラ像
4 《増進 // 衰退
4 《パララクスの波

-呪文(12)-
1 《果敢な先兵
1 《光をもたらす者
3 《獅子将マギータ
3 《浄化の印章
4 《ハルマゲドン
3 《神の怒り

-サイドボード(15)-

 まず、使用者に注目!カイ・ブッディ/Kai Buddeですなぁ。言わずと知れた「ジャーマン・ジャガーノート」、プロツアー優勝7回とかいう異常なまでの記録を保持する伝説のプレイヤーである。彼のそのプロツアー優勝記録の始まりとなったのが、この「リベリオン」を使用したプロツアー・シカゴ2000だ。

 スタンダードで行われたこのプロツアー、「リベリオン」は戦前から最強デッキ候補として目されており、使用者も多いと予想されていた。マジックはこう読まれると辛いもので、青黒のコントロールデッキは通常の除去に加えて《サーボの命令》という戦場と手札から特定のタイプのクリーチャーを絶滅させる呪文を搭載し、赤緑系のデッキは土地を必要とするこのデッキに対して《野火》で《平地》を吹き飛ばすという対策手段を取って、このトーナメントに臨んだのだった。ゲームをプレイする以前に始まる戦い、メタゲームにおいて「リベリオン」対策を取らないという選択肢はなく。いわゆる、「メタられる」ってやつだ。

 しかしそれでも、それらのデッキを蹴散らして優勝してみせたのがブッディの「リベリオン」。このデッキにはそれらに対抗する工夫があった。レベルを指定した《サーボの命令》や《神の怒り》をものともしない《キマイラ像》を採用してレベル以外のアタッカーを確保し、また《平地》を《低木林地》と差し替えることで《野火》の被害を最小限に留めつつ、《増進 // 衰退》を4枚投入して、除去が火力でありエンチャントがデッキのエンジンである「ファイアーズ」への耐性を増しているのだ。メタってくるならこっちもメタり返す!の精神である。

 デッキの動かし方としては、まずは軽量のレベルを展開しこれの能力で《果敢な勇士リン・シヴィー》を戦場に出すことを目指す。この伝説のレベルは、デッキ内のすべてのレベルを呼び出すことができるし、それらが死亡してしまったとしても墓地からライブラリーに戻す能力でそれを再利用させてくれる、まさしく修羅(関係ないが彼女は身長178cm、体重77kgと高身長で逞しい身体の持ち主である)。

 このリン・シヴィーさえ出てしまえば、後はもう手札からクリーチャー呪文を唱える必要はなくなるほどであり、《熱風の滑空者》《反逆者の密告人》のような特定の相手に強いカードや、純粋に強力な《レイモス教の空の元帥》などを呼び出して殴っていれば、おのずと勝利は訪れるだろう。相手のクリーチャーは《パララクスの波》で事象の彼方へ。う~む、隙がないなぁ。

 サイドボードの《ハルマゲドン》《神の怒り》に時代を感じるなぁ。《ハルマゲドン》なんて撃った瞬間に勝利が確定するゲームもあるだろう。すごい時代だったなぁ......。時代と言えば、当時は伝説のパーマネントは、同名のものはお互いの戦場あわせて1枚しか存在できないというルールがあり、先に出した者が圧倒的優位に立ったのである。だから《獅子将マギータ》のようなカードもガッツリ3枚採用されている。同じレベル系のデッキでこれを先出しすれば、相手はまずマギータをどうにかしなければどうしようもない。ルールこそ違うが、現代においても同系のデッキ相手に対して《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》のようなプレインズウォーカーを先に出した方が圧倒的優位に立てる、というのも似たようなものかな。

 そういうカードは中途半端な枚数を取るのではなく、3~4枚しっかり採用しよう。という具合に、過去のデッキリストから改めて学ぶこともある。このコラムではそんな情報を現代のプレイヤーに向けて発信できたらなぁ......と連載100回を超えて改めて思うのであった。

 というわけで「部族ウィーク」はこれにて終了。お気に入りの部族が紹介されなくて残念がっているそこのあなた、ご安心を! またいつか必ず取り上げるから、楽しみにしていてほしいってぇ! あるいは、マイナー部族デッキで自身が結果を残すのもイイネ。ファンガスとかコボルドで活躍し、公式記事にその名を刻みつけるのはあなただ!ってなところで、また来週~ッ!

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