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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:4色儀式(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:4色儀式(スタンダード)
by 岩SHOW
チャールズ・ダーウィンは世界一周の航海において、各大陸・島々の生物相の違いに気付いた。その後地質学について学んだ彼は、地層の変化と動植物の変化はイコールであるとし、大陸の変動により新しくできた生息地に合わせて、そこに住まうものたちもまた変化をしたのではないかと考えた。彼は環境に適応した形質を獲得した種が分岐し、多様な種が生じると述べている。マジックにおいて、環境に適応したデッキが様々な亜種を生み出すという現象も、まさしくこの理論に当てはまると言えるのではないだろうか。
......とまあ、ただそれらしい語り口で入りたかっただけで書いた導入は置いといて。このスタンダード環境では段階を経た進化を遂げて、その性質を大きく変えたデッキが存在するのでここに紹介しておこう。特に目新しいリストでもないのだが、環境末期のまとめだと思ってもらえればと思う。「4色儀式」を紹介だ。
3 《森》 1 《平地》 1 《沼》 1 《島》 4 《ラノワールの荒原》 3 《コイロスの洞窟》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 1 《伐採地の滝》 3 《ウェストヴェイルの修道院》 3 《進化する未開地》 -土地(24)- 4 《壌土のドライアド》 4 《薄暮見の徴募兵》 4 《エルフの幻想家》 2 《ズーラポートの殺し屋》 4 《地下墓地の選別者》 4 《変位エルドラージ》 4 《反射魔道士》 3 《血統の観察者》 -クリーチャー(29)- |
3 《謎の石の儀式》 4 《集合した中隊》 -呪文(7)- |
4 《作り変えるもの》 2 《虚空を継ぐもの》 4 《現実を砕くもの》 2 《否認》 2 《精神背信》 1 《究極の価格》 -サイドボード(15)- |
名前は大きく変わったが、現スタンダード環境を最初に定義づけたプロツアー『イニストラードを覆う影』で鮮烈なデビューを飾った「黒緑アリストクラッツ」の進化した姿である。
《ズーラポートの殺し屋》+《ナントゥーコの鞘虫》+《集合した中隊》でバラまかれるクリーチャーでライフを吸い取ってしまうコンボ要素を備えたビートダウンデッキである。これに《龍王シルムガル》をメインに入れたタイプなんかが登場、「プロツアーのデッキはまだまだ完成形ではない」とそのポテンシャルの高さを見せつけた。
その流れで登場したのが、このズーラポート鞘虫コンボに追加で《ズーラポートの殺し屋》+《血統の観察者》+《変位エルドラージ》による瞬殺無限コンボを搭載したものが「アブザン・サクリファイス」。黒緑に加えて白マナを必要とする《変位エルドラージ》が採用されるも、《コイロスの洞窟》《謎の石の儀式》で色マナを捻出できるし、《集合した中隊》で直接戦場に出すこともできるので問題はなく、このデッキの新たな可能性を拡げることに成功した。
そして、本日の紹介デッキ「4色儀式」。デッキ名もまた大きく異なるものとなっているが、その名の通り4色目が採用されるデッキとなっている。その色とは......青だ。メインボードでは《反射魔導士》がこの足された4色目のカードとなる。これも《変位エルドラージ》のために3色目が足された理論と同様に難なく運用できるのであるから、使わない方が損であるとさえ言える。
問題は、この《反射魔導士》が何と入れ替わったのかという点。土地は安定の24枚、《集合した中隊》が4枚。2枚は引きたくないが1枚は欲しい、デッキ名にもなっている4色デッキを回すエンジンである《謎の石の儀式》を3枚採用し、残り29枚はクリーチャーとなるわけだが......この枠から《反射魔導士》に押し出されるようにしてついにデッキから抜けたカードがある。それが《ナントゥーコの鞘虫》だ。原型となったデッキでは、殴ってよしコンボ決めてよしの主役カードだったのだが...「4色儀式」ではズーラポート+変位+観察者の3枚コンボをデッキのメイン勝ち筋とし、これを目指すデッキへと調整されたものである。ゆえにこのコンボには一切関係のない《ナントゥーコの鞘虫》は解雇されてしまった。進化って面白いねぇ。
上記のように勝ち手段は絞ってあるので、それを目指してコンボパーツを集めるためにクリーチャーを展開していくことになる。《壌土のドライアド》《エルフの幻想家》など軽量クリーチャーを展開して土台を作り、《謎の石の儀式》でマナを伸ばす。このマナは6マナと重い《血統の観察者》を唱えるため、また《集合した中隊》から《変位エルドラージ》《ズーラポートの殺し屋》を探すために用いる。
まず、第一に欲しいコンボパーツは《変位エルドラージ》だ。このエルドラージさえ居れば、他のパーツが揃うまでの相手の攻撃をそのブリンク能力(※1)でいなしたり、《エルフの幻想家》を出し入れしてカードを引いたり。《反射魔導士》を出し入れして相手のクリーチャーを完封したり......アドバンテージ得放題だ。
(※1:白を中心に存在する、クリーチャーを追放した後に戦場に戻す能力・呪文の効果の俗称。現在は明滅/Flickeringという正式名称が定められてはいるが、これを行う呪文の代表格である《一瞬の瞬き》の英語名およびこれを用いた各種「ブリンク」デッキが広く使われたことから、日本ではこの呼び名が浸透している。言いやすいしね。)
ここに《血統の観察者》が加われば相当な時間を稼げるし、横に《地下墓地の選別者》が並ぶと......
- 《血統の観察者》の能力で生み出されるエルドラージ・末裔・トークンを生け贄に捧げて無色3マナ生成
- →クリーチャーが3体死亡したので《地下墓地の選別者》の能力が3回誘発、占術を3回行う
- →その3マナで《変位エルドラージ》の能力を、観察者を対象に起動する。観察者の能力が誘発し、トークンが3体生み出され......
という無限に続けられるサイクルが完成する。この無限占術で《ズーラポートの殺し屋》をライブラリーの一番上に持ってきて、それをドローして無限ライフ吸収コンボを決めようってわけだ。
《反射魔導士》が入ったことでビート戦略を行ってくるデッキに対して強くなり、またメインから天敵である《ゲトの裏切り者、カリタス》にも対処できるようになった点がこれまでの鞘虫デッキよりも勝る点だ。《反射魔導士》+《変位エルドラージ》のクリーチャー完封コンビが揃ったらそのまま小粒でも殴り勝ちができるというの素晴らしい。サイドボードに《否認》なんかも取れるしね。
『イニストラードを覆う影』登場後のスタンダードという、多種多様なデッキが生み出された環境を生き抜き、淘汰の結果誕生した珠玉のコンボデッキ。コンボスキーには一度試してみてほしいね。
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