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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Oops! All Spells!(レガシー)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Oops! All Spells!(レガシー)

by 岩SHOW

 君は普段どんなデッキを使ってマジックをしているんだい? クリーチャーてんこ盛り、除去数枚なビートダウンデッキかな。あるいはクリーチャー0、その他の呪文のみで構成されたヘビーコントロールやコンボデッキか。デッキの採用カードのバランスって大事だね。

 特に大事なのは土地か。60枚デッキで土地を24枚採用すれば4ターン目まで安定して土地を置けるらしく、それより枚数を伸ばしたいコントロールやランプ系のデッキならば25枚以上に、あんまり土地を引かずにより手数が欲しい速攻系のデッキならば20枚以下に調整したりするもの。

 僕はその昔、《原始のタイタン》から《ケッシグの狼の地》《墨蛾の生息地》なんかをサーチして戦う、いわゆるランプデッキ「赤緑ケッシグ」を使っていた時、最初は土地26枚でスタートしたがあまりにも土地以外のカードを引きすぎてデッキが動かず、28枚まで増量することで円滑に運用することができた。僕の友達は25枚でスムーズに回しており、なんかオカルトではあるが人それぞれ、ベストな数字があったりするんだなぁと思ったものだ。

 真面目に序文を書いたが、今日紹介するデッキとはそれほど関係のない話で。そうやって土地の枚数を微調整してベストのものを作り出すことがデッキ構築であれば、調整もへったくれもない、ただ定まった数字を書くだけのもまたデッキ構築。今日紹介するのは「土地:0」以外あり得ない、そんなデッキだ。その名も「Oops! All Spells!」、デッキの内容はすべて呪文だ!

BelerenBlue16 - 「Oops! All Spells!」
Magic Online Legacy Constructed League 5勝0敗 / レガシー (2016年6月5日)[MO] [ARENA]

-土地(0)-

1 《野生の朗詠者
4 《ナルコメーバ
4 《Elvish Spirit Guide
4 《猿人の指導霊
4 《地底街の密告人
4 《欄干のスパイ
1 《研究室の偏執狂
1 《巻物の君、あざみ
1 《栄光の目覚めの天使
4 《別館の大長

-クリーチャー(28)-
4 《金属モックス
4 《水蓮の花びら
4 《否定の契約
4 《召喚士の契約
4 《暗黒の儀式
3 《陰謀団式療法
4 《陰謀団の儀式
4 《魔力変
1 《戦慄の復活

-呪文(32)-

 うん、予備知識なしでリストだけ見てデッキの動きを察しろというのも無理があるので、いつもの丁寧なパーツ解説から入って全貌を解明しよう! 今回はいきなり、デッキの狙いの部分から見ていこう。

1.ライブラリーをすべて墓地に!:《地底街の密告人》《欄干のスパイ

 このデッキの主役はこの2種8枚のクリーチャー。『ギルド門侵犯』にて登場したライブラリー破壊能力を持った黒のクリーチャーがデッキの肝で、4マナを生み出してどちらかのクリーチャーを出し、それぞれの能力を自分自身を対象にして解決。これらのクリーチャーの能力は、土地がめくれるまでライブラリーを墓地に置くというもの。そう、狙いはこれらのカードでライブラリーをすべて墓地に置くこと!ゆえに誰がどう調整してもこのデッキの土地は0枚!

2.上記2種のクリーチャーを唱えるためのマナソース:《金属モックス》《水蓮の花びら》《暗黒の儀式》《陰謀団の儀式》《Elvish Spirit Guide》《猿人の指導霊》《召喚士の契約

 《地底街の密告人》《欄干のスパイ》を唱える(密告人の場合は唱えて能力を起動する)ためには4マナが必要だ。元手0マナで1マナを生み出せるカードが4種16枚、これがなくてはゲームが始まらない。これらから得たマナを、1マナを3マナに伸ばす《暗黒の儀式》・2マナを3or5まで伸ばす《陰謀団の儀式》に繋げて4マナ以上をひねり出す。緑や赤のマナは《魔力変》《野生の朗詠者》を噛ませて黒マナにフィルターしてやろう。このデッキにおける《召喚士の契約》は《Elvish Spirit Guide》《野生の朗詠者》をサーチする専用のものであることを覚えておこう。

3.ライブラリーが墓地に落ちたら......:《ナルコメーバ》《戦慄の復活》《栄光の目覚めの天使》《巻物の君、あざみ》《研究室の偏執狂

 ライブラリーのカードがすべて墓地に落ちたということは、このあたりもしっかりと墓地にある(はず)。《ナルコメーバ》はライブラリーから墓地に落ちた場合、そのまま戦場に出る。これらをコストに《戦慄の復活》を唱えて、《栄光の目覚めの天使》を吊り上げる。人間がすべて墓地から蘇る......《巻物の君、あざみ》《研究室の偏執狂》が揃って戦場に出たら、あざみの能力を起動してカードを引こう。もちろん、ライブラリーが空なのでカードは引けず、即ち《研究室の偏執狂》の勝利条件を即座に満たすことができる。このデッキの目指すべき勝利の形はこれだ。奇妙奇天烈な勝ち方、これぞコンボ!

4.マナを使わないサポート:《別館の大長》《否定の契約》《陰謀団式療法

 土地のないデッキなので、コンボをサポートするのに貴重なマナソースを消費していられない。なのでこのデッキのコンボサポート=対戦相手への妨害・妨害対策はマナを使用せずに唱えられるものになっている。なかでも他のデッキではなかなか見ない《別館の大長》の存在感。このカードをゲーム開始時に公開して、対戦相手のファーストアクションを1ターン遅らせることができればこのデッキにとっては御の字。どうせ3ターン以上かかるゲームをする気は0なのだから、これでも十分強力な足止めとなる。《陰謀団式療法》はライブラリーを落としきってから最後のコンボに行く際の安全確認に、《否定の契約》もコンボが動き出すターンで勝負を決めるので最強のカウンターとなる。


 というわけで、土地0枚のコンボデッキ「Oops! All Spells!」の全容は以上のようになる。日本では《欄干のスパイ》からとって「The Spy」の呼び名が主流。個人的には、例えばうっかり手札に《巻物の君、あざみ》のようなコンボパーツが来てしまった時に無理やり墓地に落とす手段が《陰謀団式療法》以外にも欲しいので《変幻影魔》を1枚は採用したいところだが......この形でもMagic Onlineのレガシーリーグ戦で5戦全勝しているのだから恐れ入る。毎日節制し、鍛え、今自分が気力充実している状態にあるんじゃないかと実感した時なんかにはこのデッキを使うと良いかもしれない。

 グランプリ・プラハ2016およびコロンバス2016の上位にはこのようなデッキの姿を見なかったのは残念であるが......これで15回戦以上戦えというのもある種の拷問である。マナが使えない、ゆえにサイドボードをロクに使えず(このデッキも元のリストはサイドなし)、墓地対策を投入される2ゲーム目以降が苦しい戦いとなる。うん、こういうのは好きな人が使えばよい。異次元の角度から勝利したい君を応援しよう、天使の加護があらんことを。

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