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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:プロスブルーム(『ミラージュ』ブロック構築)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:プロスブルーム(『ミラージュ』ブロック構築)

by 岩SHOW

 どんな物事にも始まりがある。マジックは23年というその歴史に、いくつもの始まりを内包してきた。始まりのトーナメント、初めてのブロック制エキスパンションセット、新たなるカードタイプ......今回紹介するデッキは、始まりのデッキの1つだ。どんなデッキかって? 今週は「コンボ・ウィーク」、ということはもちろん、コンボデッキである。

 始まりのコンボデッキ。マジック最古のコンボは、その始まりのセット『アルファ版』の時点から存在していた。《チャネル》+《火の玉》コンボだ。かの世界最強マジック集団「ChannelFireball」の名前にもなっている有名コンボで、《チャネル》でMAX19点ライフを支払って極大《火の玉》を投げつける。相手に1点でもダメージを与えているか、他にマナサポートさえあれば即死亡まで追い込める恐ろしい2枚コンボである。

 ではこれを中核にしたデッキが始まりのコンボデッキかというと、実はそうでもない。正式なフォーマットが制定され、認定のトーナメントが開かれるようになった頃には《チャネル》が禁止・制限を受けていた。デッキに1枚の《チャネル》をたまたま引いたら使うが、基本は赤緑のビートである、といった感じのデッキばかりで、トーナメントシーンを制したコンボデッキとはちょっと呼べないんじゃないかな。

 そういう点で見るなら、始まりのコンボデッキとは「プロスブルーム」ということになる。マイク・ロング/Mike Longがその手で創り出し、自ら駆ってプロツアー優勝を勝ち取ったデッキだ。

Mike Long - 「プロスブルーム」
プロツアー・パリ1997 優勝 / 『ミラージュ』ブロック構築 (1997年4月11〜13日)[MO] [ARENA]
7 《
6 《
5 《
3 《湿原の大河
4 《知られざる楽園

-土地(25)-


-クリーチャー(0)-
4 《吸血の教示者
1 《エメラルドの魔除け
4 《衝動
4 《繁栄
4 《資源の浪費
2 《記憶の欠落
4 《冥府の契約
1 《生命吸収
1 《三つの願い
4 《自然の均衡
1 《エルフの隠し場所
4 《死体の花
1 《魔力消沈

-呪文(35)-
4 《エレファント・グラス
3 《エメラルドの魔除け
2 《根の壁
1 《記憶の欠落
1 《魔力消沈
3 《孤独の都
1 《エルフの隠し場所

-サイドボード(15)-

 リストだけを見ても、デッキの動かし方はわかりにくいと思うので......以下にコンボの手順を記しておこう。

(1) 打ち消しで相手を妨害したり、《衝動》《吸血の教示者》でコンボパーツを集めたりしながら土地をセットし続ける。土地を5枚ほどと《資源の浪費》を設置したら、準備完了。2段階目へ。

(2) 土地からマナを出しつつ《資源の浪費》のコストとしてすべて生け贄にして大量のマナを得る。しかる後に《自然の均衡》を唱える。5枚の土地を得て、これらも同様の手順でマナにすることで10マナ獲得。まだ手札に《自然の均衡》があるならばおかわりを。

(3) こうやって得たマナで《繁栄》《冥府の契約》などで大量ドロー。《死体の花》を引き当てたら、残していたマナからこれを唱える。これで不要な手札をマナに変換しつつ、《繁栄》《冥府の契約》を連打し続ける。

(4) 《資源の浪費》《死体の花》を揃えて(2)(3)の過程を繰り返し続けて手札を増やしていく。こうして《生命吸収》と他11枚以上の手札を揃えたら、勝負あり。手札を全力で黒マナにして、極大の《生命吸収》を撃ち込んでフィニッシュ!

 大量ドローをマナに変換する姿から、それぞれの役割を担う《繁栄》《死体の花》の英名を併せて「プロスブルーム」と呼ばれているわけ。あるいは《死体の花》と《生命吸収》で「カダベラスドレイン」と呼ぶこともあるようだ。ネイティブっぽくカダァベラッと発音したいね。それはさておき、一見複雑な手順を踏んでいるが、目指すところは《チャネル》コンボと変わらない。しかし......よくこんな形にたどり着いたなと。『ミラージュ』『ビジョンズ』のカードプールを眺めて、このデッキにたどり着ける人間がこの世にどれだけいたのだろうか。マイク・ロング恐るべし。

 ちなみに彼がこのデッキでコンボを決めまくって勝利したプロツアー・パリ1997の決勝戦の相手が使用したのもも、マイク・ロングが作成した黒赤ビートダウン「ブードゥー」だったという。プロツアー王者級のデッキを同時に2つ創り出していた、というわけで......マイク・ロング恐るべし(2回目)。

 今週は「コンボ・ウィーク」と題して、マジックの歴史を彩ったコンボデッキの数々を紹介してきた。普通に殴り勝つだけじゃ物足りない・人と違うことがしたい・ギリッギリの綱渡りを決めて芸術点を狙いたい......そんなプレイヤーたちが、今日もどこかでコンボ案を思い浮かべては一人回しで不可能に気付き解体している。そんな数多の挑戦者の中のほんの一握りが、時折栄光を掴む。何もコンボに限った話でもないが、成功するか失敗するかなんて形にしないとわからない。皆も、ふと思いついたコンボがあれば一度形にするべきだ! 最後に、僕の最近のお気に入りコンボはこれだ!

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