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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゴブヴァンテージ(エクステンデッド)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゴブヴァンテージ(エクステンデッド)
by 岩SHOW
マジックは、現実には不可能な夢を叶えてくれる、その名の通り"魔法"のゲームである。様々な世界を越え、大地を揺るがし大気をうねらせ、稲妻と炎の嵐で燃やし尽くし、生命を育みつつも奪う......こんなスーパーパワーを得て暴れまわることはできないが(もしできるのならこっそり教えてほしい)、マジックというゲームなら君の夢は現実の元なる!そう例えば...リクエストを仰ってください!
A: 奇跡を起こすことは?
B: 邪悪なる神々を呼び出してすべてを塵にすることは?
C: ゾンビパニックを引き起こして会社を休みにすることは?
D: じゃあ、あの、僕も良いですか?
はい、なんなりと
あのですね、バ、バズーカ砲をぶっ放してみたいです!漫画とかで見るバカでかいやつを!......できますか?
もちろんですとも!
17 《山》 4 《古えの墳墓》 -土地(21)- 3 《スカークの探鉱者》 4 《ゴブリンの群衆追い》 4 《ゴブリン徴募兵》 4 《ゴブリンの女看守》 4 《ゴブリンの戦長》 2 《宝石の手の焼却者》 1 《ゴブリンの名手》 3 《ゴブリンの首謀者》 2 《包囲攻撃の司令官》 -クリーチャー(27)- |
4 《金属モックス》 4 《煮えたぎる歌》 4 《ゴブリンの放火砲》 -呪文(12)- |
1 《ゴブリンの模造品》 1 《ゴブリンの名手》 4 《ゴブリンのうすのろ》 2 《破壊的脈動》 4 《荒残》 3 《忘却石》 -サイドボード(15)- |
マジック界のバズーカ砲と言えば、《ゴブリンの放火砲》。このバズーカならどれだけぶっ放そうが銃刀法違反とかそういうものに引っかからず、爽快感のみを味わうことができる。いったいどれだけの世界中のバズーカオタクなプレイヤーたちの夢を現実のものとしたカードだろう。いや、彼らがバズーカオタクであろうがあるまいが、プロツアーという夢の舞台で輝きたいという願望は、このカードで実現可能なのであった。
《ゴブリンの放火砲》を使用したデッキはいくつかあるが、本日紹介するのは「ゴブヴァンテージ」、エクステンデッドで活躍したデッキの1つで、純粋なコンボデッキというよりはコンボを用いた勝ちルートもあるゴブリンデッキ、と認識する方が正しいだろう。
「ゴブヴァンテージ」は元々、《ゴブリンの徴募兵》と《ゴブリンの首謀者》を用いて強烈なアドバンテージを獲得して、猛烈な勢いで殴り殺すこともできるし、長期戦になっても強いという全く新しいゴブリンデッキとして登場。世界選手権2003で鮮烈なデビューを飾ったが、重要な1マナ圏である《ゴブリンの従僕》が禁止されたことでパワーダウン(この禁止があったからこそ『From the Vault:Exiled』に収録されたことを思えば、結果オーライ)。
しかしパワーダウンしたのも束の間、『ミラディン』にて《金属モックス》《煮えたぎる歌》というマナ加速を得て従僕に頼らずとも展開力はバッチリ、そして《ゴブリンの放火砲》というリーサル・ウェポンを獲得してデッキとしての完成度は大いに増すこととなった。プロツアー・ニューオーリンズ2003でも、赤単以外に様々な派生形を持ち込むプレイヤーの姿が見られた。
やはり強烈なのは《ゴブリン徴募兵》。ライブラリーから望む枚数のゴブリンカードを抜きだし、それらを望む順番でその上に置くという能力。僕はこのカードを『第6版』で初めて認識したのだが、当時は他のゴブリンたちが弱かったということもあって「なんじゃこら」なカードだと、侮っていた。月日は流れ、ゴブリンカードは強化され......それらを好きな順番で積み込むことが、こんなにも強いことなのかとこのデッキに思い知らされることとなった。《ゴブリンの群衆追い》というハードパンチャーをかためて、それらを《ゴブリンの首謀者》で一気に手札に加え、《ゴブリンの戦長》らでサポートし走らせる!《ゴブリンの女看守》というゴブリンサーチもあるため、いつ何時どんな角度からでも手札及び戦場をゴブリンまみれにできる、強力なビートダウンデッキである。
この《ゴブリンの徴募兵》はビートプランだけでなく、コンボプランも成立させるカギとなるゴブリンで、《ゴブリンの放火砲》がセットされた状態でライブラリーの上からズラリとゴブリンを積み重ねることで、「土地がめくれるとダメージが小さくなってしまう」という放火砲の弱点をカバー。ほぼ確実に20点以上のダメージを与えることができるようになっている。《金属モックス》《煮えたぎる歌》、そして《スカークの炭鉱者》というマナブーストがあれば、合計9マナ必要な放火砲設置→徴募兵→後に能力起動、という動きも容易い。
このデッキは、とにかく腕の差が出るデッキである。具体的には、《ゴブリン徴募兵》の積み方。例えば、このデッキを皆大好きエーツーさん(浅原晃)がプロツアー・ニューオーリンズ2003で使用した際の話。第9回戦にて赤単・放火砲型の「ゴブヴァンテージ」を使用するエーツーさんはゴブヴァンの派生形デッキ「食物連鎖ゴブリン」と対戦。この際に、対戦相手は2ターン目に《ゴブリンの徴募兵》を先出し。5枚のゴブリンをトップに持ってきて、向こう5ターンのドローの質を高める。これに対してエーツーさんは《ゴブリンの放火砲》をセット、引いてきた徴募兵とのコンボが次のターンに決まる、というところで対戦相手から飛んで来たのは《略奪》!
これにより放火砲を失ってしまったのだが、そこは我らが日本の鬼才。プラン変更、《ゴブリン徴募兵》を戦場に送り出し、なんとデッキの20数体のゴブリンすべてを抜き出してトップに積みだしたのだ。何があるかわからないからとりあえず5枚でアドバンテージを取りにいく、のではなく、どんな状況にでも対応できる順番でゴブリンを積むのが基本であるという(土地がある場合は)。このゴブリンをどの順番で積み重ねるのか、その順番は一朝一夕で身に着くものではないというのはおわかりいただけるだろう。エーツーさんは2・3ゲーム目でこの積み重ねの技術の差を見せつけ、マッチを勝利している。3ゲーム目は相手の脅威に完全に対処したうえでの放火砲起動48点ダメージ勝利という、美しい動きを見せつけている。
このプレイングの妙をカバレージで拝んで憧れていた人に「ジジイですやん!」とかツッコミ入れる日が来るとは夢にも思わんかったなぁ。
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