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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:トリックス(エクステンデッド)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:トリックス(エクステンデッド)
by 岩SHOW
「コンボ・ウィーク」と題してお届けする今週のデイリー・デッキ。もちろんのこと、歴代の強かった・人気だったデッキを紹介していくわけだが......個人的に、避けては通れないデッキが1つある。それが「トリックス」だ。今日はこのデッキについて語ってみよう。それにはまず、2つの強力な存在について、説明しておかねばならない。
かつて存在したフォーマット、エクステンデッド。拡張した・長期にわたる、というそのフォーマット名の通り、スタンダードよりも長い期間に発売されたセットが使用可能なフォーマットであった。今でいうレガシーやモダンに近いもので、往年の名カードたちが共演可能ということで人気が高かった。
僕がこのフォーマットに手を出したのは......高校1年生の頃。『テンペスト』ブロックおよび『ウルザ』ブロックの、マジック開始時の思い出のカードと、『インベイジョン』ブロック(その少し後に『オデッセイ』が参入)の現役のカードを合わせてデッキ構築ができる!しかも経験したことのない『アイスエイジ』ブロックと『ミラージュ』ブロックのカードにも触れることが可能とあっては、ワクワクが抑えられなかったものである。このフォーマットの更なる特徴としては、『リバイズド』までの基本セットに収録されていた10種類の2色土地・いわゆるデュアルランドが特別に使用可能だったことが挙げられる。スタンダード環境にはない強力な土地が使用可能である、というのがウリだったのだ。
当時、このフォーマットの最強デッキと言われていたのが「ネクロドネイト」だ。《Illusions of Grandeur》というエンチャントは、戦場に出た際に20点のライフを与えてくれる。これは累加アップキープという、維持するためのコストを要求してくる。毎ターン増加していくコストを払えなくなり、戦場を離れてしまうと......幻術は解け、かりそめの20点のライフは失われてしまうというカードだ。これを《寄付》で対戦相手に押し付けてしまうと......対戦相手はいずれこれを維持できなくなり、20点のライフを失ってゲームに敗北する、という寸法だ。
コンボパーツである《Illusions of Grandeur》で20点のライフを得られるのが強力で、これを貼ってから《寄付》やそれを通すための《Force of Will》を探しに行くために《ネクロポーテンス》に大量にライフを支払ってカードを引きまくるというのが......なんというか、もうズルかったのだ。2001年4月に《ネクロポーテンス》が禁止となり、この禍々しいまでに強力な存在は環境を去っていった。
もう1つの存在は......「ジャーマン・ジャガーノート」ことカイ・ブッディ/Kai Buddeだ。マジックプロツアー殿堂顕彰者である彼の戦歴は......ヨーロッパで開催されたグランプリで3連覇し、勢いのままに世界選手権1999(日本で開催され話題になったね)で優勝。そこからはプロツアー戦線の台風の目となって暴れまわり、2001年はチーム戦を含めて3度のプロツアー優勝という異次元の戦果を挙げてプレイヤー・オブ・ザ・イヤーに。そこから2002、2003年も連続で同賞を受賞し続け、プロツアー優勝回数は合計で7回に及んだ。マジックの歴史上最強の、怪物の中の怪物とも形容すべき伝説のプレイヤーである。当時マジック少年だった僕なんかにとっては、本当に雲の上の存在だ。
凶悪デッキ「ネクロドネイト」は《ネクロポーテンス》の禁止により終焉を迎えた。しかし、コンボパーツである《Illusions of Grandeur》と《寄付》は無傷で残っている。ネクロによる強烈なドローサポートなくしても、このコンボデッキは生き延びることができるのか? 答えはYes! それを証明して見せたのが、ブッディだ。マナ加速である《暗黒の儀式》や《Demonic Consultation》も禁止を受けたことにより、もはや黒と組むメリットがなくなったドネイトコンボは、青単・あるいは青赤で組まれるようになった。この青赤のドネイトデッキは「トリックス」と呼ばれる。ブッディをプロツアー・ニューオーリンズ2001王者へと導いたデッキがこれだ。
14 《島》 4 《Volcanic Island》 4 《シヴの浅瀬》 -土地(22)- -クリーチャー(0)- |
3 《火 // 氷》 2 《渦まく知識》 4 《蓄積した知識》 4 《対抗呪文》 4 《商人の巻物》 4 《サファイアの大メダル》 1 《衝動》 4 《寄付》 3 《直観》 1 《転覆》 4 《Illusions of Grandeur》 4 《Force of Will》 -呪文(38)- |
3 《変異種》 4 《紅蓮破》 2 《水流破》 3 《紅蓮地獄》 1 《冬眠》 2 《天才のひらめき》 -サイドボード(15)- |
基本戦術は既に述べた通り《Illusions of Grandeur》を《寄付》して勝つ。計7マナ必要なコンボを即時に決められるようにサポートするのは《サファイアの大メダル》だ。すべての青の呪文のコストを1マナ安くするので、5ターン目にドネイトコンボを決められるようになる。また、コンボパーツを集めるのには《直感》を用いる。これで直接サーチしても良いし、あるいは《蓄積した知識》を3枚サーチして、3枚ドローに化けさせてもオイシイ。黒とつるんでいた時よりは格は落ちるが、青単色でも十分にコンボサポートが可能だったのだ。
赤の役目は火力。メインの《火》とサイドの《紅蓮地獄》は軽量クリーチャーによるビートを阻害してコンボ成立までの時間を稼ぐ。また、《紅蓮破》も対青デッキには文字通り火を噴く鬼の1マナ確定カウンターとして機能すると同時に、《寄付》した《Illusions of Grandeur》を即座に破壊して相手にターンを渡さずに勝利することができて、特に同系相手には強力だ。
このデッキは、サイド後に全く別のデッキに化けることができる。《変異種》と《天才のひらめき》をコンボパーツと入れ替えて、青赤コントロールに変形だ。これで相手のエンチャント対策などは無効となり、クリーチャー除去を減らしてしまった相手は為すがままにどつかれることしかできない(まあ除去を残していても《変異種》を倒すことは無理だったりもするんだが)。
実際にこのプロツアーの決勝戦の最終ゲームでも、象・トークンに殴られ続けてもう後がない、ここで引くしかないという盤面で《変異種》を引き当て、ここから奇跡の逆転勝利。マジック史上でも有数のトップデッキであり、カイ・ブッディの勝負強さを満天下に知らしめてみせたのだった。以前にイベントで用いるために再現して回してみたが、まあなんと強いデッキなことよと再確認するのと同時に、あの「ネクロドネイト」はこれよりも上だったんだよなぁ......と冷や汗をかいた次第で。ちなみにデッキ名は、アメリカのシリアル食品と同じだ。この時代はやたらとシリアルを名前にしたデッキ名が多かった......他のデッキが気になる? それはまた今度ね!
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