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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゴーグル・ランプ(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ゴーグル・ランプ(スタンダード)
by 岩SHOW
16回目のプロツアーTOP8を記録したマジックの鉄人ジョン・フィンケル/Jon Finkel、軍団を結成して戦うマジックの新たな時代を切り開いたルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas、最もノリにのっている世界王者セス・マンフィールド/Seth Manfield、日本が誇る現実世界とオンラインの両方でプレイヤー・オブ・ザ・イヤー(※1)を獲得した八十岡翔太......プロツアー『イニストラードを覆う影』のTOP8は「僕たちが好きなマジックオールスター集合」感溢れるメンツとなった。
(※1:1年間のプロツアーシーズンにて、最も多くのプロポイントを獲得したプレイヤーに与えられる称号。プロポイントはグランプリやプロツアーで順位に応じて与えられる。これらプレミアイベントで勝ちまくりこの称号を得ると、世界選手権への参加権利を獲得できるのだ。)
このレジェンドたちの中で、あえて外しておいた人物を改めて紹介しよう。今日の主役はアメリカを代表するプレイヤーの一人、ブラッド・ネルソン/Brad Nelson。「FFfreaK」の名でMagic Onlineで活動、メキメキと頭角を現して、2010年には3つのグランプリでTOP8に入賞し(優勝を含む)、プロポイントを大量に獲得。この年のプレイヤー・オブ・ザ・イヤー間違いなし!と思われたが...フランスのギョーム・マティノン/Guillaume Matignonが世界選手権2010で優勝。これによりネルソンと同点となって......プレイヤー・オブ・ザ・イヤーが2人に?という史上初の事態に。この2人は翌年のプロツアーにて特別に設けられた「2010年プレイヤー・オブ・ザ・イヤー決定戦」にて対決。これに勝利して、その栄冠を勝ち取ったのがネルソンだ。
そのブラッド・ネルソンが、プロツアー『イニストラードを覆う影』にて自身3度目のプロツアーサンデー(プロツアー決勝ラウンド)へと駒を進めたデッキを今日は紹介しよう。「ゴーグル・ランプ」だ。
8 《森》 5 《山》 3 《燃えがらの林間地》 4 《獲物道》 4 《溺墓の寺院》 -土地(24)- 3 《世界を壊すもの》 1 《龍王アタルカ》 -クリーチャー(4)- |
4 《焦熱の衝動》 3 《マグマの洞察力》 3 《ウルヴェンワルド横断》 4 《苦しめる声》 4 《コジレックの帰還》 4 《ニッサの巡礼》 3 《巨人の陥落》 2 《面晶体の記録庫》 3 《紅蓮術師のゴーグル》 2 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文(32)- |
3 《棲み家の防御者》 3 《不屈の追跡者》 2 《ゴブリンの闇住まい》 1 《龍王アタルカ》 3 《引き裂く流弾》 2 《龍詞の咆哮》 1 《炎呼び、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
デッキ名にもなっている《紅蓮術師のゴーグル》がデッキの中核だ。このマナ加速用アーティファクトは、5マナ払ってやっと{R}が得られるという一見貧相なものだが......このマナを赤いインスタントかソーサリーのコストの支払いに充てると......もれなく、その呪文のコピーをプレゼント!というすごい能力を持ったゴーグルである。
これを、当コラムでも数度紹介した「赤緑ランプ」系のデッキに採用するというアプローチを取ったのがこの「ゴーグル・ランプ」。ランプというデッキは、大物ばかり・あるいはマナ加速ばかりが手札に集まってどうしようもない!という状況に陥り負けてしまうことがしばしば。大技を狙うには安定性を捨てねばならない、というのはわかっていてもどうにかしたいというのがプレイヤーの性。「安定感のあるランプ」という夢に向けて調整されたデッキこそ、この「ゴーグル・ランプ」。
序盤は《マグマの洞察力》《苦しめる声》でドローを進める。これらのソーサリーは手札を1枚捨てることをコストとして要求してくる。ここで喜んで《溺墓の寺院》を捨てよう。そして3ターン目には3マナ払ってこの土地を墓地から戦場に出す。手札の質が高まり、使えるマナも増える。素晴らしい!そのまま4ターン目に《紅蓮術師のゴーグル》設置から《マグマの洞察力》を唱えて、コピーと合わせて4枚ドロー!それだけ引けば、除去なりフィニッシャーなり何でも手札にやってくるだろう。
面白いカードとしては、除去兼フィニッシャーである《巨人の陥落》に注目!《ウルヴェンワルド横断》のような1マナ呪文で露払いしたら、怒濤でありったけのマナを注ぎ込んで唱えるべし!もちろんゴーグルでコピーを作って、狙え一撃必殺!いわゆるX火力がこうやってトーナメントシーンで火を噴いているのも久しぶりだ。
弱点としては、ドロー呪文を増やす=デッキ全体におけるフィニッシャーの減少が挙げられる。ゴーグル型でないランプは、過去の記事を読んでもらえるとわかるが、フィニッシャーがエルドラージ系含む大型クリーチャーと《炎呼び、チャンドラ》(前環境では《精霊龍、ウギン》)とで合計10~12枚ほどとられていた。マナが揃ってからはこれらの連打で圧殺する。しかしこの「ゴーグル・ランプ」のフィニッシャー枠は、わずかに7枚。
確かにドロー呪文でこれらにはアクセスできるが、問題はこれらを捌かれてしまった時。《無限の抹消》で《世界を壊すもの》をぶっこ抜かれるだけで、勝利はグンと遠のく。あまたの打ち消しと除去を有する「エスパー・ドラゴン」や尽きないアドバンテージで勝負する「過ぎ去った季節コントロール」には、数少ないフィニッシャーに照準を合わせられ完封されてしまうこともあるだろう。ゆえに大事なのが《巨人の陥落》か。これの唱えどころには注意したい。あんまり握りしめていると、察した相手から《強迫》が飛んでくるぞ!
安定を取ったゴーグル型か、これまでの全力フィニッシャー型か......あるいは両者のハイブリッド的なデッキも、グランプリ・東京2016で活躍したりするのだろうか? ランプマニアとしては今から楽しみなところである。
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