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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:黒緑アリストクラッツ(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:黒緑アリストクラッツ(スタンダード)

by 岩SHOW

 ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas、LSVという愛称で親しまれる殿堂顕彰者を尊敬するプレイヤーは彼の祖国アメリカのみならず、世界中に数え切れないほど存在する。世界最強集団ChannelFireballを率いて、数々の成功を残しそれまでのマジック観を大きく塗り替えてきた。

 そんな彼に対し抱く敬意は、個人的にはプロツアーというイベントを形成する小さな歯車の1つとなってから、以前にも増して強いものとなった。金土はプロプレイヤーとしてChannelFireballのチームシャツをまといフィーチャーマッチにて輝きを放ち、TOP8に残れずに迎えた日曜日にはスーツに袖を通して解説者としてイベントに華を添え、世界中の人々にマジックというゲームの面白さを伝えることに貢献している。ゲームして良し、喋って良しの完璧超人だ。

 ただ、プロツアー・サンディエゴ2010における破竹の16連勝などを目の当たりにした世代としては、解説者としての日曜日も嬉しいが、1試合でも多くその勇姿を目の当たりにしたい、というのが正直なところ。

 そんな世界中のファンの気持ちに応えるように、『ゲートウォッチの誓い』『イニストラードを覆う影』と2大会連続でプロツアーTOP8入りを果たしているLSV。今まさしく、新たなる全盛期を迎える彼がプロツアー『イニストラードを覆う影』で使用したデッキを紹介しよう。プロツアー開戦前にこのデッキの活躍を予想できた人は極少数だったのではないだろうか?「黒緑アリストクラッツ」だ!

Luis Scott-Vargas - 「黒緑アリストクラッツ」
プロツアー『イニストラードを覆う影』 7位 / スタンダード (2016年4月22~24日)[MO] [ARENA]
8 《
4 《
4 《ラノワールの荒原
4 《風切る泥沼
3 《ウェストヴェイルの修道院

-土地(23)-

4 《膨れ鞘
4 《壌土のドライアド
4 《薄暮見の徴募兵
4 《エルフの幻想家
4 《ズーラポートの殺し屋
4 《地下墓地の選別者
4 《ナントゥーコの鞘虫
2 《異端の癒し手、リリアナ

-クリーチャー(30)-
3 《謎の石の儀式
4 《集合した中隊

-呪文(7)-
1 《肉袋の匪賊
2 《ゲトの裏切り者、カリタス
4 《精神背信
4 《究極の価格
2 《不屈の追跡者
2 《ウルヴェンワルドの謎

-サイドボード(15)-

 そもそもアリストクラッツとは、貴種を意味する。《ファルケンラスの貴種》《カルテルの貴種》というマナを支払わずに自身のクリーチャーを生け贄に捧げるという共通の能力を持ったクリーチャーを用いて、《血の芸術家》《宿命の旅人》《スカースダグの高僧》らが持つクリーチャーが死亡した時に誘発する能力を能動的に用いてゲームを進めるデッキである。ここから転じて、クリーチャーをクリーチャーで食べるタイプのデッキを、貴種と名の付くクリーチャーがいる・いないに関わらず「アリストクラッツ」というアーキタイプ名で呼ぶようになった。

 このデッキでは《ナントゥーコの鞘虫》が生け贄を生み出す役目を担っているので、このカード名から取って「黒緑ハスク」と呼んでも良いかもしれない。これでクリーチャーをパクパク食べて、その横に《ズーラポートの殺し屋》がいれば相手のライフがモリモリと減少する。これで20点削りきることを目標とした、クリーチャー・コンボデッキである。

 《膨れ鞘》は死亡してもトークンを生み出し、《エルフの幻想家》は戦場に出た時点で1枚ドロー、《地下墓地の選別者》もトークンを生み出し頭数を増やし他のクリーチャーが死亡すれば占術ももたらす。《異端の癒し手、リリアナ》も他のクリーチャーが死亡すればゾンビ・トークンを呼びつつ、プレインズウォーカーに変身してその能力で墓地のクリーチャーを再利用。

 これらをズラリと並べるために、《集合した中隊》を用いているが......他にもう一つ。爆発力を生み出す《謎の石の儀式》が採用されているのが特徴だ。

 盤面に展開したクリーチャーでマナを出し、さらなる展開に繋げる。クリーチャーから出たマナで《集合した中隊》を唱えたり、あるいは......

 《ウェストヴェイルの修道院》の起動コストであるマナを払っても良いね。5マナと重いコストも、これで軽々運用できるというもの。5体ものクリーチャーを生け贄に捧げるということで、上記のカードの能力も誘発しまくり。その上で速攻・飛行・破壊不能・絆魂を持った9/7を呼び出せるのだから恐ろしい。実際にフィーチャーマッチでも、LSVは《ズーラポートの殺し屋》2体がいる状況で《不敬の皇子、オーメンダール》を呼び出しワンショット19点で見事な勝利を収めていた。この爆発的なコンボを秘めつつも、これらのクリーチャーでピチピチ殴って勝ちも狙えるのがこのデッキの強みである。

 さて、このデッキと対峙した場合、どうすれば良いか? 現環境でベストな解答は《ゲトの裏切り者、カリタス》だ。墓地にクリーチャーが落ちることを防ぎつつ、強烈な打点で勝利に迎える上にライフも回復してしまうという強力なクリーチャーだ。これが戦場に出てしまうとどうしようもないので、サイドボードに《究極の価格》が4枚しっかり取られている。このカードをサイドから減らすというのはなかなか勇気がいるんじゃないかな? グランプリ・東京2016にて持ち込むことを検討している人はご用心!

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