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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジェスカイ・コントロール(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:ジェスカイ・コントロール(スタンダード)
by 岩SHOW
プロツアーとは物語の舞台。プロツアー『イニストラードを覆う影』も、ジョン・フィンケル/Jon Finkelは他の追随を許さないプロツアーTOP8入賞回数記録を更新し、チームを解散してそれぞれの道を歩んだブラッド・ネルソン/Brad Nelson、スティーヴ・ルービン/Steve Rubin、セス・マンフィールド/Seth ManfieldがTOP8にて再会しお互いを祝福しあったり(詳しくはコチラ)、そのスティーヴ・ルービンが彼の6歳から続くマジックキャリアにおける最高の瞬間を勝ち取ったり......物語性に満ちたイベントであった。
話は変わって。僕はスターウォーズ愛好家である。今回のプロツアーでも、行きの飛行機でx回目となるエピソード7を鑑賞。個人的に最も好きなのはエピソード4だ。酒場のシーンでちらりと姿を見せるだけで、本筋とは何の絡みもない様々な宇宙人を観ているだけでワクワクする。映画の中では出演時間がそれこそ数秒だったり、その場にはいたがカットの関係で本編映像に出てくることすらない面々。彼らにもそれぞれ名前があり、しっかりと背景設定が練られている。物語には出てこなくても、その世界を構成する要素としては必要不可欠な存在だ。
話は戻って。プロツアーも同じである、と個人的には思う。このイベントに参加するため、世界各地から400名近いプレイヤーが一か所に集う。それぞれの努力・情熱があり、主役となれなかった......今回で言えば370名のプレイヤーたちがいたからこそ、勝ち上がった者たちの物語は輝かしいものとなる。
そんな、プロツアーの表舞台には出てこずともそこに確かに存在したプレイヤーを探すため、イベント終了時には構築ラウンドの成績別にまとめられたデッキリストを見るのが好きだ。例えば今回はマッチポイント24点以上、すなわち10戦中8勝以上の成績を残したデッキが実に27個もある。これらの中には、フィーチャーマッチに選出されることなくトーナメントを終えたものも少なくない。優秀な成績を残したのにも関わらず大々的に取り上げられなかったデッキ、ロブ・パイザノ/Rob Pisanoが8勝2敗の優秀な成績を収めた「ジェスカイ・コントロール」に光を当てたい。
2 《島》 2 《平地》 4 《山》 4 《大草原の川》 4 《シヴの浅瀬》 4 《さまよう噴気孔》 3 《鋭い突端》 1 《戦場の鍛冶場》 3 《進化する未開地》 -土地(27)- 1 《竜使いののけ者》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 -クリーチャー(5)- |
1 《焦熱の衝動》 1 《引き裂く流弾》 3 《アヴァシンの裁き》 3 《収まらぬ思い》 2 《否認》 1 《石の宣告》 3 《癇しゃく》 3 《光輝の炎》 4 《オジュタイの命令》 2 《罪人への急襲》 4 《先駆ける者、ナヒリ》 2 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文(29)- |
1 《竜使いののけ者》 2 《払拭》 2 《引き裂く流弾》 2 《石の宣告》 2 《否認》 4 《熱病の幻視》 1 《コジレックの帰還》 1 《罪人への急襲》 -サイドボード(15)- |
いや〜ジェスカイですよジェスカイ。ローテーションにより多数の多色土地を失い、《カマキリの乗り手》のような3色にすることがメリットとなる中核カードも退場して、もう存在しなくなるデッキタイプだと思われていたが......プレイヤーの工夫次第で、どんなデッキでも形にできるものなんだなぁ。
コントロールの名の通り、デッキには除去呪文と打ち消しが複数搭載されている。いるのだが......どちらかと言うと、これは「ジェスカイ・マッドネス」と呼んでも良いのではないだろうか。この環境が始まる前に誰もが思い描いた、《ヴリンの神童、ジェイス》の能力で捨てた《癇しゃく》をマッドネスで唱えるという動き。アドバンテージを稼ぎながらわずか1マナで3点ダメージを与えることができ、一見強力に見えたのだが......じゃあ何のデッキで使うのか?という問いに答えを出せるプレイヤーは多くなかった。
そこでRob Pisanoが出したアンサーが、《アヴァシンの裁き》というマッドネス呪文と《先駆ける者、ナヒリ》というカードを捨てる手段の増量だ。実際にこの2種類のマッドネス除去は軽いコストでしっかりとクリーチャーを除去することが可能だ。ジェイスもナヒリも手札を入れ替える能力だが、これらのマッドネス呪文と噛み合うとただでカードを引ける能力になるので実に美味しい。《炎呼び、チャンドラ》も[-X]能力だけでなく[0]能力でこれらのカードをまとめて捨てることでクリーチャーを複数除去することが可能だ。
《先駆ける者、ナヒリ》はこの手札入れ替え以外にも、複数回使える除去としても機能する。そもそも一度[+2]能力を起動すれば、忠誠度は6となりなかなかに硬い。マッドネスと合わせずとも、不要なカードを捨ててカードを1枚引くというアクションを恒久的に行えるのは魅力的だ。奥義[-8]能力でジェイスをサーチしてきて速攻を与え、即プレインズウォーカーに変身して墓地の呪文を使用する、なんてスーパープレイを決めるのも、そう難しいことではない。
除去コントロールの天敵である《大天使アヴァシン》対策なのだろうか、《オジュタイの命令》が4枚取られているのも特徴的。これで序盤に使い潰したジェイスや、捨てていた《竜使いののけ者》を回収しつつアヴァシンを弾けば、気持ち良いこと間違いなし。破壊不能を嘲笑う追放除去である《罪人への急襲》も、フィニッシャーを兼ねられるのでなかなか面白そうだ。
個人的には《龍王オジュタイ》や、色は合わないが《ゲトの裏切り者、カリタス》のような絶対的なフィニッシャーがいれば......もっと使いやすいデッキになったりするのではないだろうかと思ったりもするが、《さまよう噴気孔》《鋭い突端》のクリーチャー化する土地コンビが7枚採用されているので、見た目よりもしっかりとゲームを決められるデッキになっているのかもしれない。『トーメント』の頃に《強制》《マーフォークの物あさり》で《癇しゃく》を投げつけていた世代としては、今後活躍するのか否か、皆にも注目してほしいデッキだ。
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