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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:4色ラリー(スタンダード)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:4色ラリー(スタンダード)
by 岩SHOW
「Graveyard Week」と題して、歴代の墓地を利用する名デッキを紹介する今週のデイリー・デッキ。今日はそれらの血脈の最新作、「先祖の結集」を紹介しよう。以下、国内で最も広く使われている呼び名である「4色ラリー」と表記する。
《先祖の結集》が『運命再編』にて登場した時は、正直なところこのカードの使い方がよくわからなかった。墓地から戦場に戻るクリーチャーは次の自分のアップキープに追放されてしまうので、速攻持ちでない限り攻撃もできず、またXにある程度のマナを支払わなければ小物しか戦場に戻せない。これは、どちらかと言えばフレイバー重視の1枚(※1)だなと、そう思っていた。タルキールのアブザン家は、家族の霊と強い繋がりを持ち、そこに属する者達の魔術も祖先の霊への崇拝によって成り立っている。こうしたフレイバーを味わってほしいのだろうなぁと思い込んでいた。
(※1:ゲームにおける役割よりも、背景設定を再現することを重視して作られるカードも少なくはない。命を奪わないという信念を持った《銀のゴーレム、カーン》がクリーチャーに触れるとパワー0になる、など。こういったまず設定ありきでカードを作ることを「トップダウン・デザイン」と呼ぶ。)
世のデッキビルダーたちの発想は恐ろしいものだ。速攻がなければ《モーギスの匪賊》で与えれば良いし、《鍛冶の神、パーフォロス》で焼き尽くせば良い。《サテュロスの道探し》などの墓地を肥やす呪文を連打して、大量のクリーチャーを《先祖の結集》で釣り上げてこれらのカードで大ダメージ!というコンボが開発される。「アブザン・ラリー」「5色ラリー」といったデッキが作られるようになり、各種トーナメントで結果も残し始める。特に《ナントゥーコの鞘虫》《ヴリンの神童、ジェイス》といったコンボ関係なしでも強いカードを『マジック・オリジン』で獲得してからは、その数を増した。と言っても、その時は流行りのデッキの3歩ほど後ろにいたのであるが。
このデッキタイプが化けたのは、『戦乱のゼンディカー』で《地下墓地の選別者》《ズーラポートの殺し屋》を得てから。特に《ズーラポートの殺し屋》は、《ナントゥーコの鞘虫》ですべてのクリーチャーを生け贄に→《先祖の結集》で釣り上げてもう一度生け贄に、とやっているだけで簡単に対戦相手のライフをゼロにしてしまえる強力無比なコンボパーツである。
これらを獲得したことにより《先祖の結集》もX=3で問題なくなり、コンボの精度が格段に上がった。なんだったら、《先祖の結集》を撃たずとも盤面だけで勝っているということも多い。約1年間、練られ続けたこのデッキは、『ゲートウォッチの誓い』参入後、遂にスタンダード最強デッキの座につく。あの「世界最強の男」オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldがグランプリ・ヒューストン2016で使用し優勝したのも、このデッキが環境最強であるというイメージに拍車をかけているだろう。それではご覧いただこう、「4色ラリー」の姿を。
1 《平地》 1 《島》 1 《沼》 1 《森》 1 《大草原の川》 2 《窪み渓谷》 2 《梢の眺望》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《進化する未開地》 -土地(24)- 2 《シディシの信者》 4 《エルフの幻想家》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《ズーラポートの殺し屋》 2 《永代巡礼者、アイリ》 4 《地下墓地の選別者》 4 《ナントゥーコの鞘虫》 4 《反射魔道士》 -クリーチャー(28)- |
4 《先祖の結集》 4 《集合した中隊》 -呪文(8)- |
2 《不気味な腸卜師》 1 《無慈悲な処刑人》 1 《苦痛の公使》 4 《払拭》 2 《強迫》 2 《精神背信》 3 《残忍な切断》 -サイドボード(15)- |
赤以外の4色から良いとこ取りをした「4色ラリー」は、日本国内で現スタンダード環境にて開催された最後のビッグトーナメント「BIG MAGIC Open Standard Vol.6」にて前評判をそのままに優勝をかっさらった。デッキの方針は前述の通りで、《ヴリンの神童、ジェイス》で適当にカードを引きながら墓地を肥やし、《集合した中隊》などで軽量クリーチャーを展開。それらと《ナントゥーコの鞘虫》《永代巡礼者、アイリ》の生け贄エンジンとのシナジーを活かし、最後は《ズーラポートの殺し屋》でライフを吸い尽くす。
このデッキは『ゲートウォッチの誓い』で前述の《永代巡礼者、アイリ》と《反射魔道士》を手に入れたことでデッキが大幅に進化した。《反射魔道士》《シディシの信者》のバウンス能力持ちで相手のブロッカーを排除し、強引に《ナントゥーコの鞘虫》の特大パンチをねじ込むというプランが狙いやすくなり、墓地への依存度が下がったのだ。殴って良し、コンボでも良しと強いデッキの条件を満たすようになったのだ。
この「4色ラリー」のサイドボードには、その殴りプランをより強化するカードが採用されることが多い。《払拭》などのカウンターや、《先頭に立つもの、アナフェンザ》《ゲトの裏切り者、カリタス》ら墓地対策をが増えて《集合した中隊》《先祖の結集》が機能しづらいサイド後は、《アブザンの隆盛》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》でクリーチャーの群れを強化して殴るプランが強力なのだ。同じくBIG MAGIC Open Standard Vol.6でTOP8に入った「日本最強の男」渡辺雄也が使用した同デッキのサイドには、このギデオンに加えて《龍王オジュタイ》までが採用されていたほどで、このあたりの切り替えができるのもデッキの強みなのだろう。
ただ、優勝したこの田村亮のサイドボードにはそれらのサブプランが用意されておらず、《払拭》《強迫》《精神背信》《残忍な切断》と、相手の対策カードへの対策カードによって構成されている。メインデッキの強力なコンセプトを貫くという意志を感じるものだ。メインに取られることの多い《不気味な腸卜師》がサイドに2枚採用されているのも特徴的だ。
デッキの中核である《先祖の結集》が4月のローテーションでスタンダードを去るため、今後見ることはもうないデッキとなってしまう。しかしそれ以外のデッキパーツの多くは残り続けるので、『イニストラードを覆う影』のカードで代理となるものがあれば、あるいはまったく違う角度から相性が良いものが見つかれば、クリーチャー自体が強いこのデッキタイプの遺志を継ぐものが誕生するかもしれない。また僕が「これはフレイバー重視やなぁ」と思ったカードが予想を裏切ってくれることを願って......早く新スタンダードが遊びたい!
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