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市川ユウキの「プロツアー参戦記」
プロツアー・ファイレクシア 前編
こんにちは!市川です。
今回もプロツアーに向けての調整記/大会レポートを綴っていこうと思います。
前編では2月17~19日に行われました「プロツアー・ファイレクシア」に向けての調整記をお送りします。よろしくお願いします。
0.近況と目標
「第28回マジック世界選手権」では5勝9敗と箸にも棒にもかからず。また、その後出場した「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」でも7勝5敗と成功とは言い難い成績。
このままではプロツアーからの退場を余儀なくされる状態、ざっくりいうとピンチです。
「プロツアーの権利はプロツアーで獲得するのが最も効率が良い」というのは昔からまことしやかに語られる話ですが、実際にそうだと思います。プロツアーに出るための努力と、プロツアーで勝つための努力がイコールですからね。
現在の制度では店舗予選→地域予選→プロツアーという三段ロケット方式が採用されています。そのプロツアーへの道のりは今までのマジック史上で最も長く、「予選が終わったらどうなる?知らんのか予選が始まる」状態を横目で見ていると、プロツアーで権利を獲得する……プロツアーをチェインすることはプロシーンにおいて重要なことに思えます。
また世界選手権の出場条件も忘れてはならない項目です。
次回の世界選手権は128人が出場する、前回と比較すると大規模なトーナメントになるため様々な出場条件があるのですが、
- 2022-2023シーズン「プロツアー3」における獲得精算マッチ・ポイント上位32名および同率32位のプレイヤー全員(すでに第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権へ招待されている者は除く)。
この条件に注目です。
- 2022-2023シーズン内に行われる3つのプロツアーのいずれかにおいて、12勝4敗以上(あるいはトップ8入賞)の成績を収めたプレイヤー
プロツアーでトップ8に入ったプレイヤーは違うスロットで世界選手権に出場できる関係上、マッチ・ポイント上位32名に入るプレイヤーは、トップ8に入っていない、実質的に今シーズンのプロツアー全て(計3回)に参加したプレイヤーの中で争われると考えました。
2回出場でトップ8に入らない程度の成績だと、11勝+11勝くらいが最大値ですからね。3回出たプレイヤーは8勝平均でそれを上回ることができます。
つまるところ「プロツアー3」における獲得精算マッチ・ポイント上位32名という世界選手権の招待条件は「プロツアー1」であるこの「プロツアー・ファイレクシア」に出場したプレイヤーのみで実質的に争っているということです。
さらにさらに、今シーズンのプロツアーは以前のプロツアーと比べて参加人数が少なくなっています。以前は500人前後の参加者でしたが、今回は250人前後と約半分しか招待されていません。
「プロツアー・ファイレクシア」は9勝7敗以上で次回のプロツアーに招待されます。(編注:一部誤った情報がございましたので削除いたしました。)
感覚的には、9勝7敗で3回目のプロツアーに出場しているだけで上位32名に入っている可能性すらあります。最後のプロツアーで精算マッチ・ポイントの上乗せ=4勝4敗以上で初日を抜けられたら当確が出そうなレベルです。
そのため、シーズン一発目であるこの「プロツアー・ファイレクシア」の成績が世界選手権に出場するにあたって非常に重要なファクターであることがわかってきます。もちろんトップ8に入ってこんな皮算用をせずに世界選手権の権利を獲得することが一番良いんですが、全員がそうもいきませんからね。
前回の世界選手権に出場し、世界選手権の優勝を人生の目標と決めた筆者としては石に齧りついても次回の世界選手権に出場したいところです。
そのため、今回の最低目標は9勝7敗で次のプロツアーにチェインすることにしました。
1.フォーマットと調整メンバー
今回は久方ぶりに帰って来たプロツアー!
ということで旧来の「ドラフト3回戦+構築5回戦×2日」のシステムに戻ります。最近は構築フォーマット×2が多かったので逆に新鮮ですね。
構築の方がラウンド数は多いのですが、ドラフトラウンドはヤバいデッキを組むと誤魔化せることもなく一瞬で0-3することもあり、意外とラウンド数の少ないドラフトの方のスキルが重要だったりします。構築で手堅いデッキを持ち込んで0-10するようなことは殆ど起きませんからね。ただ、ドラフトで0-6することは十分にあり得るのです。
- 井川 良彦
- 市川 ユウキ
- 加茂 里樹
- 熊谷 陸
- 小泉 祐真
- 河野 融
- 高橋 優太
- 中村 修平
- 村栄 龍司
- 森山 真秀
- 矢田 和樹
調整メンバーは以上の11名。(敬称略)
私のように世界選手権出場で権利を有している者、「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」の好成績で権利を獲得した者、マジック・プロツアー殿堂の権利を行使して出場している者など権利の獲得の仕方は様々ですが、私的には見知った顔ぶれでの調整といった印象。
日本人の参加者が30名程度であったことを考えると、中々に大所帯だったのではないでしょうか。
今回、日本では新セットである『ファイレクシア:完全なる統一』のテーブルトップでの発売日がMagic Online/MTGアリーナのデジタルより早く、先にテーブルトップで新セットをプレイすることが出来ました。
そのため2月4日と5日の土日は集まってテーブルトップでドラフトの練習。デジタルでリリースされる7日から今回の構築フォーマットであるパイオニアの練習を本格的に行うスケジュールになりました。
2.パイオニア
ドラフト環境についての考察はいつもの通り後編で行うこととして、まずはパイオニアからです。
パイオニア環境で最も大きなトピックは新セット『ファイレクシア:完全なる統一』の発売……よりも禁止/解禁の改訂が行われなかったことです。パイオニア以下のフォーマットは使えるカードプールの多さから、新セット発売で起きる影響は基本的には微々たるものとなります。
パイオニアよりもカードプールの広いフォーマットではカードの禁止/解禁でアーキタイプ変遷の流動性を高めたり、「モダンホライゾン」シリーズのようなスタンダードを経由しない強力な特殊セットで環境を動かしたりします。パイオニアには今のところ「モダンホライゾン」のような特殊セットは存在しないので、禁止/解禁が環境に最も大きな影響をもたらしていることは間違いないでしょう。
また『ファイレクシア:完全なる統一』のカードリストを見る限りあまり環境が動かなそうなことを考慮すると、禁止/解禁改訂は間違いなくあるだろうなと考えていました。
そのため、前回の「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」から殆ど環境は動かないことが前提で、その中でまた改めてデッキを精査する作業に入ることになりました。
ラクドス・ミッドレンジ
4 《血の墓所》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 2 《ロークスワイン城》 4 《荒廃踏みの小道》 2 《目玉の暴君の住処》 4 《憑依された峰》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 4 《沼》 3 《黒割れの崖》 -土地(25)- 4 《砕骨の巨人》 2 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 2 《墓地の侵入者》 4 《税血の収穫者》 3 《黙示録、シェオルドレッド》 -クリーチャー(15)- |
2 《勢団の銀行破り》 4 《鏡割りの寓話》 4 《致命的な一押し》 3 《パワー・ワード・キル》 1 《ヴェールのリリアナ》 4 《思考囲い》 2 《戦慄掘り》 -呪文(20)- |
2 《真髄の針》 3 《強迫》 2 《煤の儀式》 1 《害悪な掌握》 3 《絶滅の契機》 1 《削剥》 2 《勢団の銀行破り》 1 《コラガンの命令》 -サイドボード(15)- |
前環境覇者のラクドス・ミッドレンジ。現環境も健在ですが、逆に健在過ぎて良くない傾向にありました。
一番気になるのはその構成。
ミラーマッチを見据えてか《勢団の銀行破り》がメインボードから2枚、更にサイドに追加の2枚が用意されています。また緑単信心の《老樹林のトロール》やイゼット・フェニックスの《弧光のフェニックス》に効果的な《苦難の影》はスロットの関係から採用されていません。
このように、ミラーマッチが多くなりすぎて構成が歪み出すのは環境トップのデッキの常ですが、経験則的にそのような構築の変化が訪れているデッキは環境の圧倒的トップである以外はバッドな変化だと考えています。
ラクドスをビートする、ラクドスキラーのようなデッキはそれなりに存在していて、ラクドス・ミッドレンジが圧倒的な環境とは考えられない以上、同じ土俵には立ちたくありません。ただその一方、ラクドス・ミッドレンジが環境のトップであるという認識も変わりません。
そのため、「ラクドス・ミッドレンジを使うことはないだろうけれども、環境のトップであろうラクドス・ミッドレンジに不利なデッキも使いたくない」というのが自分のデッキ選択のスタート地点でした。
グルール機体
4 《カープルーザンの森》 4 《踏み鳴らされる地》 4 《変わり谷》 4 《銅線の地溝》 4 《岩山被りの小道》 2 《ハイドラの巣》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《森》 -土地(24)- 4 《ラノワールのエルフ》 4 《砕骨の巨人》 1 《恋煩いの野獣》 4 《エルフの神秘家》 4 《無謀な嵐探し》 2 《迷宮壊し、ミグロズ》 -クリーチャー(19)- |
3 《領事の旗艦、スカイソブリン》 4 《エシカの戦車》 2 《鉱炉と前線の剣》 2 《アクロス戦争》 3 《免れ得ぬ破滅、ルーカ》 3 《抹消する稲妻》 -呪文(17)- |
4 《引き裂く流弾》 1 《恋煩いの野獣》 2 《アクロス戦争》 1 《運命の神、クローティス》 1 《湧き出る源、ジェガンサ》 2 《未認可霊柩車》 2 《漁る軟泥》 2 《減衰球》 -サイドボード(15)- |
『ファイレクシア:完全なる統一』でわかりやすく強化されたデッキの一つがグルール機体です。《銅線の地溝》は、序盤から動く2色アグロでありながらも《変わり谷》を採用したいワガマママナベースにおいて最も求められていた2色土地であります。
その他、《恋煩いの野獣》と比べて《ラノワールのエルフ》から3ターン目に出して嬉しい《迷宮壊し、ミグロズ》、「なんで《湧き出る源、ジェガンサ》採用できるのランキング」トップの《免れ得ぬ破滅、ルーカ》など、アップデート要素も多数あり。
前環境からラクドス・ミッドレンジに強く、ラクドスキラーとしても有名だったグルール機体が強化されたとなれば話題沸騰です。環境トップのラクドス、それに強いグルール、この2つはパッと見で人気のアーキタイプになりそうで、それらに有利なデッキが良いなとぼんやりと考えていました。
セレズニア天使
4 《低木林地》 4 《寺院の庭》 4 《剃刀境の茂み》 2 《ニクスの祭殿、ニクソス》 4 《枝重なる小道》 1 《平地》 -土地(19)- 4 《ラノワールのエルフ》 4 《エルフの神秘家》 4 《輝かしい天使》 4 《翼の司教》 4 《若年の戦乙女》 4 《正義の戦乙女》 4 《希望の源、ジアーダ》 -クリーチャー(28)- |
4 《集合した中隊》 4 《エメリアの呼び声》 1 《変わり樹の共生》 4 《カイラの再建》 -呪文(13)- |
1 《群れの力、アジャニ》 2 《耳の痛い静寂》 4 《スカイクレイブの亡霊》 1 《傑士の神、レーデイン》 1 《ポータブル・ホール》 2 《粗暴な聖戦士》 2 《勢団の銀行破り》 2 《真髄の針》 -サイドボード(15)- |
2マナのクリーチャーからはじまるデッキ故に《剃刀境の茂み》でマナベースが強化されていないと評判のセレズニア天使でしたが、「だったら《ラノワールのエルフ》を入れれば良いじゃない」と言うが如くのリストにチームメイト一同感銘。
元々2マナドロップからはじまるもっさりofもっさりデッキという印象でしたが、《ラノワールのエルフ》などのマナクリーチャーからはじまれば話は変わってきます。盤面を取り返す、デッキの花形カードである《集合した中隊》や《カイラの再建》が1ターン早まる点も見逃せません。
また、それらと一緒に採用されている《エメリアの呼び声》も秀逸なカードです。
マナクリーチャーを採用すればマナフラッドは必至ですが、その部分をマナベースでカバーしています。出てくるトークンも天使で、セレズニア天使に非常にマッチしていると言えるでしょう。
後半にトップデッキして嬉しいカードが《集合した中隊》、《カイラの再建》、《エメリアの呼び声》と12枚に増え、リソースを絞りあった後によく発生するラクドス・ミッドレンジとのトップデッキ対決もドンと来い、といった面構えに。
前環境からラクドス・ミッドレンジとグルール機体に有利と評判のセレズニア天使でしたが、その出足の遅さから緑単信心や、ロータス・コンボなどには不利が付きます。それらに対抗し得るスピード感を獲得したセレズニア天使は私の思惑にマッチしたデッキと言えました。
セレズニア・オーラ
上記のような流れで順調にチーム内で有力デッキが出てきたので、私は安心して他のデッキをプレイしていました。
1 《耐え抜くもの、母聖樹》 4 《枝重なる小道》 4 《低木林地》 1 《秘密の中庭》 1 《皇国の地、永岩城》 1 《平地》 4 《剃刀境の茂み》 4 《寺院の庭》 -土地(20)- 4 《離反ダニ、スクレルヴ》 4 《林間隠れの斥候》 4 《照光の巨匠》 4 《皇の声、軽脚》 -クリーチャー(16)- |
1 《結束のカルトーシュ》 4 《天上の鎧》 1 《まばゆい神盾》 1 《グリフの加護》 4 《歩哨の目》 1 《ケイヤ式幽体化》 4 《無鉄砲》 1 《第六感》 4 《きらきらするすべて》 1 《持続のルーン》 1 《最上位権限》 1 《戦茨の恩恵》 -呪文(24)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-相棒(1)- 4 《復活の声》 4 《ポータブル・ホール》 2 《安らかなる眠り》 4 《成長の季節》 -サイドボード(14)- |
「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」でも使用したセレズニア・オーラ。このデッキはご多分に漏れず《剃刀境の茂み》で強化されたアーキタイプです。その他に《離反ダニ、スクレルヴ》も大きなトピックでしょう。
《無私の救助犬》や《命の恵みのアルセイド》では追放除去に弱かったり、起動にマナが掛かったりと帯に短し襷に長しだった1マナの妨害クリーチャーのスロットが確保できます。
ただ、やはりラクドス・ミッドレンジに不利な点は前環境と変わりません。
その他《林間隠れの斥候》と《離反ダニ、スクレルヴ》が組み合わさると特に何も起きない=緑は必要なのか?などを考えているとこのデッキを使う意味を感じられなくなり、こちらの調整は終了しました。
ラクドス・サクリファイス
1 《沼》 4 《血の墓所》 2 《バグベアの居住地》 2 《目玉の暴君の住処》 4 《硫黄泉》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《荒廃踏みの小道》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 4 《黒割れの崖》 -土地(22)- 4 《税血の収穫者》 4 《大釜の使い魔》 4 《波乱の悪魔》 4 《溌剌としたヒューズリング》 -クリーチャー(16)- |
4 《初子さらい》 4 《命取りの論争》 4 《鏡割りの寓話》 4 《致命的な一押し》 2 《踊り食い》 4 《魔女のかまど》 -呪文(22)- |
1 《食肉鉤虐殺事件》 2 《減衰球》 2 《削剥》 2 《絶望招来》 2 《敵対するもの、オブ・ニクシリス》 4 《思考囲い》 2 《真っ白》 -サイドボード(15)- |
《溌剌としたヒューズリング》はパイオニアの《貪欲なるリス》なのではないか?
ラクドス・ミッドレンジなどには有利なラクドス・サクリファイスですから、その打点の低さを補える《溌剌としたヒューズリング》を採用すれば、苦手なマッチアップを克服できるかも!
……となるも、感触は良くなく。
序盤に《溌剌としたヒューズリング》をプレイして打点が急速に上がる手札は少なく、噛み合いの悪いデッキになってしまいました。また、プレイテストしてみると、ラクドス・ミッドレンジに対してものすごく有利といった印象でもなく、ラクドス・ミッドレンジに弱い《溌剌としたヒューズリング》を採用するとその相性差はより縮まってしまいます。
ラクドス・ミッドレンジに勝とうとするならば、《不運な目撃者》のようなリソース対決で秀でられるようなカードが必要ですね。
白単ヨーリオン
2 《アーデンベイル城》 2 《フロスト・ドラゴンの洞窟》 4 《廃墟の地》 4 《ニクスの祭殿、ニクソス》 2 《皇国の地、永岩城》 16 《平地》 -土地(30)- 4 《白蘭の騎士》 1 《魅力的な王子》 4 《機械の母、エリシュ・ノーン》 2 《高名な弁護士、トミク》 4 《秘儀術師のフクロウ》 4 《スカイクレイブの亡霊》 4 《神憑く相棒》 4 《スレイベンの検査官》 -クリーチャー(27)- |
4 《エルズペス、死に打ち勝つ》 4 《大いなる創造者、カーン》 4 《骨化》 4 《ポータブル・ホール》 3 《永遠の放浪者》 4 《エメリアの呼び声》 -呪文(23)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 1 《別館の歩哨》 1 《ダークスティールの城塞》 1 《激変の機械巨人》 1 《真髄の針》 1 《減衰球》 1 《王神の立像》 1 《街並みの地ならし屋》 1 《漸増爆弾》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《魂なき看守》 1 《トーモッドの墓所》 1 《石の脳》 1 《マイトストーンとウィークストーン》 1 《ファイレクシアへの門》 -サイドボード(14)- |
《機械の母、エリシュ・ノーン》の加入によって、にわかに盛り上がっている白単ヨーリオンにも着手。
《機械の母、エリシュ・ノーン》+《骨化》などの展開はものすごいですが、《白蘭の騎士》などの弱いカードが大量に入っていて、カードが足りていない感がすごいです。
もちろんカウンターや手札破壊をもっていないもっさりソーサリータイミングデッキなので、ロータス・コンボやアゾリウス・コントロールなどに明確に不利で、それならエニグマ・ファイアーズなどで良いだろと、ルール的に《エルズペス、死に打ち勝つ》の誘発が《機械の母、エリシュ・ノーン》でダブルにならないことを確認しながら思いました。
シミック腐敗僧
4 《樹皮路の小道》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 4 《植物の聖域》 4 《繁殖池》 1 《森》 1 《島》 1 《天上都市、大田原》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 -土地(20)- 4 《敬慕される腐敗僧》 4 《嵐追いのドレイク》 4 《陽気な呪文盗み、アイヴィー》 -クリーチャー(12)- |
4 《孵化 // 不和》 4 《空間の擦り抜け》 4 《突っ走り》 4 《タミヨウの保管》 4 《見えざる糸》 4 《渦巻く霧の行進》 4 《芽吹く生命の行進》 -呪文(28)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-相棒(1)- 3 《終焉よ来たれ》 3 《形成師の聖域》 3 《ふくれた汚染者》 3 《真髄の針》 2 《未認可霊柩車》 -サイドボード(14)- |
《敬慕される腐敗僧》が8枚あればデッキだと思いました。つまりデッキではないです。
ラクドス独創力
4 《血の墓所》 4 《燻る湿地》 4 《泥濘の峡谷》 4 《寓話の小道》 4 《ドワーフの鉱山》 6 《山》 1 《沼》 -土地(27)- 3 《偉大なる統一者、アトラクサ》 -クリーチャー(3)- |
4 《思考囲い》 4 《致命的な一押し》 3 《ギックスの愛撫》 4 《鏡割りの寓話》 4 《戦利品奪取》 4 《不屈の独創力》 4 《焦熱の衝動》 3 《死の権威、リリアナ》 -呪文(30)- |
1 《獲物貫き、オボシュ》
-相棒(1)- 4 《強迫》 1 《自由なる者ルーリク・サー》 1 《狂気の種父》 4 《引き裂く流弾》 3 《炎の侍祭、チャンドラ》 1 《影の評決》 -サイドボード(14)- |
熊谷さんがMagic Onlineのリーグでマッチングして発掘されたデッキ。
《ドワーフの鉱山》が使えたり、《獲物貫き、オボシュ》が採用できたりとそのソリッドさに2人でべた惚れになりますが、緑単信心に《偉大なる統一者、アトラクサ》を出して手札をパンパンにした返しに無限コンボを決められて気絶、その後に目が覚めました。
3.候補
私が様々なオモチャで遊んでいると、チームでは候補のデッキが3つに絞られていました。
1 《バグベアの居住地》 2 《ハイドラの巣》 4 《カープルーザンの森》 3 《岩山被りの小道》 4 《変わり谷》 4 《踏み鳴らされる地》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 4 《銅線の地溝》 1 《山》 -土地(24)- 2 《迷宮壊し、ミグロズ》 2 《恋煩いの野獣》 4 《砕骨の巨人》 4 《無謀な嵐探し》 2 《漁る軟泥》 4 《エルフの神秘家》 4 《ラノワールのエルフ》 -クリーチャー(22)- |
2 《抹消する稲妻》 1 《薮打ち》 3 《領事の旗艦、スカイソブリン》 4 《エシカの戦車》 4 《アクロス戦争》 -呪文(14)- |
2 《免れ得ぬ破滅、ルーカ》 1 《湧き出る源、ジェガンサ》 2 《辺境地の罠外し》 1 《漁る軟泥》 2 《丸焼き》 2 《引き裂く流弾》 3 《エンバレスの宝剣》 2 《未認可霊柩車》 -サイドボード(15)- |
まずは前述したグルール機体です。
ラクドス・ミッドレンジに有利という前提条件をクリアーしつつも能動的なアグロデッキであるため、想定外のデッキが多かったとしてもそこまで大崩れしないだろうという安定感があります。
リスト公開であることの影響も有利に働きやすいかなと考えていました。対戦相手がロータス・コンボであれば、ダブルマリガンしてでも《ラノワールのエルフ》から《無謀な嵐探し》に繋がるハンドを求めたいですからね。
ただ、私はこのデッキを使いませんでした。
理由としては、まず自分でプレイして全くしっくり来なかったことです。マナクリーチャーから入らない手札はキープし辛いですが、相手が非コンボデッキだった場合、ダブルマリガンして勝てるデッキでもなく、初手に依存し易いデッキだなと思いました。
またグルール機体は非常にバランスの取れたデッキだと思いましたが、それとは別に自分的にはラクドス・ミッドレンジに次いで2番目に意識しなければならないデッキであり、それは他のプレイヤーも考えている可能性が高く、過剰に対策されている危険性をはらんでいました。
こちらは11人中、「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」で使用して好成績を残した加茂さんを筆頭に3人のプレイヤーが使用。
4 《剃刀境の茂み》 4 《低木林地》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《皇国の地、永岩城》 4 《寺院の庭》 4 《枝重なる小道》 2 《平地》 1 《ニクスの祭殿、ニクソス》 -土地(21)- 2 《スカイクレイブの亡霊》 4 《正義の戦乙女》 4 《輝かしい天使》 4 《翼の司教》 4 《希望の源、ジアーダ》 2 《若年の戦乙女》 3 《エルフの神秘家》 3 《ラノワールのエルフ》 -クリーチャー(26)- |
1 《変わり樹の共生》 4 《エメリアの呼び声》 4 《カイラの再建》 4 《集合した中隊》 -呪文(13)- |
2 《群れの力、アジャニ》 2 《傑士の神、レーデイン》 2 《スカイクレイブの亡霊》 3 《選定された平和の番人》 2 《減衰球》 1 《ポータブル・ホール》 2 《真髄の針》 1 《形成師の聖域》 -サイドボード(15)- |
次の選択肢はセレズニア天使です。
ラクドス・ミッドレンジに強く、更に2番目と想定しているグルール機体にも有利。ポジション的には最高のデッキと言えます。
ただ、気になるのはその不器用さ。能動的なデッキではありますが、グルールほど初動は早いわけではなく、手のひらの上で転がされる展開も多くあります。具体的にはロータス・コンボ、緑単信心、アゾリウス・コントロールなどです。
《ラノワールのエルフ》などで初動こそ早くなりましたが、これらのマッチアップを改善できているかというと怪しいところ。私はラクドスとグルールが多いと考えてはいましたが、上記3つのデッキが全然いないこともありえないと考えていました。
有利不利がはっきりしていて、座った瞬間にその勝敗が決まりうる。セレズニア天使は選択としてはかなりリスクを伴うデッキだと考えました。当たり方によっては10勝0敗もありえますが、0勝5敗で初日落ちすることも容易に想像ができます。
《大いなるバジリスク》ならぬ、大いなるリスクです。
最初に申し上げた通り、このトーナメントでは最低でも9勝7敗を達成したいという目標から、そのリスクは受け入れられることができませんでした。
早くからセレズニア天使を使うとチーム内で公言していた森山さんのみ、11人中1人のプレイヤーが使用。
4 《灌漑農地》 4 《神聖なる泉》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 2 《平地》 2 《島》 2 《連門の小道》 1 《ヴァントレス城》 1 《アーデンベイル城》 1 《天上都市、大田原》 1 《皇国の地、永岩城》 2 《さびれた浜》 2 《氷河の城砦》 2 《廃墟の地》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
3 《ドミナリアの英雄、テフェリー》 3 《放浪皇》 1 《告別》 3 《至高の評決》 3 《記憶の氾濫》 4 《吸収》 3 《検閲》 2 《運命的不在》 2 《ドビンの拒否権》 2 《かき消し》 2 《冥途灯りの行進》 3 《ポータブル・ホール》 3 《サメ台風》 -呪文(34)- |
1 《船砕きの怪物》 1 《夢さらい》 1 《黎明をもたらす者ライラ》 1 《悪斬の天使》 1 《至高の評決》 1 《神秘の論争》 1 《ナーセットの逆転》 2 《才能の試験》 2 《霊気の疾風》 2 《ドビンの拒否権》 1 《ポータブル・ホール》 1 《安らかなる眠り》 -サイドボード(15)- |
最後の選択肢はアゾリウス・コントロールです。
環境筆頭と考えているラクドス・ミッドレンジには不利ですが、グルール機体やセレズニア天使にめっぽう強く、「ラクドス・ミッドレンジキラーキラー」といったポジションのデッキです。
最後の選択肢と言いながら、このデッキも使いませんでした。
まず、ラクドス・ミッドレンジに不利なことです。少しプレイしましたが、私のプレイスキルも含めてその相性差を覆すことは不可能と判断。プロツアーで3回ラクドスにあたって1-2で切り抜けられるならある程度許容の範囲内かなと思いますが、自分なら0-3しそうだなといった手応えでした。
また昨年「神河チャンピオンシップ」のヒストリック・ラウンドでアゾリウス・コントロールをプレイしていたのですが、自分のコントロールへの向いてなさに絶望していたので、そこもかなりネガティブな要素でした。
「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」で使用して好成績を残した井川さんを筆頭に11人中3人が使用。
4.選択
4 《ニクスの祭殿、ニクソス》 2 《ハイドラの巣》 2 《耐え抜くもの、母聖樹》 13 《森》 -土地(21)- 4 《茨の騎兵》 4 《老樹林のトロール》 1 《森の女人像》 4 《エルフの神秘家》 4 《ラノワールのエルフ》 -クリーチャー(17)- |
1 《龍神、ニコル・ボーラス》 4 《大いなる創造者、カーン》 4 《ビヒモスを招く者、キオーラ》 4 《収穫祭の襲撃》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 4 《狼柳の安息所》 4 《ニッサの誓い》 -呪文(22)- |
1 《森呼び自動機械》 1 《街並みの地ならし屋》 1 《機能不全ダニ》 1 《死に至る大釜》 1 《王神の立像》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《マイトストーンとウィークストーン》 1 《鎖のヴェール》 1 《異形化するワンド》 1 《減衰球》 1 《石の脳》 1 《キランの真意号》 1 《真髄の針》 1 《トーモッドの墓所》 1 《ダークスティールの城塞》 -サイドボード(15)- |
アゾリウス・コントロールが最後の選択肢と書きましたが、選びたいデッキが存在しないなら他の候補を作らねばなりません。
最終的に私は緑単信心をプレイすることに決めました。
理由はポジションの良さです。前述した通り、ラクドス・ミッドレンジは《苦難の影》を採用していない形がベーシックになっていました。そのスロットに《大いなる創造者、カーン》で文鎮と化す《勢団の銀行破り》が入っているなら、その相性は緑単に振れるはずです。
環境の2番手と考えているグルール機体にも若干有利で、想定しているメタゲームに合致しています。また、緑単信心が不利なデッキが減少傾向にあることもポジティブな要素でした。
イゼット・フェニックスは「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」ではラクドス・ミッドレンジ、緑単信心に次いで人気のアーキタイプでしたが、現環境ではデッキパワーの低さから環境から退場気味で、減少傾向にありました。
白単アグロは「チャンピオンズカップファイナル サイクル1」では高い勝率を誇りましたが、環境トップのラクドス・ミッドレンジと増加傾向にあるグルール機体に不利で、こちらもMagic Online上ではほとんど当たらないレベルになっていました。
あまり想定はしていませんが、いないわけでもなさそうなロータス・コンボやエニグマ・ファイアーズなどのデッキに対しても強く出られるのが魅力ですね。
私自身緑単信心はほとんどプレイ経験がなく、10マッチ程度しかプレイしていませんでしたが、自分のメタゲーム分析と緑単信心というデッキの強度を信じることにしました。
直前での議論と提案ではありましたが、11人中私を含む4人のプレイヤーが使用することになりました。
……と、いったところで前編は終わり。
後編はドラフト環境の考察から、使用デッキの各カードの解説を含むトーナメントレポートをお届けします。お楽しみに!
市川
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